亡き父のIFストーリーを歩む馬 『タイトルホルダー × 凱旋門賞』
亡き父の想いを集結させた結晶のような馬 タイトルホルダー
タイトルホルダーの父、ドゥラメンテ。
皐月賞とダービーを制した二冠馬。
皐月賞では狂気の4コーナーから為る衝撃の末脚。ダービーでは父キングカメハメハのダービーレコードを更新。両レースともに史上最高のレーティングを獲得した。
つまりドゥラメンテは二冠を制した時点で、21世紀の偉大なる三冠馬2頭 "ディープインパクト" "オルフェーヴル" 彼らの同時期よりも評価されていた馬だった。
しかし、ダービーを勝った後、秋に向けて休養していた放牧先で故障。全治半年の怪我を負ったため、三冠目の菊花賞への出走や、斤量が有利な3歳時での凱旋門賞挑戦が叶わなかった。
そして二度目の悲劇となった4歳時に挑んだ宝塚記念。1倍台の支持を集めるもまさかの2着入線。
悲劇はそれにとどまらなかった。
レース直後に馬場に足を取られ故障。競走能力喪失の診断が下された。サラブレッドとして生ける者にとってそれは致命傷を意味する。無論、凱旋門賞挑戦は断念。志半ばで現役引退を強いられた。
9戦5勝2着4回。
生涯連は外さなかったものの、破格だった二冠の内容からも無事に走り続けてくれたらと夢を抱かせてくれると同時に無念さが募る。
ドゥラメンテは未完の大器という域を超えぬまま第二の馬生に入った。そして当時世界一だったんだ、ということは父として証明することになる。
現役最強馬タイトルホルダー。今年の牝馬二冠スターズオンアース。駿才の血は確かに色濃く受け継がれていた。
早すぎる最期と6年越しの夢
神はあまりに冷酷である。
2021年8月31日。
繁養中の社台SSで急性大腸炎を発症。僅か9歳という若さでドゥラメンテはこの世を去ってしまった。
何をそんなに急ぐのかドゥラメンテ。
亡き父がターフに別れを告げた宝塚記念をタイトルホルダーが制したあの日。Twitterでひとつの投稿が話題を呼んだ。
6年越しの夢。その一言に添えられ、2枚の写真が投稿された。内容は馬運車に連れられるドゥラメンテの瞳に、6年越しにリベンジを果たした息子タイトルホルダーの姿が映っているというイラストだった。
イラストの端には、2016.6.26 / 2022.6.26 と書き記されていた。
そうか日にちまで同じなのか。まさに6年越しの夢。
タイトルホルダーは父が掴めなかった三冠の続き、菊花賞を制した。
父がターフに別れを告げた宝塚記念でリベンジを果たした。
そして今、父が志半ばで終わった夢の続きに挑もうとしている。
父の想いを乗せて、頑張れタイトルホルダー。
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