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Amazonの11.6秒が物語る驚異の戦術、業務のマネジメントで使えるフレームワーク〜マネプロ#20

こんにちは! DeNAでHRビジネスパートナーをしている坪井(@tsubot0905)です。

マネジメントの進化を探求するnote
『マネプロ』は今回が記念すべき第20回目です。
(4年間の隔週水曜日の連載で100話を目指しています!)

このマネプロnoteのシリーズでは、5分で分かりやすく学べるシンプルな構成と、相手とのコミュニケーションで使えるようなシンクロしやすい問いを意識した内容を心がけています。

さて、前々回より始まった戦術編。前回よりマネジメントの4領域(事業・業務・組織・人材)それぞれに焦点を当て、戦術をテーマに探求しています。

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今回のテーマは「業務のマネジメント」。

目次はこちら!

<なんだかピンとこない業務戦略とは>

「業務戦略」ってなんぞや。
なんだがイメージが湧かないぞ。
と思われた方、いらっしゃるかと思います。

業務戦略の「業務」のところには、所属している組織や職種の名前を当てはめてみてください。

私なら人事なので人事戦略。営業なら営業戦略。
これなら聞いたことがあるのではないでしょうか?

あなたの日々の業務も「限られた資源・時間でどのように仕事を組むか」「何をやって何をやらないか」選択と集中が日々問われているはずです。

戦略のWhat to win(何で勝つか)の考え方が変われば、どこかしらの業務において選択と集中の考え方、How to win(どう勝つか)の戦術も影響をうけることになります。

戦略編でも書きましたが「自分たちが最も力を発揮できる範囲を見極め、そこに時間とエネルギーを集中する」ことが業務には求められます(ビル・ゲイツ氏の言葉)。

戦略を実現するためには、それぞれの組織/職種での戦術を上手く機能させる業務のマネジメントが必要です。

ということで、企業の理念や戦略が見事に業務へ落とし込まれていると感じたAmazonの事例を紹介したいと思います。


<事例-Amazonの理念と戦略>

Amazonは2021年の第1四半期の決算は、巣ごもり消費の拡大でネット通販事業の拡大が続き、売上高と最終利益は過去最高記録を更新しています(売上でいえば1000億ドル超え)。

そんなAmazonのミッションは「地球上で最もお客様を大切にする企業になること」。「世界で最も」ではなく「地球上で」とする辺りに圧倒的強者の目線が表れている感じがしますね(笑)

戦略の基礎となるビジネスモデルは、創業者のベゾス氏がカフェでナプキンに書いたという有名なこちらです。(以前にAmazonさんの採用イベントで拝見したスライドがお洒落でした)

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ベゾス氏は「選択肢はより多く、価格はより安く、配達はより迅速で確実に」の3要素を顧客が「変わらず求め続けるもの」として定義しており、上のサイクルを回すことで事業を成長させています。

このことからAmazonの戦略(勝つための方程式)を解釈するなら、「豊富な品揃え」×「低価格」×「最高の顧客体験」。これをひたすら追求し、長期的に成長することがベゾス氏の見出した勝ち筋です。

<Amazonが社員に求める14個の行動規範>

Amazonはなんと全世界に100万人を超える従業員がいるそうです。途方もない数字ですね(もはや小国レベル…)。

そんなAmazonは、毎年世界中で何万人も新たに採用しているので、新たな人材にカルチャーを共有しなくてはなりません。そこで、コアとなる規範として「Leadership Principles」(リーダーシップ・プリンシプル)という14個の考え方を示しています。

そのうち2つを次章の話に繋げるため引用します。

1 Customer Obsession
リーダーはお客様を起点に考え行動します。お客様から信頼を獲得し、維持していくために全力を尽くします。リーダーは競合にも注意は払いますが、何よりもお客様を中心に考えることにこだわります。 

こちらは先ほどの章の「最高の顧客体験」の話ですね。
Amazonのビジネスモデルの根本でもありました。

これに加えて、Amazonを最強たらしめているのが「スピード」です。

9 Bias for Action
ビジネスではスピードが重要です。多くの意思決定や行動はやり直すことができるため、大がかりな検討を必要としません。計算した上でリスクを取ることに価値があります。 

ベゾス氏が紙ナプキンに書いたあのサイクルを高速で回せというわけです。

Amazonの理念・ビジネスモデル・社員の行動規範を見たところで、「地球上で最も」素早く戦術を回して業務に落とし込んでいるエピソードを次章にて紹介します。

<11.6秒毎に改善される顧客体験>

2014年に『Lean UX: リーン思考によるユーザエクスペリエンス・デザイン』の著者の方から聞いた話です。

Amazonは、11.6秒ごとにエンジニアの方がコードに変化を加えてサービスを進化させていると…!

小さい変化を少ないユーザーに試し、よければ広く実施、ダメなら取り下げるということを超高速サイクルで繰り返しているんですね。とんでもないスピード感!

