カニカニ大作戦
虎や狼が獲物の小動物を襲う場合、群れの中で最も姿勢の悪い個体を狙うらしい。
小動物とはいえ姿勢のよいものは自信を覗かせ対するものは怯え、弱気を感じさせる。虎や狼にしてみても面倒な闘いをしたくはないから楽に仕留められるものを選ぶのは自然の流れだ。本能の世界。
人間にしても同じで自信に満ちている人ほど姿勢がいい。その自信が過信か歪んだ自信も含めて。心に余裕がある人ほど姿勢がいいという原理がある。
意識して背筋を伸ばせば誰でもよい姿勢がとれる。無意識に姿勢がいい人は自信に満ちていて歩く速度も早い。ここ数年、飛行機に年間数回乗る生活にある。例年だとこの時期は小松空港経由のカニであるが、今はそのような状況にない。
乗るのはもちろん格安航空。心配になるぐらい安い時もある。地方の空港に行くと、都市部の空港のように空港建屋まで歩行部が連結することなく階段が連結して直接地面に降りることがある。その時にいつもいつも見上げるのは両翼についた強靭なジェットエンジン。ジェットエンジンとは熱で強力な噴流を産生するものだが飛行機はその気流の力により推進力を得て飛ぶ。ジェットエンジンからは自信は感じられなく故障しないのかという疑心暗鬼が優る。
いつも思うことはその巨体を時速800キロで、高度1万フィートあたりを人間の操縦で数百キロも飛んでしまうのだから今更ながら驚くべきことだ。
時々、乱気流で飛行機が大きく揺れることがあるが、そのたびに死を覚悟する。そのたびにだ。直後に機長から直接のアナウンス、ただいまの揺れは気流の関係からの揺れなので飛行には何ら問題はありません云々、などと自信に満ちたアナウンスがある。この自信が、この言葉が1万フィート上空での唯一の救いになる。
出来るものであれば途中、セブンイレブン雲上店に寄ってもらいスウィーツでも買って操縦室に差し入れを贈りたくなる。
狼や虎が獲物を狙う時の最初の一歩はジェットエンジン載せる域を超えてロケットエンジン並みだ。
身の危険を感じた時に姿勢がいいと直ぐに避難の体制に移行できるが姿勢が悪いとその立て直しのための致命的なロスタイムが生じる。
近くの魚市場の朝の競りが終わる頃を見計らい足が取れてしまい市場に出せなかった廃棄されるだけのカニを虎視眈々と狙い、拾いに行く。
カニ拾いに自信がある。