一生忘れないであろう2つのステージ 〜アメリカライブツアー8日目〜
2024年11月14日。
メキシコとの国境に位置するテキサス州最西端の街、エルパソで6時起床。今日はここから南西へ約900km、このツアーの拠点であるサンアントニオに戻る。ずっと約1000km離れてると思ってたけど、100kmはもう誤差だ。
身支度を済ませて出発まで2匹のネコと遊ぶ。大きいネコはマイペースでツンツン系。子ネコの方は人懐っこくて、カメラを向けると撮り終わるまでしっかりキメてくれる読モ系。先日の犬といい、アメリカの動物は賢い。
※先日の犬の件はこちら↓
ちなみにツアーマネージャーの2人はネコアレルギー持ち。だから家には入らず車の中で寝ていた。ちゃんと寝付けなかったみたいでかわいそう。国際運転免許を取っておけば良かった。
7時15分頃に出発。泊めてくれた友達はまだ寝ていて、ベッドの中で「んあ…またね…」みたいな感じで軽いお別れになってしまった。なんかごめん、ともかくありがとうございました。
来た道を戻るということは、昨日と同様にスコーンと抜けた景色の中をひたすら移動するということ。13時頃にトイレだけがあるパーキングエリアで最初の休憩を取る。
この旅初の大自然の中での休憩。窓ガラスを介さずに肉眼で大自然を見て、思い出したように深呼吸をする。砂漠地帯のような乾燥地帯だけど、体の中を換気するのには充分。肩の力も程よく抜けた。
30分くらい休憩してから再度出発。その後はまた休憩→移動→休憩・給油→移動と、行きと同じくエンジン音と大自然に語彙力をかき消される。
サンアントニオに着いたのは日が暮れた18時頃だった。2人とも本当に運転お疲れ様でした。
日本のバンド「salsa」と合流
今日はこの家から歩いていける距離にある「Hi-Tones」というライブハウスでの演奏。ツアーマネージャーであるロバート自らが主催したイベントに出演する。
実はこの日から東京を中心に活動している日本のバンド「salsa」が、ロバートのコーディネートのもと、アメリカツアー初日を迎えることになっている。Hi-Tonesでのイベントにも出演するので、遠く離れたこの街で日本のバンドと対バンだ。
ロバートがサンアントニオ空港までsalsaを迎えに行っている間、身支度や洗濯などをしながら待つ。1時間もしないでsalsaを連れたロバートが帰ってきた。
salsaとは共通のミュージシャン仲間がいるのですぐに打ち解けた。アメリカツアーの様子などを話したり、彼ら自身3度目のアメリカツアーということで、過去の話なども聞かせてもらった。ドラムさんが経由地であるサンフランシスコの空港で別室送りになった話も聞かせてもらった。行きの入国審査がスムーズだったから本当にあるのかななんて疑ってたけど、やっぱりあるんですね…。
車2台に分かれてsalsaと一緒にライブハウスへ移動。「johannは2番目でsalsaは4番目ね」と会場に着いてから聞かされる。この旅ではもう恒例だ。salsaのメンバーさんたちも「前もこんな感じだった」と笑っていたので、みんなが通る道なんだなと納得する。
間違いなくこのツアーのベストアクトを更新する
楽屋はないのでイベントが始まるまでの間、会場の外にある芝生がふかふかの広場で準備をする。途中、salsaのメンバーさんや前日のエルパソでも一緒だったインストバンド「Rob ford explorer」と「Floral」の2組とも話したりして、マインドを少しずつミュージシャンモードにしていく。
1バンド目が終わって21時15分頃にセッティングへ。今日は機材トラブルもなし。一段高くなっているステージが狭く、ドラムとキーボードしか乗らないため、ギターさんと自分はステージ下で演奏することに。半フロアライブ状態だ。
1バンド目の時点でお客さんは結構いたけど、johannの時点で会場はほぼ満員。演奏が始まると1メートル前にはもうお客さんがいて、なだれ込んでくるんじゃないかと思うくらい盛り上がっている。
インストバンドではあるけれど、「oh oh〜」だけの簡単なシンガロングの曲があるので、その部分はお客さんにマイクを渡して歌ってもらった。順番をつけるべきではないけど、このツアーで一番盛り上がったと思う。
