白うさぎから、ちなじゅん(那覇)
東京
東京での白うさぎはいつももどかしそうだった。
白うさぎ
「こういう風につながるんだ、って思ったんだよ。」
「勝手に起こっちゃうんだ。」
「自分の言ってること、分かります?」
私
「うーん。何となく分かるような分からないような、そんな感じです。。」
東京での白うさぎとのやり取りはいつもこんな感じでこちらももどかしくなる。ただ白うさぎの周りで「起こっちゃうこと」が何なのかはずっと気になっていた。
白うさぎは東京でカポエイラ・アンゴーラというブラジルの伝統芸能を教えたり、レンタルスタジオのオーナーをしていたり、Aflo Tech Tokyoという音楽ユニットで楽器を演奏したり歌を歌ったりしている。
会社員をしながらごくありふれた生活を送っている身からすると、白うさぎは自由で刺激的な日々を過ごしているように見えて羨ましく思うときがある。
そんな白うさぎが生まれ故郷の沖縄でカポエイラのイベントを開催するというので、私も7年振りの沖縄に向かった。
沖縄・那覇
6月下旬、梅雨明け直前の沖縄は蒸し暑く生暖かい風が吹いていた。少し歩くだけで汗が吹き出てくる。これが東京なら苛立ちそうなものだが、沖縄だとむしろ熱い歓迎を受けているかのように思えてしまうのだから観光客とは気楽なものだ。
白うさぎがホテルまで車で迎えに来てくれた。
この後のカポエイラのイベントまでは少し時間がある。
白うさぎ
「ちょっと会いたい人がいるからその人のお店に寄ってもいいですか?お店にいるかは分からないけど。」
そう言って立ち寄ったのはオレンジ色の壁の一見するとカフェのような可愛いらしい店だった。
店内にはハンガーに掛けられたTシャツが吊るされている。どうやらTシャツ屋さんらしい。
白うさぎとオーナーの話のやり取りから、このお店でカポエイラ・アンゴーラ東京の黄色いグループTシャツと、スタジオのロゴの入ったイベント用の大きなテントを作ってもらったことを知った。
テントの仕事は白うさぎのスタジオ用のテントを最後にもう請け負っていないそうだ。
いまは東京のスタジオの屋上にある素敵なテント。あれはこのお店で作られた最後のテントだったのか。
お店にいるかどうかも分からなかったオーナーが店にいてテントにまつわる裏話を聞く。何となく気持ちがそわそわし始めるのを感じながら店を出て再び車に乗り込んだ。
白うさぎ
「サンバのワークショップやってるから見にいきます?でも時間的にあれかな。あっそうだ、ユタさんに会いたい?」
予想外の提案に少し戸惑う。
ユタさんに会う?
沖縄にはユタと呼ばれる霊能力者がいる、ということは知っているが、逆にそれ以外のことは何も知らない。
私
「会いたいかと聞かれれば会ってみたいですけど。。でもユタさんってアポ無しでも会えるんですか?」
東京で紹介されたヒーラーさんは3ヶ月先まで予約が埋まっていた。
白うさぎ
「いまが会うタイミングなら会えるし、会えなかったらいまは会うタイミングじゃないんだよ。」
あぁ、これだ、と思った。
それまでも時々白うさぎから感じていた心地良い違和感。白うさぎは流れや物事に抗わないというかとても謙虚でその謙虚さに心地良い違和感を感じると同時に自分の傲慢さを恥じた。
白うさぎ
「着いたよ。ここ。あっ、いる。」
白い壁、黒い背景に白文字の看板、モノトーンのポスター、鉢植えの観葉植物たち。
白うさぎが店の開戸を開けた。
薄暗い店の奥で瞳が鋭く光った。
会えるかどうか分からなかったユタさんは眼鏡をかけた細身の男性だった。電話で予約も出来るからと名刺をいただいたが、その場で翌朝一番の予約を入れてからお店を出た。
再び車に乗り込む。今度こそカポエイラのイベント会場に向かう。会場は那覇市内のパーソナルトレーニングスタジオだ。コインパーキングの前で車が停まった。
白うさぎ
「あー、駐車場満車かぁ。ここ以外の駐車場ってどこにあるんだろう。」
土曜日午後の国際通りにも近い街の中。
これから駐車場を探したらいい時間になりそうだな、などと助手席で他人事のようにぼんやりと考えていた瞬間、一台の車が駐車場の出口のゲートに近づいてきて会計をし始めた。
白うさぎ
「あ、空いた。」
白うさぎが半分笑いながら、でも半分真面目な顔で言った。
白うさぎ
「ね?分かったでしょ?こういうことが起こっちゃうんだよ。」
ホテルを出てからTシャツ屋さん、ユタさん、そしてこの駐車場まではトータルでも30分も経っていない。
この短時間の間に会いたい人たちに会い、停めたい場所に車を停める。
何だか騙されているような気分になり落ち着かない。
そんな私の様子に気づいたのか白うさぎが、
白うさぎ
「こういうの疲れるでしょ?もうお腹いっぱいって感じでしょ?でもこういうことなんだよ。でももうお腹いっぱいって感じだったらオフにすることも出来るから。最近オンオフの切り替えが出来るようになったんだ。」
私
「スイッチオフでお願いします。。」
別に些細なことと言えば些細なことなのだ。ただ些細な幸運が立て続けに起こるとに慣れていないので妙に疲れた。そしてこれから2時間近くカポエイラのジョゴという二人組の組み手の練習をするのに、その前にこのペースで不思議なことが続いたら頭も心も身体も持たない気がしたので、ここは素直にオフモードをお願いした。スイッチが追加されていて良かった。しかしこういう時に相手は疲れている、ということを認識しているのが白うさぎらしくて興味深かった。
この後のカポエイライベントの様子ついてはこちらに。。
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