傘はいつでも雨天決行
雨が降ったり止んだりしている。
夜になってまた降り出したので、
吉野家に逃げ込んで牛丼を食べる。
これくらいの雨で傘を買うのは悔しい。
他に客もいないし、止むのを待つことにした。
生まれてこの方、傘のことが
どうも好きになれない。
地元の沖縄ではよくスコールが降ったけど、
すぐに止んだし、すぐに乾いた。
だから子どもの頃は傘も差さずに濡れて歩いた。
そしてあんまり降るなら外に出ない。
晴耕雨読で、家に居ればよかった。
でも、もちろん大人になるとそうもいかない。
ずっと家にはいられないし、
濡れて歩くわけにもいかない。
雨にも負けず、風邪にもひかず。
そういう人に、ならざるを得ない。
……それでもやっぱり、傘は苦手だ。
買うともったいないから持ち歩くべきだけど、
できれば差したくないから持たずに出てしまう。
だって雨の降る前の傘は邪魔だし。
雨が降った後の傘はもっと邪魔だ。
そして雨が降ってる時ですら
差しても足元はガンガン濡れる。
……どういうこと!?
みんな嫌にならないんだろうか。
人は傘に甘すぎると思う。
進歩しなさすぎでしょ。何年やってんだよ。
簡単に雨に負けてんじゃねえぞ。
宮沢賢治を見習え。
アンドロイドが出てくるほどの未来だった
ブレードランナーですら普通の傘だった。
柄が光るだけ。みんなガンガン濡れてた。
止まない雨はないと言うけど、
差さない傘はまだ出てこない。
結局、雨は止みそうにないので
あきらめて店を出て、コンビニで傘を買った。
大人になっても、未来になっても。
雨が降ったら、傘を差すしかない。
傘はいつでも雨天決行なのだ。
……どういうこと!?
納得できるかこのやろう!
何が「傘」だ。なんだその漢字は!
4人も人入れてんじゃねえぞ!
1人でも足元濡れてんだよ!