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鬼人幻燈抄の愛を語る

鬼人幻燈抄という原作をご存知でしょうか。

鬼人幻燈抄とは、中西モトオ先生による和風ファンタジー小説です。

シリーズもので、それぞれ『葛野編』『江戸編』『幕末編』『明治編』『大正編』『昭和編』『平成編』と別れており、全14冊ある大長編です。

僕は去年Audibleでこのお話を聴いてからファンになりました。

そんな推しの作品の面白さを、ここで語っていけたらなと思っています。

ちなみに完全ネタバレで進行しますので、その点はご了承ください。

どんな話?

まず、『江戸』や『幕末』と銘打っているとおり、舞台は日本です。歴史をなぞりながら物語が進行していくので、歴史小説としての一面もあります。

ただ、この物語には『鬼』と呼ばれる異形の存在が登場します。叶わなかった願いが具現化された妖。この『鬼』が物語に深みをもたらしてくれます。

鬼は千年の時を生きます。人にとってそれは悠久といってもいいかもしれません。

そんな長い年月を生きられる鬼という存在に、主人公である甚夜は成るのです。

愛する人、守られなければならなかった大切な人、白雪が殺されたからです。

殺したのは、甚夜の妹である鈴音です。

鈴音は甚夜に恋をしていました(血は繋がっていません)。けれど、甚夜が白雪を好きなことはわかっていました。なので身を引こうとしていました。

けれど白雪は甚夜を選びませんでした。甚夜もまた、白雪を選びませんでした。両者共に、恋を成就する以上の責務があったからです。

そのことがわからなかった鈴音は白雪に怒り、鬼となって鈴音を殺してしまいます。

そして大切な人を奪われた甚夜もまた、その怒りを持って鬼となり、鈴音に復讐を果たすべく旅に出るのです。

それから約170年の間、甚夜は人や鬼と出会いと別れを繰り返しながら、復讐を果たす。

鬼人幻燈抄とはそういうお話です。

多くの出会いと別れ

鬼人幻燈抄の醍醐味といっていいと思います。

前述した通り、鬼は千年の時を生きます。ゆえに、人と同じ速度で歳を取ることができません。また、甚夜は復讐者であり、同胞である鬼を斬る夜叉です。

そんな甚夜は幸せを自ら掴み取ろうとはしません。ただひたすらに鬼を斬り、鈴音に復讐を果たそうとするだけ。

けれど、甚夜の周りにはそうはさせてくれない人や鬼がいました。

彼らは色んな想いを抱えながら日々を生き、その中に幸せを見出そうとしています。鬼から見ると、人の寿命は短いです。それでも懸命に生きる人たちを見て、甚夜も次第に心を開きながら彼らと生きていきます。

時には、意見が対立することもあります。そしてそれが悲しい結末になる場合もあります。

甚夜も結局は鬼。人は鬼を忌避しています。なので、その終わり方もひどいものだったりもします。

例えば第3巻での奈津との別れとか。
まだ鬼人幻燈抄の出会いと別れに慣れてなかった自分としては、一人まじかよと悲しみました。ああいう終わり方、悲しすぎます。

この物語は悲しい別れが多いですが、その逆の嬉しい出会いなんかもあったりします。秋津との再会とかまさにそうです。意外にしぶとく生きてたりします。

まあこんなにも多くの出会いと別れを繰り返した挙句、行き着く先が復讐なのは度し難いところですが。

終わりに

鬼人幻燈抄は、数多くの出会いと別れを繰り返しながら復讐を果たす悲劇的な物語です。

けれど、話の全てが悲劇ではありません。影があれば光があります。それを求め、救われながら読み進めれば、あっという間に読み終わります。
なので悲劇が苦手な方も是非読んでみてください。

備考

甚夜は鬼になるまで甚太という名前なのですが、混乱するかと思って甚夜に統一してあります。

また、歴史をなぞる形で話は進行しますが、合間にちょくちょく平成編が入ったりするので、お気をつけください。

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