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SNSに広がる陰謀論と信じる人々の心理 - 都合の良い真実が生まれる構造とその危険性

いつもお世話になっております。山本一真と申します。

SNSにおける陰謀論の広がりと、それを信じる人々の心理について考えてみたいと思います。陰謀論という言葉にはさまざまな意味が含まれますが、一般的には「特定の集団や権力者が秘密裏に何かを企んでいる」という説のことを指します。現実には、歴史を振り返れば秘密裏に行われていた計画や隠蔽工作が明るみに出た例もあります。しかし、それとは別に、事実とは異なる「陰謀論」が広がり、人々を惑わせることが問題になっています。

SNSが普及することで、情報の流れはかつてないほど速くなりました。誰でも自由に情報を発信でき、また受け取ることができます。それは素晴らしいことですが、一方で誤った情報が拡散しやすくなるという危険性もはらんでいます。特に、陰謀論は人々の不安や怒り、恐れと結びつきやすく、真実かどうかよりも「信じたいもの」が広がっていく傾向があります。たとえば、「あの企業は裏で悪事を働いているに違いない」「政府は真実を隠している」といった話は、一度疑いを持つとどこまでも拡大解釈されていくものです。

陰謀論に惹かれる人々の心理には、いくつかの要因が考えられます。一つは、社会に対する不信感です。経済的に不安定な状況や、政治への不満が募ると、人は現状を疑うようになります。「なぜ自分はこんなにも苦しいのか」「なぜ世の中は不公平なのか」といった疑問を持ったとき、それに明快な答えを示してくれる陰謀論は魅力的に映ります。特に「悪いのは権力者だ」「支配層が私たちを操っている」という単純なストーリーは、多くの人にとって受け入れやすいものです。

また、陰謀論は人間の根源的な欲求である「秘密を知りたい」という気持ちを刺激します。普通のニュースでは知ることができない「裏の事情」を知っているという感覚は、ある種の優越感をもたらします。自分だけが特別な情報を手に入れたかのような錯覚を持ち、それを広めることで「真実を伝える使命感」に駆られることもあります。その結果、彼らは自分の信じる情報こそが正しいと確信し、異なる意見を持つ人々を攻撃することすらあります。

さらに、SNSのアルゴリズムが陰謀論を加速させる要因の一つになっています。SNSは、利用者が興味を持ちそうな情報を優先的に表示する仕組みを持っています。そのため、一度陰謀論的な情報を見たり「いいね」したりすると、同じような情報が次々と流れてくるようになります。この結果、ますます陰謀論の世界に引き込まれてしまい、他の情報を受け入れることが難しくなります。いわゆる「フィルターバブル」の状態に陥り、異なる視点を持つ人々と意見を交わす機会が失われてしまうのです。

本来、真実を追求することは大切です。歴史を見ても、「最初は陰謀論扱いされていたが、後に事実だと判明した」というケースは確かに存在します。しかし、それと「陰謀論を信じる人々が持つ傾向」は、まったく異なる問題です。彼らが問題なのは、都合の良い真実だけを選んで信じ、それを根拠に他人を攻撃するからです。SNSの中で「こいつは敵だ」「あの人間は陰で悪事を働いているに違いない」と決めつけ、誹謗中傷を繰り返すことで、自分の正義を証明しようとする人々がいます。しかし、それは本当に「真実の追求」なのでしょうか。

私自身は、こうした攻撃の対象になったことはありませんが、知り合いの中には陰謀論を信じる人々に攻撃され、心を病んでしまった人もいます。彼は最初、ネット上で事実に基づいた冷静な議論をしようとしていました。しかし、陰謀論を信じる人々は議論ではなく感情で反応し、理屈が通じないことが多かったのです。「お前は支配層の手先だ」「本当のことを隠している」といった言葉を浴びせられ、どれだけ証拠を示しても相手は納得しませんでした。

SNSにおいて、何が正しいか、何が真実かを見極めることは非常に難しい時代になりました。情報が多すぎるため、私たちはしばしば「都合の良い情報」に飛びつきがちです。誰もが忙しく、深く考える余裕がない中で、シンプルで分かりやすいストーリーは強い魅力を持ちます。特に、「私たちは騙されている」「権力者は私たちを支配しようとしている」という話は、人間の根源的な疑念と結びつきやすく、多くの人の共感を得やすいのです。

しかし、そのストーリーが真実であるとは限りません。陰謀論の最大の問題は、「自分たちが正しい」という前提のもとで、人を攻撃し、異なる意見を持つ人を排除することです。本当に真実を求めるのであれば、あらゆる視点に耳を傾け、冷静に情報を精査する必要があります。「都合の良い真実」を広めることは、結果として社会全体の分断を助長し、対話の機会を奪ってしまうのです。

この問題を解決するためには、まず私たち一人ひとりが「自分の見ている情報が偏っていないか?」と自問することが重要です。たとえ自分にとって気持ちの良い情報であっても、それが事実とは限りません。本当に正しい情報を求めるのであれば、異なる意見を持つ人とも対話し、感情ではなく論理で物事を考える姿勢が求められます。SNSは便利なツールですが、同時に誤った情報を拡散しやすい側面もあります。だからこそ、私たちは慎重に情報を選び取り、冷静な思考を保つことが求められているのです。

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