香港へ中国茶を探し求めて~2019年3月
香港は父の仕事の関係で小さい頃から何度と訪れている街。
住んだことはないものの、おそらく50回以上は訪れている街です。
香港の入国審査を通過し、空港から外へ出るとなぜか「ただいま」という気分になるのですが、それはおそらく、訪問回数だけによるものではなく、香港の「新しいもの」と「古きよきもの」が混在する空気感が好きで、私の肌に合い、その感覚に対しての「ただいま」なのかなと思っています。
「新しいものを取り入れる姿勢」
ちょっとお茶の話からそれますが、香港の「新しいものを取り入れる姿勢」について。
香港はイギリス統治下にありました。現在もなお、独立行政区です。
きっと「異なった大きな文化の波を受け入れる」苦難もあったと思います。
しかし、いやだからこそ、香港にはいつも「多様性を受け入れる広さ」を感じます。
紅茶とコーヒーがミックスされた「珈琲紅茶」は香港喫茶の定番でもあり、スーパーではインスタントも売られています。
街の大きなレストランで「サッポロ一番」の麺が鍋のシメのオプションとして表記されていたりします。
新しいお店ができては、数か月後先に訪れるときにはなくなっている...そんな風景は日常茶飯事です。「とりあえずトライする。やってみよう!」という姿勢は特に若い人々に多い気がします。
新しいものを取り入れてすぐチャレンジ、そしてチャレンジ。
多種多様な人々を、文化を受け入れる明るさを香港にいつも感じます。
「古きよきものを大事にする」
新しいものを積極的に取り入れる一方で、古きよきものが光るのも香港です。
建築現場で使う足場が竹で組んである、レストランで大きなポットで出される中国茶、風水に基づいて建てられたビルや公園、お年寄りやその教えを大切にする心。
香港の原宿といわれるほど人がごった返している「銅鑼湾」という街で昔ながらの大きなリヤカーをひいた高齢の方が大きなビニール袋を落としたとき、大勢の人が「おじいさん!」「おじいさん!」「落としたよ!」と声をかけたり、お世辞にもきれいと言えないビニール袋を抱えて追いかけたり、リヤカーに積みなおしてあげるというシーンを見たことがあります。地下鉄でもお年寄りにさっと席を譲るなど、心温まる光景を何度も目にするのもまた香港です。
スターバックスやアメリカのドーナツショップ、台湾のタピオカドリンクスタンドがたくさんひしめく香港で、昔ながらの中国茶や亀ゼリーなどを販売するスタンドもしっかり存在する。
そんなところに香港の面白さとほっとするものを感じるのです。
「中国茶探し」
さて本題の中国茶探しについて。
今回は2つのお店をご紹介したいと思います。
1軒目は「顔奇香茶荘」
たくさんのお茶の中でお店の店主が推すのは「鉄観音」
鉄観音は「青茶」。広い意味においてはウーロン茶の種類の一つで発酵を途中で止める半発酵茶です。
焙煎して発酵を止めるのですが、しっかりと焙煎をした重厚な風味と味わいを特徴とする伝統的な重焙煎と、さわやかで軽いテイストが近年の人気の軽焙煎。
同じ鉄観音茶でも焙煎の違うものを揃えていて、まさに「古きよきもの」と「新しいもの」が混在する香港と同じ。
香りをかがせていただきましたが、焙煎度合いが香りだけでもはっきり分かりとても興味深かったです。
私が試飲させて頂いたのは「白毫銀針」
銀針茶は「白茶」という軽発酵茶なのですが、中でも白毫銀針は「芽」だけをつかった白茶を代表する高級品です。
見た目は銀色の針のように細く、これがお湯を注ぐとだんだんと膨らむ様子は見た目にも楽しいお茶です。
通常お茶は「揉み」の作業があるのですが、このお茶は揉みません。もちろん焙煎もしません。
ですので、お茶の葉のポテンシャルが一番出やすいお茶でもあるのです。
「白毫銀針」の美味しいお茶を仕入れられるお茶屋さんは推して知るべしと私は思っています。
一煎目は味も香りもちょっと薄め。ただ間違いのない上品な香りがたち、とても品のよい甘みがあります。
二煎目、三煎目とだんだん香りも甘みもしっかりしてきます。
思っていたより香りは控え目でしたが、何より雑味がない。
「白毫銀針」は身体の熱を取る作用があり夏に飲むのがおすすめのお茶でもあります。
もちろん水出しも可能。となると、一晩水出しするとちょうどいい甘さと香りが出ると踏んで購入しました。
もう一つは「祁門紅茶」
インドの「ダージリン」、スリランカの「ウヴァ」とならび世界三大銘茶の一つです。
こちらは試飲はしませんでしたが、缶のレトロさもまたかわいく、銀針茶でお茶屋さんに対して安心感が生まれましたので購入。
祁門紅茶はその香りが蘭の花や糖蜜に例えられるほど華やか。期待が高まります。
もう一つご紹介したいお茶屋さんは「林奇苑行」
こちらのお店はカナダにも支店があり、アメリカ、ヨーロッパにも卸している茶商です。
こちらのお店に伺う目的はお茶の見せ方、魅せ方です。
異文化圏にて販売するということは品質はもちろんのことですが、パッケージやブレンドなど見せ方にこだわりを持っているはず。
私にも日本の抹茶、緑茶に続いて、ヨモギや黒豆などの日本の健康茶といわれるお茶を海外のハーブティーのようにオシャレに広く認知してもらいたいという夢があります。
そのものの美味しさだけでなく、どう見せていくかということも常に学んでいきたいと考えています。
伺って思ったのは、やはりパッケージのオシャレさ。
中国茶では少ない個包装のものがあったり、色使いがとてもオリエンタルで欧米の方が好みそうなパッケージもありました。
そして、ブレンドの多様性。
香りづけされたものが多かったり、中国茶店でありながらローズ使いがとてもうまかったり。
工芸茶という丸いお茶がお湯を注ぐとカップの中で花が開くお茶の種類も多く、「健康に飲む」「日常に飲む」というお茶の見せ方より
「オシャレにお茶の時間を楽しむ」という方に重点を置いた商品がいくつもあるのはとても珍しく「林奇苑行」ならではだと感じました。
購入したのはROSE RED TEA
バラの花がブレンドされた香りの高い紅茶。
他のお茶とのブレンド用に購入しました。
そして個包装になっているパッケージのステキなアソートセット。
こちらはデザインの参考に。
香港お茶探し紀行~第一弾はこの辺で。