リアル店舗を想定してみてください。11.6秒毎に新たな工夫を取り込むなんて不可能でしょう。ユーザーの声をサービスに反映させようと思ったら、もっと時間がかかることは容易に想像できます(ネット上のビジネスにしてもこの速さはすごい!)。

ベゾス氏いわく、

お客様を大事にするためにはイノーべーティブな文化を築くことが必要で、それはすなわち、検証を沢山するチームをつくること。

Amazonは「PDCAの行動量」でイノベーティブな文化をつくり、理念を体現していくわけですね。

買いたいものをワンクリックで「すぐに」購入できる機能。レコメンド機能によって自分の関心に近いものを「すぐに」見つけられる仕組み。こういったものは、超高速の試行錯誤の中で今の形になったのだと思います。

3ヶ月での売上1000億ドル越えの実力は、地球上で最高クラスの顧客体験を業務で実践できているからこそ生み出せているわけですね。


<業務のマネジメントを考える2つのフレームワーク>

さて、ここまでAmazonの事例を見てきました。

ここからは業務を通じて
戦略を成し遂げる視点を持つために

①成果と業務のつながりを考えるフレームワーク
②能力と業務のつながりを考えるフレームワーク

の2つを紹介したいと思います。


<①スコアカード-成果と業務をつなぐ>

まずは、1つ目のバランス・スコアカード。1992年に発表され、有名になりました。より定着しやすい方法としてパフォーマンス・スコアカードという考え方も生まれています。

スコアカードは、戦略の実践を測定・評価できるように管理しながら、意味のある事業成果/目標達成につなげる手助けをする考え方でありツールです。

使い方としては「鍵となる成果領域/KRA」「鍵となる成果指標/KPI」「戦略的な重要課題」の3つをつないで考えることがあげられます。

百聞は一見に如かず。

AmazonのEC事業の「鍵となる成果領域/KRA」を戦略の3本柱に置き換えて考えた場合のイメージを紹介します(あくまで使い方の参考例として)。

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上記のように、KRAから指標/課題/業務につなげるシナリオを描くことで、業務のマネジメントを考えるツールになるのがパフォーマンス・スコアカードです。

KPIを達成するための戦略の遂行力を高める戦術として活用でき、KRAの成果を最大化するのに使えるフレームワークです。


<②SCN-能力と業務をつなぐ>

続いて、SCN(Strategic Capability Network)。

能力と業務をつなぐことにフォーカスしたフレームワークで、先ほどのパフォーマンス・スコアカードよりも具体的な業務まで落とし込みます。

使い方としては、戦略(ストラテジー)を実現するために必要な能力(ケイパビリティ)を書き、その能力を得るために行う「業務」を棚卸します。

これはアマゾンの実態を詳細までは分からないと参考例も書けないので、他社のカスタマーサービス領域で考えられた事例を紹介します。

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上記のように、戦略から実現能力/実行手段につなげるシナリオを描くことで、業務のマネジメントを考えるツールになるのがSCNです。

戦略を実現するための実行力を高める戦術として活用でき、組織能力を最大化するのに使えるフレームワークです。

<計画のズレを修正する力はあるか>

今回は、Amazonの事例を引き合いにし、2つのフレームワークを紹介しながら、戦略を業務に落とし込んでいく戦術について語ってきました。

最後に、とはいえ計画は計画通りにはいかない。
大事なのは修正力だという話をして締めます。

重要な的にむけて戦略を描き、戦術に落とし込んで行動に移していくものの、立てた計画が想定通りに行くことはほとんどありません。

「せっせと計画を立てているとき、別のことが起こる。それが人生ってものだ」とは、ジョン・レノンの言葉です。

大切なのは、むしろ計画のズレをどう業務で修正するか。
それこそが企業の実力
と言えるのだと思います。

<今回のQuestions>

以上が20回目のマネプロでお届けしたかったコンテンツでした!
いかがでしたでしょうか?

ということでマネプロ恒例、最後の問いです。

今回のテーマを通じて、リーダーやマネージャーの方々に問いかけたい4つの質問を選びました。忙しい皆さんの思考の整理と、新たな行動の後押しになれますように!

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※「自分はこう考える」「自分ならこれを問いかける」という考えはぜひTwitterにて「#マネプロ」を付けてつぶやいていただけたら嬉しいです!

<次回に向けて>

今回は、戦略を戦術に落とし込む業務のマネジメントについて書いてきました。それにしてもAmazonはすごいですね。負けていられません。

さて、次回からは戦略を実現するために「組織はどう考えるべきか?」「活躍する人材を増やすには?」といった話へと展開します。戦略を戦術に落とし込む組織や人材の視点の探求ですね。

次回のテーマは「組織のマネジメント」です。
お楽しみに!

次回は2週間後の水曜日。
良かったらぜひnoteのスキやフォローをお願いします。

今回も最後までお読みいただきありがとうございました!

読者のみなさんと共にマネジメントの進化を探求できれば何よりです。Twitterのフォロリツ大歓迎です!DMでの感想も是非!(@tsubot0905)

noteで取り上げた内容について、みなさんの持論や新たな問いかけの視点をもらうことでマネジメントの探求がもっと楽しくなるはず。ですので、みなさんからのリアクションを心待ちにしております。よろしくお願いします!

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