資本主義のドアノブ
最近、地味に嫌だなと思うことがある。
ドアノブだ。なるべく触りたくない。
家ならまだしも、外なら尚更そう思う。
最近行った劇場が、エレベーターのボタンに
「肘で押してください」とテプラを貼るほど
いろいろと対策をしてるのに。
トイレのドアは、前と変わらずドアノブだった。
出るときに手を洗って、紙で拭いて、
置いてある消毒スプレーをして。
せっかくきれいになった手で、
ドアノブを触って開けて出る。
……そしたら出たところにもう一個、
消毒スプレーが置いてあって笑ってしまった。
いやこれ、完全にドアノブ用じゃん。
自動ドアにしろとは言わないから、
せめてレバー式になってほしい。
そしたら肘で押し下げて、肩で開けれる。
そもそも潔癖気味なので
昔から思ってたことだけど、
今こそ声を大にしたい。
人類はもういい加減、
つかんで回すのをやめるべきだ。
……どうしてもやめられないのなら。
やめられない人間だけを集めた
ドアノブ店とかあればいいのに。
パチンコみたいにただひたすら、
並んで座ってドアノブを回す店。
♫ジャンジャン ガチャガチャ
ジャンジャン ガチャガチャ ドアノブ〜
「……どうですか、今日の調子?」
「いやー全然。開かないですね」
「私もです。朝からずーっと回してますよ」
「……あれ?開いた!ドア開きましたよ!」
「えー!フィーバーじゃないですか!」
「あれ?開いたドアの向こうに何かあります!」
「やった!景品ですよ!何ですか?」
「……手ピカジェル、スプレータイプ」
「……」
「……」
「まだまだ品薄だし高く売りますか……」
「誰かが手を汚して回さないとね……」
「ドアノブも、経済も!」
「はーっはっはっは!」
……マスク消毒用品の転売緩和は、
まだ早かったのかもしれない。