スポーツ海外留学における『クラウドファンディング』の可能性
『新世代サッカー指導者のWEB戦略』vol.5
Vol.4▶︎『若さは"武器"となり、若さは"邪魔"をする』
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■留学に付きまとう「資金」の問題
これから世界で戦う日本サッカーにとって「指導者を海外にどれだけ出せるか」というのは、1つの大事なテーマだと確信しています。島国であり、日本語のみを話す日本という国において、世界一グローバルなスポーツで戦うために、避けて通ることは出来ません。
そこで我々に重くのしかかるのが「お金(資金)」という問題です。本来であれば日本サッカー界をあげてこの問題を解決していくべきですが、しばらくは難しいと感じています。そこで私は、自らで過去にない前例を作ることで、これから指導者がより海外に学びに行きやすいような環境を作ろうと試みています。細かい問題定義はひとまず置いておき、今回は一つの「可能性」について書いていこうと思います。
■お金は「気持ち」で解決出来ない
"お金を言い訳にして海外へ行かないやつは、そこまでの気持ちがないのだ"
耳にタコが出来るほど聞かされたセリフです。ただ、お金が空から降ってこない限り、資金を調達することが難しい若者は、どうしても海外へ中長期的に学びに行くことが難しくなります。私たち日本がサッカーで、あるいは他のグローバルスポーツで結果を出すためには、この認識を変えなければなりません。
誤解を恐れずに言えば「海外へ行くなら自分で行け」という今の現状を、あらゆる機関が協力をして解決するべきだと私は考えます。
■クラウドファンディングという可能性
このような背景もあり、私はアルゼンチンでサッカーを学ぶための資金を「自分で出さない」と決めました。少し傲慢に聞こえるかもしれませんが、これからのサッカー界の未来を見据えた上での判断です。その一歩目、つまり1年目の資金として僕が利用したのが「クラウドファンディング」です。
これによって「98万7000円(108名)」のご支援をしていただき、準備費用及び1年目の活動費を確保することができ、私は今アルゼンチンで活動をすることが出来ています。
■1つの手段
私が行った「クラウドファンディング」において、持っていた狙いや、起きた現象、成功や失敗、実行から半年ほどが経った今だからこそわかることを共有することで、指導者が海外へサッカーを学びに行くため(または他のスポーツ留学も含め)の資金集めの「1つの手段」として「クラウドファンディング」が出て来れば良いなと思っています。
皆がクラウドファンディングでお金を集めることが出来るようになれば、少しでも海外へ出る若者は増えていくのではないか、と期待しています。
■クラウドファンディングのサービス
まず最初の段階として、自分のプロジェクトを掲載するサービスを1つ選ばなければなりません。専門ではないので詳しいことはお伝えできないですが、私は数ある中から「CAMPFIRE」を選びました。
ある理由があって「Makuake」にプロジェクト掲載をしようと思っていたのですが、このプラットフォームでは「チャレンジ系」のプロジェクトよりも「プロダクト系」のプロジェクトが圧倒的に多かったため、最終的には選びませんでした。
これに関しては、上の記事のようなまとめサイトを参考にし、自分のプロジェクトに合ったサービス(会社)を選ぶべきだと思います。
■クラウドファンディングの狙い
クラウドファンディングを行った当時、幾つか「狙い」を持って挑みました。以下、それぞれの詳細を書いていきます。
■資金調達
当たり前ですが、メインの狙いが「資金調達」です。
僕の中でクラウドファンディングは「最終手段」でした。なぜなら、例えば僕がまだ「アルゼンチンに行っていない」段階でクラウドファンディングをするよりも、1年後(もしくは2年後)に「アルゼンチンに居る状態」で行った方が、話題性や説得力が手伝って、より多くの資金を調達できると読んでいたからです。
しかし、企業へのアプローチがうまくいかず、そして出発までの時間が限られていた為、クラウドファンディングで1年目の資金を調達することを決断しました。
■事前に行うべき工夫
クラウドファンディングを成功させる為に必要な一つの指標として「どれだけ拡散されるか」という課題があると、当時は思っていました。その為、プロジェクトを実行する2ヶ月ほど前に、私は自分のブログで『拝啓 本田圭佑様』という記事を書き「話題性をつくる」という工夫をしました。
この記事は5万前後のアクセスがありましたが、のちのクラウドファンディングにおいて、拡散、及び資金調達の手助けになったことは間違いありません。
同記事は、簡単にいえば「①このような問題がある」「②私はこれを解決したい」という内容に「③同じ問題について言及している重要人物」の名前を借りることによって構成されています。本田圭佑選手が私と同じ「指導者ライセンス」について言及しており、このような記事になりました。
※上は2017年7月、下は2018年9月もの。
■話題性は拡散につながる
既に話題性のある人物であればこのような工夫は必要のないものかもしれませんが、私のような「話題性がない」そして「信頼度がない」という状況の若者にとっては、クラウドファンディングのプロジェクトを実行する前に、このような「①問題提議」と「②解決方法(それにはお金が必要)」を示し、その記事が「③より拡散されるような工夫」を、しておくべきだと思います。
おそらく私が、いきなり「アルゼンチンにサッカーを勉強しに行きたいからお金を支援してください」とクラウドファンディングを始めても、同じような結果を得ることは難しかったでしょう。
■人の経験から学ぶ
クラウドファンディングがベストな方法だとは思いませんが、私がアルゼンチンに来れたように、「1つの可能性」として考えることは出来るのではないでしょうか?
次回以降、資金調達以外の「狙い」について書いていきながら、自分の経験をシェアしていければと思います。
今、もう一度同じことをやればもっとうまく出来たと思うので、私の失敗や経験からヒントを得ることで、より資金調達がしやすくなり、海外に出て行く若者が少しでも増えていけば素晴らしいことだと思います。
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筆者:河内一馬
92年生まれ。アルゼンチン指導者協会名誉会長が校長を務める監督養成学校「Escuela Osvaldo Zubeldía」在籍。サッカーを非科学的な観点から思考する『芸術としてのサッカー論』を執筆中。
Twitter:@ka_zumakawauchi