061_20240926_ガンニバル

基本情報

  • 二宮 正明先生執筆の、サスペンスマンガ

  • 日本文芸社「漫画ゴラク」で2018年10月19日号から、2021年12月10日号まで連載

  • 全120話、全13巻で完結済み

  • メディア展開

    • 2022年12月から、Disney+ にてドラマ化

大まかな紹介

この村に、喰われる―。
都会から遠く離れた山間の“供花村”に、家族と共に駐在として赴任した阿川大悟。
しかし、美しい村には、ある噂があった―この村では人が喰われるらしい…。
警察官としての信念で真相を探る大悟だが、やがて村の穏やかな日常が“おそろしい”顔を見せ始める。
次々と起こる不可解な出来事に、友好的だがどこか不気味な村人たち…
大悟はすべてに疑心暗鬼になり、狂気の淵へ追いつめられてゆく。
おかしいのは自分か、やつらなのか…“人間の本質”を暴く、全世界を震撼させる驚愕の結末とは。

Disney+ ドラマ「ガンニバル」公式サイトより

導入

  • 山奥の村、展望台のような「お休み処」と書かれた場所で、制服の警官がカップ麺を食べている

    • 「よそもんがサボってるぞ!」「新参者だけど供花村(くげむら)の駐在だ、立派な村の一員だろ」

  • 村人「もうこの村に慣れましたか?」

    • 警官「はい、とっても良いところです。この村に骨埋める覚悟っす!」

    • できる限りの作り笑顔で答える

  • 家兼駐在所に戻ると、奥さんと子供が居る

    • 「ひまそうなら引っ越しの片付け手伝ってよ、どーせなんも起こんないでしょ、こんな平和なとこで」

    • 「なにも起こらないっていいことだろ」

    • 「前の駐在さんは暇すぎてパチンコで借金作って失踪、村人とトラブっておかしなこと言い出したんでしょ?」

    • 「ああ、この村の人たちが人を…」

  • 電話が鳴る

    • 遺体が見つかったとの通報

  • 村人に釣れられて山に入る警官

    • ニット帽の青年にせかされている

    • 「はよ来い駐在!その調子じゃおまえ吐いちまうぞ。かなりひでぇぞ」

  • 顔が損壊した老婆の遺体

    • 「熊だ、熊がやりよった、かわいそうによ…」

    • 「仇は俺ら猟友会がとったるけな」

  • 警官が遺体になにかを見つける

    • 「腕に…熊じゃなくて人に噛まれた痕があるなって…」

    • 「ばあちゃんボケてたから自分で噛んだんでねえの?」

    • 「自分で噛むなら内側でしょ?外側から噛まれてる」

  • 急にキレるニット帽の青年

    • 「だったら何にひっかかってんだコラァ!後藤の人間がばぁちゃん虐待しとったって言いてぇのか?」

  • 猟銃を額に向け、恫喝する

    • 「ヨソものに村の人間を馬鹿にされるのは我慢なんね!俺が”ばかにされた”と感じたら頭ブチ抜いてやる」

    • 「わかった悪かった、許してくれ」

    • 「ならいいんだ、ホレ仲直り、冗談やって」

  • 異常性を感じる警官

    • 「冗談だと?今のがそれで通じると思ってんのかこいつら」

    • 「言っとくが完全に脅迫罪だからな、次は即逮捕するから気ぃつけろよ」

    • 「お互いにな、でもあんたは気に入った。前のヤツと違って話がわかりそうじゃわ」

  • 居酒屋に誘うニット帽の青年

    • 「はっちゃんに来いや、歓迎会としけこもうぜ、ここで生きてくなら大事なことじゃろ」

    • 「前の駐在の方って、たしか失踪した方っすよね、村の人と揉めてたらしいけど、皆さんともなにかあったんすか?」

    • 「別に…」

  • 歓迎会に行くため、一旦家に帰るが…

    • 奥さんと揉める

    • 「こういうせまいとこじゃ付き合い大事だろ」

    • 「嫌いなのよね田舎のそういうとこ」

    • 「うるせえ!」

  • 居酒屋につくと、「後藤家」と呼ばれる親戚5人くらいの場だった

    • 「嫁とガキはこんのか」「ええまぁ、ちょっと用事で」

    • 「うそこけ!オメの嫁も子供も家にいるでないか」

  • 戦慄する警官

    • 「なんで知ってんだよ?ここで生きてく?生きてけんの?俺達…」

  • 場面変わって自宅、奥さんが片付けしている

    • イライラしているが、そんな中、子供が雪の中外へ出て帰ってきてないことを雪の中の足跡で気づき、ため息をつく

    • 「失踪した前の駐在さんもここで暮らしたのよね?なんだか怖くなってきた」

  • ふと手をかけた柱に、なにか文字が掘ってある

    • 「逃ゲロ」

  • 場面かわって居酒屋、なんだかんだで馴染んでる

    • 「しゃべってみたらアンタ良いやつだな!」

    • 「あんたも都会の人間としてはおもれーでないか!」

    • 「田舎に住むのは不安だった、それに失踪した前の駐在が揉めてたって話もあったし」

    • 「あれは自業自得じゃないか?」

    • 「でもな、消える前に触れ回ってた供花村の人たちは人を…食ってた…なんてな」

一話完

感想

  • 最初読み始めた時、最近良く当たる「猟奇殺人謎解き現代劇」かな?と思った

    • 「マイホームヒーロー」「テセウスの船」に続き、サスペンスものに当たる

      • 自分の趣向かもしれない

    • 今回はSF/ファンタジーは少なめ

      • タイムリープとかSFは無し、ファンタジーは、まあ2点くらいあったかな?

