部下との面談が苦手なあなたへ、1on1で聞き上手になる
「部下をマネジメントする際に、どう信頼関係を築けば良いのか分からないです」
僕の顧問先の中でもそんな悩みを抱えるリーダーは少なくないです。
そうした中で、僕自身も勧め、
社員との接点を増やすツールとして各企業で導入が進んでいるのが
1on1ミーティングです
1on1とは、上司と部下による1対1での定期的な面談のこと。
「膝を突き合わせて仕事の悩みを打ち明けられる」とメリットも多いが、
やり方を間違えるとかえってやる気を削ぐことになって生産性を下げてしまいかねないので要注意
■「1on1を続けてほしい」と思っている部下は多い
約8割の回答者が1on1に好意的
上司と部下による1対1での定期的なミーティングである1on1
これを導入している全国の社員200人に聞いたあるアンケート結果では
対象となった社員20~30代の男女のうち
「今後も続けて欲しい」と答えた人は78%
「やめてほしい」と答えた人は22%
その内訳は
「本音を話しにくい」47.5%
「単なる進捗報告の場になっている」35%
「筋書き通りで、結局話しは聞いてもらえない」22.5%
などが上位
特に話すことがないし、話しても改善されるわけでもない」(33歳・香川県)、「あれやれ、これやれと注文ばかり。一方的に要望を言ってくるだけで1on1をやる意味が分からない」(31歳・岡山県)と、反対意見の中身は、賛成派に比べ具体的で手厳しい印象
たかが2割、されど2割。信頼関係を築くのは1on1の目的の1つ。
8割が支持しているから問題なしとするのではなく、
間違った1on1になっていないか再点検をする必要があるということです。
もともと日本企業には、大勢の社員の前で部下が上司に意見を表明する風土はあまりないようで、だからこそ1on1が導入された側面もあるようです。
にも関わらず「1on1でも、いや1on1だからこそ、本音を話せないし、話したくない」となれば、会社は膨大な時間を使って無駄な作業をしていることにもなりかねないといういことです
社員に支持される1on1と嫌がられる1on1の違いはどこにあり、
どうすれば日ごろ本音を話さない部下に、本心を打ち明けてもらえるのか。
様々な事例から、1on1をより効果的な取り組みにするための具体策を見ていきましょう
■1on1の4つの機能とプラスに作用させる進め方
1on1でできること
もともと1on1はインテルをはじめ米シリコンバレーの企業で実施されていました。日本では2012年にヤフーが導入したことで知られるようになり、
以降国内企業にも広がっていきました。
1on1が浸透していった要因は大きく2つあります。
1つは、外部環境変化が激しさを増したことです。
もともと日本企業の多くが目標管理制度を導入しています。
これは、従業員一人ひとりが目標を設定し、
その達成度合いで人事評価を決める方法で、ドラッカーが生み出した概念です。
それならうちでもやっているよ!という会社さんも多いのではないでしょうか。
ですがこの制度が次第に時代に合わなくなりました。
外部環境変化のスピードが速いために、目標そのものや、目標達成に向けたシナリオが期間内に変わることが起き、結果、目標管理のための面談は半年に1回というところも多く、それでは間に合わないと、半年ごとではなく、もっと頻繁に話して目標などを微調整する必要性が出てきたのです。
1on1が浸透した要因の2つ目は、働く人の意識の変化です。
平たく言うと、嫌だと思ったら比較的自由に転職する人が増えた。
要は人材の流動化が進んでいるということですね。
どうしたら自社で長く働き続けてもらえるのか。
人は「やりがいを感じる」「将来の自分のためになる」「自分の仕事が社会や誰かのためになっている」という3つが満たされると簡単には転職しないものです。
この3つを社員に実感してもらうための場として、1on1を活用しているのです
そして1on1には4つの機能があります。
1番目は「人間関係の構築」です。
そもそも上司とあまり話す機会がない会社の場合、
まずは「仕事の話しをしない」方が良いです。
これまでどういう考えで生きてきたのか、どんな趣味があるのかなどを
お互いに開示し合う。何より個人として分かり合うことが大切です。
人間関係がなくても、作業に近い仕事ならできます。ただ、本当に質の高い仕事はできませんし、チームとして助け合うこともないでしょう。
2番目が「業務の管理」です。
日々の仕事の進捗や起きている問題について話します。
上司は情報や問題を吸い上げ、指示ができるので成功の確率が上がるでしょう。
3番目は、「個人の成長支援」。