パフォーマンスが終わった後はお客さんと話したり写真を撮ったり。ベースをやっているという若者が何人かいて、みんなそれぞれ写真を撮りたいと言ってくれたので、自分のベースを掛けてあげて写真を撮った。喜んでもらえたみたいでよかった。写真シェアしてもらえばよかったな。
1組置いて今度はsalsaの番。日本語の歌だけど英語圏の人の心も鷲掴みにする独自の世界観、緊張感がありながら確実に体を揺らすアンサンブル、不意に訪れるブレイクがもたらす緩和、そして正確なリズムが脳まで揺らす。ついさっきアメリカに着いたばかりとは思えないパフォーマンスだった。
彼らの演奏が終わった後は、お互い労い合ったり称え合ったり、ベースさんと写真を撮って共通の後輩ベーシストにLINEしたり。異国の地で尊敬できるアーティストに出会えて嬉しい。
急遽ライブ追加。閑散とした店に人が殺到する
そんな興奮冷めやらぬ中、ロバートが「こないだ夜中に出たライブハウスでもう一本ライブしよう」と言いだした。
会場は2日目の夜中にオファーを受けて出演し、オーナーさんに高級肉料理もご馳走になった「Jandros Garden Patio」。1日2ステージをやった件は2日目の記事を、お肉の件は5日目の記事をご覧ください。
この後に演奏するRob ford explorerとFloralも見たかったけど、明後日同じフェスに出演するからその時にじっくり見よう。
0時半頃にHi-Tonesを出て、ほんの数分で到着。慌ただしく準備をする。ロバートは「俺はさっきのライブハウスに戻ってお客さんを連れてくるから1時頃から演奏しろ」と言い残してまた戻っていった。
この時点ではお客さん数名が飲んでる程度。ここ数回のライブはしっかり告知がされているイベントが多かったから、得体の知れないアジア人バンドへの視線が懐かしい。相変わらずベースアンプはないのでPA直。無事に音が出て、ある程度聴こえてさえいればなんとでもなる。
1時15分くらいにやり始める。前回同様、店の扉は開けっぱなしなので、ライブハウスやクラブが密集しているこのエリアでぶらついている人たちを呼び込みたい。
1曲目の途中からどんどん人が入ってくる。Hi-Tonesにいたお客さんも結構いるのがわかった。コーラスでマイクを渡した人たちもいた。
演奏も中盤に差し掛かると、さっきの閑散ぶりが嘘のようにお客さんでいっぱいになった。客の入らない店に奇跡が起きて大人気になる…みたいなサクセスストーリー系の映画がありそうだけど、まさにそんな景色。
ちょうど2時にセットリストをやり切ると、演奏を始める前は静かだった店に歓声が響く。「もっとやれ!」的な声が聞こえたけど、営業時間が2時までなので演奏はここで終わり。
この日の2ステージはこの旅の中でも特に印象深く、一生忘れないだろう。死ぬ間際にこの日のシーンが脳裏に浮かぶのなら、自分の人生は悪くなかったと思えそうな気がする。
泣き上戸のアメリカ人を尻目に、夢のような1日に感謝
片付けをしていると、オーナーさんがやってきたのでお礼を言う。「もしよかったら、ご飯をごちそうになった時にくれたお店のコイン、もう1枚くれないかな?」とお願いするとポケットから出して1枚くれた。いつも持ち歩いているんだね。ありがとう、大事にします(もちろん1枚目も無くさずちゃんと持ってます)。
3時頃に1本目の会場に戻ってsalsaと再合流。この旅4度目のワタバーガーに行き、みんなで食事をしてから家に戻る。今日と明日は日本のバンド2組での共同生活だ。
家に戻るとなぜかコーディネーター2人の友人数名や、2本目のライブ会場のスタッフたちが遊びに来ていた。どうやって入ったんだ?ピアノを弾いたりおしゃべりをしたりラップをしたりと、かなりわちゃわちゃしていた。お酒も入っているんだろう。
テラスではなぜか泣いている男の人もいて、誰かが「お前は大丈夫だ!頑張れよ!」みたいな感じで慰めていた。アメリカにも泣き上戸はいるんだね。
シャワーを浴びて落ち着いたのは朝6時。この頃にやっと友人たちは帰っていった。アメリカ人の体力に驚きつつ横になる。夢のような1日に感謝。
<続く>