「設備屋」に求められるスキル Part.1

私は、生産ラインとかで使う設備の設計製作を本業としていますが、実際にはその前後、つまり仕様決めから実機の立ち上げ、検証までを一通り自分が主体となって行うので、思いのほか色々な種類のスキルが少しずつ必要になってきます(ウチの職場では全体を指して「設備開発」と呼んでいます)。
これから「生産技術の仕事がしたいです!」という方々の参考になれば、というのと、あらためて自分の中での整理の意味も込めて、「設備屋に求められるスキル」について考えたいと思います。

設備開発の流れ

設備を作って工場に納める仕事というのは、大まかに、以下のような段階に分かれます。私の守備範囲としては、この最初から最後までを総合的に担当しています。
(1)仕様決め
  設備に求められる要求を実現する方法を、クライアント(=工場)
  と相談して決める。
(2)設計
  仕様を満足できるよう設計し、図面や設計仕様にまとめる。
(3)製作
  図面や設計仕様に基づいて、部品の加工・組み立て、電気配線、
  ソフトのコーディングを行う。
(4)調整・立上げ
  製作した設備が正しく、安定して動作するように、機械の調整、
  ソフトのデバッグを行う。
(5)検証
  設備が仕様を満足できていることを検証する。
(6)検収・納品
  設備がクライアントの要求を満足できていることを、クライアントに
  確認してもらい、設備を納品する。

仕様がカギを握る

設備開発の各ステップの中で最も重要なのはどこでしょう?
設備の形を決めるのは設計ですし、正しくモノを造れることを保証するのももちろん必要。どのステップも大事ですが、最も重要なのは、最初の「仕様決め」なのではないでしょうか。
仕様決めでは、クライアント(=工場)から提示された要求をもとに、それを実現するために設備にどんな機能や性能を持たせるかを決めます。例えばある部品を加工する設備を作る場合、「この部分の寸法を〇mm±△um以内で加工したい」という要求を実現する手段として、「ワークを固定して、刃物を動かす」のか、「刃物を固定して、ワークが動く」のか、といった実現手段が仕様になります。主機能のほかにも「加工中の様子を観察したい」という要件に対して「右上から観察するカメラを取り付ける」「カメラの視野は〇mm」「切り屑でレンズが傷つかないようにカバーをする」といったことも含めて決めていきます。
仕様がいい加減だと、それ以上の設計はできないし、設計した以上の設備(実物)を製作することはできません。下流が上流を超えることは、基本的にできないと考えて良いと思います。

要求の背景=「真の要求」を探る

仕様決めでは「クライアントの要求をしっかり理解して、満足度の高い仕様を提案する力」が必要と言われていますが、私はこれに加えて「クライアントの真の要求を引き出す力」も必要だと思っています。
クライアントからの要求事項の中には、本来やりたいことが隠されてしまっていたり、クライアント自身も本当にやりたいことに気づいていなかったりすることがあります。例えば「ワークを反転させる機能をつけてほしい」という要求をいただいた場合、ただそのまま反転機能を追加するのではなく、「なぜ反転機能が欲しいと思ったのか」を紐解いていくと、実は「裏からワークの状態を観察したい」というニーズが隠れていたりするので、「反転しなくても下から観察するカメラをつける」方が、観察のためだけに不用意にワークを掴む必要がなく、かつ安価で要求を実現できる、といった内容の提案をすることもあります。
そんな感じで、仕様決めの段階では、仕様だけでなく、要求にさかのぼって見直しを行ったりしながら、設備の「要件」=クライアントと我々で合意した納入検収条件、も同時に決めていく作業を行っています。

ここでクライアントの要求を(言葉は悪いですが)鵜呑みにしてしまうと、クライアント自身が気づいていないニーズを掘り起こせず、要求された機能を付加したけれども満足のいく結果から遠のいてしまう、といった状況になってしまうケースもあります。

他の業種や職種でも同じかも知れませんが、クライアントから提示される要求に対して「なぜそれを望んでいるのか?」を掘り下げていくことで、クライアント自身も気づいていない「真の要求」にたどり着くことができれば、より顧客満足度を向上させることができるのではないかと思います。

「仕様決め」に関する記事が長くなってしまったので、これ以降のステップ(設計、製作、etc.)で求められるスキルについては、また次回に持ち越したいと思います。
※文章の構成力がなく、読みづらくてすみません…最後まで読んでいただき、ありがとうございます。また次回も読んでいただけると嬉しいです!

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