きょうだい、この、フクザツで悩ましい存在
子ども達、とりわけ上の子たちにとって、弟・妹ほどフクザツな存在はない。
ある日の診察室での会話…
私:「赤ちゃん、かわいいかい?」
新米お兄さんの”ゆうくん”(まもなく4歳):「う〜ん、わかんない…でも、ゆうちゃん、もうお兄ちゃんだから、がまんする!」
今までは、自分が独占していたお母さんを取られてしまう。おまけに、これまで周りの大人達はみんな自分に注目してくれたのに、今は赤ちゃん中心で、我慢する事ばっかり。兄・姉にとって、ある日、弟・妹が突然現れた時の衝撃、驚きはかなり大きいのではないか。その日を境に、ガマンする事だってグッと増えちゃうし…
そりゃぁ、子どもならずとも、「赤ちゃん返り」したくなるだろう。
一方、両親、特にお母さんにしてみれば、生まれたての赤ちゃんに何かと手がかかるのに、上の子がやたらと甘えてきて離れなかったり、それまで一人で出来ていたことを「やって、やって」とせがんでみたり。中には「オシッコなんか教えないもん!」なんて反抗したり…
「もう!この大変な時に!」なんて、ついつい思ってしまいがちだが、それがまた、上の子に響いてしまって、ますます言う事も聞かず、わがまま言ってぐずってばかり。一体、どうしちゃったの……と困ってしまう事も多いに違いない。それでも、上の子ども達の年齢が赤ちゃんと4つ以上も離れていれば、ある程度理解して、子どもなりに受け止める事もできるのだけど(モチロン、彼らの心中だって穏やかじゃないはずだけれど……)、兄・姉がまだ3歳ほどの年齢だと、かなり複雑な事になる。
きょうだいにとって、赤ちゃんは自分たちのいわば「既得権」を脅かす脅威なのだ。
そんな時、親は「もうお兄ちゃん(お姉ちゃん)なんだから」とか、「もう自分でできるでしょ」などとついつい言ってしまいがちだけど、それはかえって逆効果な事が多い。子ども達は、赤ちゃんじゃなく、自分たちを見てほしいし、今までみたいに、自分たちもかまってほしいと、チョット不安に感じているのだ。
そうだとしたら、ここは上の子ども達がどうしたら安心できるのか、と考えて見たらどうだろう。
子どもが安心感を得る、特に乳幼児期の子どもにとっては、直接、お母さんと触れ合うスキンシップが大切。だから、赤ちゃんが寝ている時や、赤ちゃんの面倒をお父さんに頼める時は、ぜひ上の子ども達を積極的にぎゅ〜っと抱きしめてあげてみる。そう、その時に「だぁい好きだよ!」なんて言ってあげるのもいい。子ども達はもう大喜びです!
少しお手伝いができる年齢なら、例えば「おむつを持ってきて」などとお手伝いを頼んで見るのもいい。きっと喜んでお手伝いしてくれるだろう。そう、時には手をつないで一緒に買い物に行ったりしても良さそうだ。赤ちゃんに取られてしまったお母さんを、自分だけで独占できるのも、上の子たちにとっては、とてもうれしい事なのだから。
中にはこの時とばかりに甘えてくる子、わがままを言ってグズる子もいる。
そんな時は、なだめたり頭から怒ったりするのではなく、大人も一緒にグズって見るのも一興かもしれない。
「ぼく、ごはん食べない!」ときたら、やさしく「食べなくてもいいよ〜」とか、「おしっこ、教えない!」には「いいよ〜。じゃあ、お姉さんパンツやめて、赤ちゃんと同じおむつだからね!」なんて言ってみたりして……。
まぁ、実際にそんな対応を取るのは大人の側にも心にゆとりがないと難しいので、なかなかとっさにはできないものだけど…そうそう、そんな時こそお父さんの出番だ。日頃は存在感の薄いお父さん!ぜひ、上の子たちの面倒を見て、ここで子ども達との距離をグッと縮めてほしい。
さて、赤ちゃん返り。その最中はなかなか大変で、いつまでもこんな調子が続くのではないか、なんて思ったりしがち。でも、その期間は案外長くなく、後から振り返れば、ごく限られた間の事だったなんて思える事の方が多い。
そう思って(信じて……)いれば、少しは余裕も生まれてくるのでは?
それから、子どもはみんな自分よりも小さい子どもを可愛がります。だから、赤ちゃん返りの最中に「あかちゃん、キライ」とか「赤ちゃんなんてイラナイ!」なんて言ったり、実際に手を出したりしたとしても、心配は無用です。上の子たちは、弟や妹を基本、可愛がるものなので、赤ちゃんの存在に慣れてくれば、こっちもじきに落ちつきます。
ただし、親と子ども達との関係が、長い年月かけて変わって行く様に、きょうだい間の関係も、これまた共に育つ時間の中で次第に育まれ、変わって行くもの。0歳と3歳ではきょうだい間に大した差はないけれど、やがて20歳と23歳になった時、二人が「大人の関係」になっていられるか…
日々の暮らしの中で紡がれて行くのは親子の関係だけではない。
となると、いやはや、子育てってホントに悩ましい…
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