エッセイ日本海北上小作戦 1

 旅の空は続き新潟から羽越線に乗り換え北上。目指すは酒田という街だ。目指すわけではなく昼前の電車の中でのビールを飲みながら曇天の下、冷たい北風に加勢され、荒れる日本海を眺めているだけなのだが。

 沿線に散在する民家の庭先に、カラスが吊されているのが見える。これは本物のカラスのようでカラスよけらしい。その効果の程はわからないが効くのだろうからそうしているのだろうか。乗っているのは羽越本線の特急いなほという電車。まさしく日本海北上線。海岸線があり、並行して国道が走り、少しの民家、そして線路が走り、山肌の構図が続く。

 この路線は少し昔か、ローカル車輌が山形県内にさしかかったあたりの橋梁を通過した直後に、吹雪の中、突風にあおられ転覆、多数の死傷者が出た大惨事だった。それは12月25日、クリスマスの日だったが、その一週間前、ぼくは特急いなほ号という車輌こそ違えどその路線を走っていた。だからなおさらそのまま事故が印象的に頭の中に残っている。

 そんなことを思い出して書いてしまったが、旅の目的は酒田という街でイカを食べながらのビールであった。名所旧跡を訪ねるとか、その土地の文化に触れるだとかそんな思いはなく、常にその土地のクイモノ+酒が旅の目的だったからどのみちこのような所詮帰り行く旅であることは間違いないのでわざわざ文章にするほどのものではない、そんな価値さえないと自覚はありながら書いている。そんなことを書きながらも目的は、鳥海山をみる、少し登るってのものあった。       

 元々山登りやキャンプは好きな方ではあるが、苦しい思いをしてまで山頂を目指したくはない、しかしその山に登りたい、ぼくは麓専門の登山家でもあった。軽く汗をかいて下界を見渡せる開けた場所に到達出来ればぼくの中では登頂成功になる。正確には、登途中見晴台到達成功になる。これまでいくつの有名な山のふもとを彷徨っただろうか。名誉のためにたくさんの高い山の山頂到達もありますが。

 話に一貫性がなく飛ぶが、早い話、鳥海山に登りふもとに戯れ酒田の有名な倉庫街のあたりでイカとビール、そんな旅の始まりのことでした。

  気分次第のいつかに続く


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?