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マシン脳とアニマル脳。

スタートアップスタジオquantumのクリエイティブ担当役員、川下です。
「事業作家」として、未来の物語を書く中で得た気付きをnoteにまとめています。

前回は、製品やサービスをつくってからPRの方法を考えるのではなく、開発の川上工程から「ニュース性=人に伝えたくなること」をプリインストールすることの重要性について書きました。

今回も引き続き、事業のアイデアを生み出す方法について紹介したいと思います。

先日ある起業家の方と、世の中が便利になることで人類にどのような影響が生じているか、というテーマで議論する機会がありました。例えば、自動車の普及や公共交通機関の発達により人類のモビリティ(移動性)は驚くほど大きく飛躍しましたが、その一方で、人々の歩く機会は総じて少なくなり、足腰の弱体化という副作用が生まれた、といったような話です。

では、インターネットの発達はどのような変化を生み出したのでしょうか。言うまでもなく、検索すれば一瞬で、圧倒的な情報にアクセスすることができるようになり、あらゆる問いに対する<答え>を簡単に見つけることができるようになったことです。わたし自身、もはやインターネットのない生活は考えられません。しかし、こうした多大なる恩恵を受ける一方で、モビリティの発達と同様に、なんでも欲しい情報が手に入る分、インターネットの発達により、妄想力の弱体化が起きていると感じることがあります。

わたしは足腰の弱体化を防ぐ意味で、通勤や日中の移動の際、近距離の移動に関しては極力バスやタクシーを使わずに歩くようにしていますが、妄想力の弱体化を防ぐためにも同様の習慣づくりが必要だと考えています。具体的には、意識してインターネットを遮断して、自分の頭でもくもくと妄想する時間をとるようにするということです。

モビリティの発達が招いた運動不足を補ったり肉体を鍛えたりするために、現代人にはジムに通うという習慣が生まれました。それと同じように、考える力を鍛えるためには、ボーッとパソコンやスマホから情報を取り入れるだけではなく、日頃から自分の頭を使って考える習慣をつけることがますます大切になるとわたしは考えています。

妄想力の弱体化に関してはもう一つ、より根本的な話になりますが、日本では小さな頃から「マシン脳」を磨ける環境が整ってしまっている分、頭の使い方が偏りになりがちであるように思います。どういうことかと言うと、子どもたちの学習方法に大きな影響を与えている「受験」の世界では、まだまだ「問題の解き方を理解して、記憶すること」が重視されています。これには戦後、大量生産・大量販売の時代以降、分業制で効率よく、再現性の高い仕事をできる人が評価されてきたという経緯が影響しており、それゆえ、記憶したことを間違いなく繰り返すことができる「マシン脳」を磨くことが求められてきたのです。

しかし、製品やサービスが飽和し、待っていれば次々に仕事が降ってくる時代はとうの昔に終わりました。これからは、社会のどこに問題があるのかを野生動物のように嗅ぎ分け、唯一「ヒト」という生物だけに与えられた想像力と創造力を駆使して未来をつくっていく「アニマル脳」を磨くことが求められているように思います。

では、どうすればこの「アニマル脳」を鍛えることができるのか。それは、インターネットからの情報収集だけに頼るのではなく、五感の記憶を増やすことです。実際に目で見て、耳で聴いて、鼻で嗅いで、口で味わい、肌で感じる。そうした五感記憶は、言わば、想像のボキャブラリーです。語彙が増えれば多様な文章を組み立てられるようになるように、五感の記憶(わたしは「五感ボキャブラリー」と呼んでいます)が増えれば、多種多様な妄想の世界をイメージすることができるようになるのです。

「マシン脳」に偏った使い方だけではなく、「アニマル脳」を鍛え、活用することができるようになれば、きっとかつてない新しい未来を想像し、創造することができるようになるでしょう。

ここまでアイデアの生み出し方について書いてきましたが、次回はそのアイデアを実現するために、どのようにチームを組成していくかを紹介したいと思います。

イラスト:小関友未 編集:木村俊介

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