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"観光客"と"純粋主義者"の真ん中に置けるFOOTBALL

観光客はアート界の外からやってきてアート作品を鑑賞し、対象物(オブジェ)と一体化する人。純粋主義者はあらゆることに精通し、その作品に関する文献を列挙できる人、現実を見るためのフィルターや勲章として知識を使う人のことです。観光客の興味は、その対象がある場所まで出かけていって見ることにあります。エッフェル塔が典型ですね。かれらは疑いようのないものだけを求めています。アイロニーは、その両者が出会う場なんです。
(中略)といってもいまは2019年で、私がアメリカンアパレルやピッチフォークとともに育ったということは断っておかなければなりません。
つまり、「そのTシャツを着てるなら、このバンドに詳しいよね?」という文化圏です。

『ダイアローグ』ヴァージル・アブローより

これからのサッカーは、これからのスポーツは、どうあるべきか。そういったことを考えるようになってきました。日本に限らず、世界においても、それらの「在り方」のようなものが、良くも悪くも、少しずつ変化をしていっている(しなければならない)のだと思います。社会が変わっているからです。

本質的な歩みを進めていくためには、いままで固定されていた印象や、当たり前になってしまった価値観、議論すらされない常識を、(自分の中で)捨てなければならないことも、多くなることかと思います。


上で引用したのは、オフ-ホワイトを設立し、ルイヴィトン初の黒人デザイナーを務め、ナイキやイケアとのコラボレーションで著名な、ヴァージル・アブローの対談をまとめた『ダイアローグ』です。以前、『"複雑なタイトルをここに"』という、彼がハーバード大学デザイン大学院で行なった特別講義をまとめた本を読んで、彼の凄みを知り、興味を持ったことがきっかけで手に取りました。

下の棚に乗ってる

あとは翻訳が以前i-Dに寄稿した時にお世話になった平岩さんだったこともあり、縁を感じた本です。

関係ないですけど、下にその時の記事を貼っておきます。アルゼンチンでひとりロックダウンをしていた時です。懐かしい…二度と無理…


さて、彼が用いていた"観光客"と"純粋主義者"から、サッカーというものを、スポーツというものを、考えてみたいと思います。

今まで日本のサッカーやスポーツ、もしかすると、他のエンターテイメントでも同じかもしれませんが、「マニア」と「にわか」のような言葉を使って、コアなファン(この表現もどうかと思いますが)と、そうではないお客さんのことを対比させて表現しているのを、よく見かけます。私はそのような対比は意味ないと思っていて使ったことはありませんし、ヨーロッパや南米のサッカーを自分の目で見てきましたから、日本で持たれている印象と実際のところは、いくらか相違があることも理解していました。

何より言葉にリスペクトがないな、と思っていました。「マニアが業界を潰す」という表現に関しては意味不明だなと思ってましたし、「にわかファンがどうたらこうたら」と騒いでいる姿も、何も生み出さないと思っています。

ただし、

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