「経験学習サイクル」を回す手伝いをすることです。
経験学習サイクルとは、「経験→振り返り→概念化→実践」という4つのステップ。
1つの仕事が終わったら、うまくいったところとダメだったところを振り返る。
そして、その振り返りを一般化、概念化していく。ここが重要です。
少し具体的に説明すると、
「今回の仕事でここはうまくいった。なぜだと思う?」
「ここは失敗したけれど、なぜだと思う?」
「次に同じことをやるとしたら、どうする?」
「○○という仕事に置き換えた場合、どんなふうにできる?」
といった問いかけをします。こんなふうに上司が上手に関与することで、
部下は成長します。
そして4番目は、
自分が取り組んだ仕事にどんな価値があるのかを共有することです。
「ミッションや行動指針への共感」が人を本気にさせるし、
離職防止にも繋がります。
会社がどんな価値を出して世の中に存在し続けようとしているか。
どんな働き方を理想とするのか。そこへの共感性が高いと、人は本気で働くし、
辞めることはありません。
目の前の仕事に忙殺されると、社会との繋がりを忘れがちです。
だから、仕事の区切りごとに、
「お客様がここまで喜んでくれたのはうれしいね。このお客様のために次は何をしようか?」と話すといいでしょう。
自分たちの仕事の意味や意義をきちんと感じさせることが大切です。
この3番目、4番目がうまく機能すると、
先に説明した「やりがいを感じる」「将来の自分のためになる」「自分の仕事が社会や誰かのためになっている」の3つを満たすことができます。
これはとても大きな効果になります。
みなさんの会社の1on1では、この4つが機能しているでしょうか。
「1番目から始めて、その目的は達成したものの、次に何をしたらいいか分からない」という企業もよく見かけます。
初期段階はよくても、複数回やっていくうち互いに苦痛になるのは、
1on1を目的に合わせて変化させられていないからだと思います。
1on1は、1番目から順にやる必要がありますが、この4つを行ったり来たりしてもいいのです。
あるときは仕事中心の2番、仕事が終わったら振り返りの3番、部署に新しいメンバーが来たら1番から始めるなど、この4つは繋がっています。
ただ、ベースとなる人間関係なしに、2、3、4の話はできないことを覚えておいてください。
■管理職全員が面談スキルを学んで「聴く力」を向上させる
管理職全員に「話しを聴く力を訓練」
ある海洋調査を手がける企業の従業員数は180人。
うち100人ほどは業務のため、平均して年間130日程を海洋上で過ごします
しかも、プロジェクトごとにチームを編成するので、必ずしも同じ部署のメンバーと乗船するわけではないんです
こうした環境では、直属の上司であっても部下と話す機会を持つのはなかなか難しい。このためその会社にとってコミュニケーションの活性化は大きな課題でした。
遡ること8年前、人事評価制度を導入するも1年で頓挫してしまったようで、
失敗に終わった要因の1つはまさに、
上司と部下の面談が機能しなかったことにありました。
そもそも一部の部署を除き、それまでオフィシャルな面談制度自体がなかった。何とか社内で対話を増やそうと意図した試みだったものの、
面談をする側のスキルがほとんどない状態だったため、
「最初は何とかなると思っていたがやはりうまくいかなかった」と当時の社長
再開できないまま数年が過ぎ、コロナ禍に突入。コミュニケーションを図る機会がさらに減った。数年前から事業内容の方向転換を余儀なくされたことも影響し、この頃、退職者が目立って増えたという。
「これは本気で組織の活性化を図らないといけない」という結論に至り、
2023年4月から「育成面談制度」を始めたようです。
上司と部下が1対1で年に3回以上話をするのがルールで、1回当たりの所要時間は60分程度を目安。面談では、部下の育成に主眼を置き、
個人目標への取り組みやキャリアの希望を中心に聴く。
面談のスキルが向上
その際、その会社が前回の轍(てつ)を踏むまいと考えたのが、
面談制度導入前に「面談をするスキル」を管理職約50人全員に身につけてもらうことでした。
専門の会社を活用し、オンラインで社外人材の話を聴くというトレーニングを実施。
1回当たり約30分を4回。「今週はこんなことがあった」「今こうしたことで悩んでいる」といった話を聴き、適切な受け答えがきちんとできているかをフィードバックしてもらうという流れだ。
そうして話を聴く際の基本ややりがちな落とし穴を学んだ。
その社長自身が指摘したのは、“指示を出すスピード”が速すぎること。
