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リンガーハット月面店

自分が何を食べたいのか、
わからないまま街を歩いて。

リンガーハットに入ったけれど、
確信を得られないままに。

餃子定食を注文した。

ちゃんぽん屋なのに餃子定食。
自分が何を食べたいか
わかってない奴が頼むメニューだ。

すいている店内には、くたびれた店員と、
くたびれたサラリーマン、そしてくたびれた僕。

みんながみんな、くたびれていた。

店内を流れるピアノジャズの
Fly Me To The Moonを
ぼんやりと聞いているうちに、
自分が何を待っているのかわからなくなる。

あぁ、餃子定食なんてどうだっていいから。
僕たちを月まで連れていってほしいんだ。

リンガーハット月面店の重力は、
他の店舗の6分の1。

そしたらきっと、くたびれちまった僕たちも。
軽やかに顔を上げるから。

気の重くなることなんて
まるで何ひとつ、ないかのように。