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AI二次創作 「異世界転生 IN 美味しんぼ〜究極のコロッケ蕎麦〜」

立食い 蕎麦夫(たちぐい そばお)――いや、今は山岡士郎として生きる主人公は、異世界転生してからというもの、毎日が刺激的だった。「美味しんぼ」の世界に転生し、しかもあの海原雄山の息子として生まれ変わったのだから、驚きもひとしおだ。原作では険悪だった親子関係も、この世界ではなぜか穏やかで、士郎は父・雄山と一緒に「美食倶楽部」で過ごす時間が多かった。とはいえ、士郎の中には前世の立食い蕎麦夫としての魂がしっかりと宿っており、彼の心を最も満たすものは、なんといってもコロッケ蕎麦だった。

美食倶楽部で料理人として腕を磨く日々の中、士郎は密かに夢を抱いていた。それは、父・海原雄山に自分の大好物のコロッケ蕎麦を食べさせ、「美味い」と認めさせることだ。雄山といえば、舌が肥えすぎて「究極のメニュー」でさえ厳しく批評する美食の権威。コロッケ蕎麦のような庶民的な料理を彼に認めさせるなんて、無謀とも言える挑戦だった。でも、士郎にはその夢を叶えるための情熱と、異世界転生者ならではのユニークな発想があった。

ある日、士郎は決意を固め、美食倶楽部の厨房に立った。「究極のコロッケ蕎麦」を作るために、彼はこれまでの経験と知識を総動員することにした。まずは蕎麦からだ。雄山が納得する蕎麦は、香りと歯ごたえが命。士郎は、山梨の山奥で採れた新鮮な蕎麦の実を入手し、伝統的な石臼で丁寧に挽いた。打ち方は、美食倶楽部の先輩料理人から学んだ技をさらに改良し、細くともコシのある蕎麦を目指した。茹で上げた蕎麦を冷水で締めると、厨房に立ち込める蕎麦の香りに、自分でも少し感動してしまった。

次はつゆだ。コロッケ蕎麦のつゆは、濃すぎず薄すぎず、コロッケの油と調和するものでなければならない。士郎は、鰹節と昆布をベースに、隠し味として干し椎茸を加えた。さらに、前世の記憶を頼りに、ほんの少し醤油を焦がしたような香ばしさを加える工夫を施した。これが、コロッケの風味を引き立てる鍵になると確信していた。

そして、肝心のコロッケ。士郎はここで大胆な一手を打った。普通のジャガイモコロッケでは雄山を唸らせるのは難しい。そこで、彼は北海道産の甘みのあるジャガイモと、美食倶楽部で育てた黒豚のひき肉を使い、隠し味にトリュフオイルを少量加えた豪華なコロッケを作った。衣は軽くサクサクに仕上げるため、パン粉を二度挽きし、揚げる油には米油を選んだ。揚げたてのコロッケからは、食欲をそそる香りが厨房中に広がった。

いよいよ仕上げだ。士郎は丼に蕎麦を盛り、熱々のつゆを注ぎ、その上にコロッケをそっと乗せた。コロッケが少しずつつゆを吸い込み、衣がしっとりとしながらもサクサク感を残す瞬間を計算し、タイミングを見計らって雄山の前に運んだ。

「父さん、これを食べてみてくれ」と士郎は言った。雄山は一瞬眉をひそめたが、息子の真剣な目に押され、箸を手に取った。まずは蕎麦を一口。雄山の目がわずかに見開く。「ほう…この香り、コシ、悪くないな」と小さく呟いた。次につゆを啜り、「ふむ、深みがある。出しのバランスが絶妙だ」と頷いた。そして最後に、コロッケを箸で割って口に運んだ。

長い沈黙が流れた。士郎は緊張で息を呑んだ。雄山は目を閉じ、じっくりと味わっているようだった。そして、ついに口を開いた。

「…美味い」

その一言に、士郎は思わず拳を握った。雄山が続ける。「このコロッケの甘みと油の軽さ、つゆとの調和…単なる庶民の料理を超えている。士郎、お前は確かに私の息子だな」

その瞬間、士郎の中で立食い蕎麦夫としての前世と、山岡士郎としての今生が一つになった気がした。究極のコロッケ蕎麦は、ただの料理ではなく、彼の夢と情熱の結晶だったのだ。

以来、美食倶楽部では「士郎のコロッケ蕎麦」が密かな人気メニューとなり、雄山も時折厨房に立ち、「改良の余地がある」などと言いながら、実は楽しそうに食べていたとか。

おしまい。

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