それまでは多くのことを即断即決し、スピード感があるほど経営に良い効果があると考えてきたが、
「まずは相手の話に耳を傾けることが大事。しっかり聞いてその上で必要ならば指示を出す。そうしないと部下は話を聴いてもらったとは思わないし、言いたいことも言えなくなると指摘された」ということに気づいた。
「話を聴く訓練」と面談制度の導入の成果が出た。
23年11月に実施したストレスチェックの結果を見ると、
「上司と気軽に話ができる」「上司は、部下が能力を伸ばす機会を持てるように、取り計らってくれる」などの項目のスコアが上がったという。
いきなり1on1を導入するのでなく、まずは聴く側が「聴く力」を高める──。1on1でつまずかないために、まず検討したい有効な手段の1つ。
■面談フォーマットと記録で相互理解度を深める
独自フォーマットで部下の満足度向上
「前回した内容を上司が忘れていて萎えた」
1on1に関するあるアンケートで上がった声の1つです。
確かに部下からすれば、こんなことになれば
「この前も言ったのに、自分には関心がないのだな」と思うのも無理はない。
その点、あるスタートアップ支援会社の社長は違いました。
その社長の場合、話した内容を忘れることはない。
なぜなら1on1の度に、きちんと記録しているからです。
「1on1の前に見返しておけば、どんなことを話したのかをすぐに思い出せる」と。
その会社では1on1を19年からスタート。
「創業期だからこそメンバーが何を目指しているかを知りたかったし、僕がなぜこの事業をしているのかも話したかった。相互理解が深まれば、よりパフォーマンスが高まると考えた」とその社長さんは当時を振り返ります。
現在、従業員は15人ほど。入社直後は週に1回程度、それ以降は1カ月に1回、
1on1を実施している。1回当たりの所要時間は30分から1時間。
各メンバーとランチを食べながらざっくばらんに話すことからスタートし、
20年頃からフォーマット作成をして話す形態へと徐々にシフトしていった。
「記録を残すメリット」
基本は、フォーマットに沿って話していく。
体調、モチベーション、仕事、プライベートなど、社員に聴いておきたいことが一通り網羅されている。
話を聴くことに慣れていない人でも、順番に聴いていけば一定程度のところはヒアリングできる。冒頭でも紹介したように話を聴くだけでなく、議事録もつけていく。基本的には、社長か上長がその場で書くという体制。
フォーマット化し記録を残すことの良さは、いくつもある。
まず1on1が世間話などに終始することがなくなる。
限られた時間内でフォーマットにある項目を聞き取り、
回答をもらわなければならないからだ。
同様に、部下の話にいちいち「ジャッジ」(次項)する暇もなくなる。
その分、部下は話を聴いてもらえているという実感を持つことができる。
また、記録に残すことで、遡って部下の悩みや心境の変化を追うこともできる。「3カ月前に悩んでいたことは解消した?」などと次の1on1の中で振り返れるし、各自がつけたモチベーションの点数を時系列で見ることも可能だ。
モチベーションの点数は主観でつけるものなので、個人差が大きい。
毎回120点の人もいれば、30点という人もいる。ここで重要なのは点数ではなく推移。過去の月との変動の部分が一番重要。
「先月100点だったけれど、今月は70点。この差は何?」と聞くことで、
会社や仕事への不満による離職の防波堤になる。
この会社では、この1on1の議事録を原則オープンにしていて、その大部分を全員が見られるようです。
「Be Open」を行動指針の1つに掲げ、組織としての情報の透明性をカルチャーにしている。「Be Openをうたっている以上、これもオープンにすることが当然だと考えた」と説明
唯一の例外が、フォーマットの最後の項目にある「クローズドアジェンダ」。
ごくプライベートな事柄や他のメンバーに関する指摘など、
オープンにしにくいことはここで話し、当事者だけで共有することにしている。
「びっくり退職がない」
現実問題として、1on1は離職防止に効果を発揮しているのか。
この会社ではこの2年で退職したのは1人。
また、退職理由も1on1を通して事前に把握していることが多いので、
いわゆる「びっくり退職」は一度もないという。
もちろん、このフォーマット方式が万能というわけではないのですが。
仮にフォーマットを使っても上司に「話を聴く姿勢」がなければ効果は限定的になる。
それでもテーマから外れ、話題があちこち拡散することを確実に防げる上、
1on1が嫌がられる理由の1つになっている「部下が話したことを上司が覚えていない」という問題の改善にも役立つのは間違いない。