        • パッと思いつくのは「病気」と「超人」くらい

    • それだけに「過去、なんなら現代でも起こり得る事件」と想像させるのに、説得力があった

      • 20〜30年前までなら、起こっても全然不思議ではない

        • カルトが横行したり、理由不明な死体が池に打ち上げられたりした時代

      • 「今、現代に起こったら、こんな報道のしかたされるやろか?」とういのも想像出来た(というよりしてしまった)

        • それは「現代に起こってもギリギリ”あるかもしれない”思わせるリアリティ」という絶妙なところを描いている

  • 「田舎かつ村社会」の怖さ、みたいなもののリアリティはある

    • わりと、伝説的に聞く「因習」みたいなものは、過去実際にあってもおかしくないなぁ、と怖くなるものばかり

      • 村唯一の助産師さんが「死産だ」といって生きている赤ちゃんを連れ出す、とか

      • 「絶えず誰かが自分ちのことを観察してる」「行動が告げ口されて村全体に伝播される」は、劇中のような「それを生業にする」ほどの露骨さではないものの、「小さい村だからねー」という言葉を盾に過去、なんなら今もされてることだと思う

    • 作中では、主人公(警察)と「後藤家」と「村人」という三つ巴での戦いになるのだけど、村人が一番怖かった

      • 殺人とかの恐れはないけど「こんな人々と付き合って、未来永劫仲良く努めて、高圧的な態度には時に謝らないといけないのか…」とかなると、絶望がすごかった

  • 序盤〜中盤まで「これはどんな話(どんなフォーマット)なのか」をなかなかつかませない展開だった

    • これは「漫画としては良いこと」である

      • ギャグ漫画や勧善懲悪モノでないなら、読者を飽きさせないでいて、かつ惹きつけ続けるのは、良作の条件

    • 対決姿勢でいくんか、現状維持でじっくり謎解きするんか、はたまた土地を離れて別確度から攻めるんか…途中でいくつもの展開を読者として考えた

      • 最初、主人公の過去と”行動理念”みたいなものが明かされてないだけに、展開の幅が広く考えられ、かつ見事に裏切ってくれた

  • 多くの人物が登場する群像劇…であるが「捨てキャラ」「モブキャラ」はほぼ居ない

    • スキあらば「キャラを掘るための過去回想」が始まる、という「ベルセルク方式」

      • なんなら、本家よりその傾向の強い「濃縮ベルセルク方式」である

    • 自分の振り返りでは、「おおよそ全てのキャラの行動には”そうする動機”がある」で、過去回想で答え合わせする感じ

      • そういう意味では、ネームドの登場人物は、割と設定が練ってあり、予め考えられた話なのかな?と

      • ま、後付けでも過去回想さえ打ち込めば辻褄は合わせれるけど

    • 特に、主人公の過去の判明は、現在の葛藤と「本来ならこういう性分」みたいなのが分かってきて、中盤〜終盤の行動へのブースターになってて、なるほどと思った

  • 早い段階で、登場人物は出揃うが「予想可能」と「サプライズ」の絶妙なところで納得感がある

    • 終盤、新キャラ追加して「実はこの人がいろいろしてましたー」みたいな「それをやっちゃあもう何でもありやん」みたいなのはない

    • かと言って、俺程度が予測できるほどのEasyさでもない

    • うっすい印象の既存の登場人物が「え、そうやったん?」はあるものの、過去回想入る前に「立ち位置と人物名は明かしてる」ので、予想不可能でもないし、エエトコついてくる

    • …なんだけれど、ちょっと後半は「過去回想を大量投入しすぎ」かも?

  • 「行動心理」や「群集心理」のお勉強になる、かも?

    • 多少誇張はあれど「人はそうなりがち」のテンプレを示してくれてる気もする

      • 例えば「一人じゃ良心の呵責で出来ないことも、人が集まればどこまでも残虐になれる」とか

      • 例えば「物事が良いほうに向かってても、過去の恨みはそれをぶち壊してでも復讐する気持ちに勝てない」だとか

      • 例えば「刷り込みは、その理屈ごと教育されていたとしても、最後には理由のない”せねばならない”だけ残り、呪いのごとくそれに縛られ実行するマシーンになる」とか

    • 作品のメッセージとして、割と「相手の”水に流す”みたいな言葉が出ても、過去の体験を侮るなかれ」って言うてる気もする

  • ダークな雰囲気だし、物語の帰結をどこ方向にでも出来たと思うが…

    • 中盤以降、割と「解決する問題」「やっつける敵」ははっきりするし、そこを解決すれば”ハッピーエンド”とできた

    • また、謎に包まれてる「追っかけてる伝説」が事実なら”バッドエンド”でも全然成立した

    • そういう、作者側からの「どこに帰結しても等価」である状況で、どういう決着で終えるのか…は最大の見どころなので、自分の目でたしかみてみろ!

総評

  • きっちり帰結点のある「現代ホラーサスペンス」を読みたい人におすすめ

  • また、ドロドロとした「村社会の常識」や「村の因習」みたいなのを感じたい人も読んでみてほしい

  • もしかすると「行動心理」「群集心理」の勉強にもなる…かもしれない


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