自社の1on1を見直したいが、何から手を付けたらいいのか分からない。
そんな状況にある企業には、この会社の例は貴重なヒントになると思います。
■面談が苦手なあなた必見!聞き上手になるノウハウ
どうしたら部下の話を聴けるのか
部下の話さ聴けない背景には上司と部下という関係性があります
それを踏まえた上で、どうしたら部下の話しを聴けるのか
「まずちゃんと聴く」が大切です
聴く力はみんなが持ち合わせている能力。
でも相手との関係性でそれが発揮できないことがあります。
聴けないわけではなく、立場上どうしてもそうなりがちだということ。
僕がどれだけコミュニケーションを学んでも、
母親の話を最後まで聴けないのと一緒の構図です。笑
10分くらい聴いていると、
つい「前にも同じ話をしていたな」などとイライラしてしまう。
これが友人のお母さんの話なら2時間でも3時間でも聴けるでしょう。
つまりこれは能力ではなく、関係性の問題なのです。
上司と部下の関係もこれとよく似たところがあります。
1on1はまさにそうした状況が起きやすいシチュエーションです。
部下はたとえ1対1でも、いや1対1だからこそ遠慮して本心を打ち明けないし、
また上司も結局、本音を聞けない、という状況に陥りがちです。
「ジャッジしない」
では、そんな前提を踏まえた上で、どうしたら社員に本音を話してもらえるのか考えてみましょう。
重要なのはジャッジせずに話を聴くということです。
多くの上司は、ジャッジをしながら部下の話を聞いています。
言葉には出さなくとも、頭の中で「その考えは違う」とか「全然分かっていないな」などと思いながら話を聞いていませんか。
上司のほうは「真剣に聴いている」つもりでも、ジャッジが入っていると、部下は「話を聴いてもらった」という感覚にはなりません。
まずは相手の話をきちんと聴いてみる。途中でジャッジを加えないことだと思います。
僕は一般的な定義の「聞く」を、「聞く」と「聴く」の2つに分けています。
withジャッジメントを「聞く」、withoutジャッジメントを「聴く」とします。
上司は部下の話を聞くのでなく、まずは聴いてみましょう。
こう話すと、「聴くのが大事なのは分かるが、それだけではうまくいかない」
とs思う方も多いと思います。
確かにそうです。
そこで「聞く」と「聴く」を適切に使い分けられる状態をつくるのがベストです。仕事上のジャッジは大切です。
自分が今どちらをやっているのかに自覚的になって、どちらを使うことが相手にも自分にもいいかをチョイスできる状態を作ることです。
仕事のタスクレベルの話しであれば、「それはこうしたほうがいい」と、ジャッジしながら指導していく。
例えば、部下が企画を立ててきたとき、
・「内容」はジャッジする一方で、
・「なぜその企画を立てたのか」「何を大切にしたのか」といった部分は、
その人の気持ちや価値観が表れるのでジャッジせずに聴くといいと思います。
それでもつい人の話をジャッジしながら聞いてしまうという人には、
こんな提案もあります。
それは「すべての言動や行動には必ず肯定的意図がある」と考えてみることです。この前提に立つと、相手の意見や考え方が自分とは違っていても「それは違う!」「何を言っているのだ!」という反射的なジャッジが頭の中から減ります。
例えば、1on1で部下がチーム全体のことを考えていない意見を話しだしても、「この人からは何が見えているのか?」「どんな背景や意図があるのか?」と考えながら話を聴いてみると面白いんです。
話を「聴く」ためのもう1つの対策として、
1on1の聴き手を直属の上司ではなく、利害関係の少ない他部署の長や先輩社員、
あるいは僕のような社外のコンサルタント、人材が担当するという手もあります。
関係性が薄いため聴く側のジャッジが入りにくい上、
部下側の忖度や遠慮も直属の上司ほどにはならないです。
1on1の弊害の1つとして、大所帯の部署では上司の負担が重くなるというデメリットがあります。
これを避けるためにも、1on1の聴き手を分担することは有効なんです。
聴くのが苦手なリーダーもいるでしょう。
「ジャッジしない」「肯定的意図がある」ことを頭の片隅に置いておくだけでも、相手の話が聴きやすくなるはずです。
いかがでしたでしょうか。
1on1って、今では聞き慣れた言葉ではあるかもしれませんが、
それらを活用できていない、むしろ導入さえしていない企業さんも多い印象です。
ぜひあなたの企業でも参考にされて、
より良い活動の為に今一度1on1について考えてみて下さい^^
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