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「投資する」ってなんだろう?

投資とうし、と聞いてみなさんはどんなことを想像するでしょう。
株式投資かぶしきとうし不動産投資ふどうさんとうしなど具体的な投資手段しゅだんを想像する人もいれば、お金が増えそう、ちょっと怖い、といった印象を思い浮かべる人もいるかもしれません。

今日は「投資」とは何を指すのかを紐解ひもといてみましょう。

お金の活かし方のひとつ「投資」

あなたは、お金を手に入れたらどうしますか?

・使う
貯金ちょきんする
・投資する
寄付きふする

主なものはこのあたりでしょうか。
投資とは、お金の活かし方のひとつと言えます。

手元のお金を投資などの方法でふやしていくことを「資産運用しさんうんよう」と呼びます。

多くの人がかかわる「年金」も投資の力

お金の活かし方のひとつと言っても、「私は投資してないよ」「投資には縁がない」と考える人もいそうです。しかし、投資は身近な仕組みにも取り入れられています。

自営業などの人が加入する「国民年金こくみんねんきん」や、会社員や公務員の人が加入する年金制度「厚生年金保険こうせいねんきんほけん」は、「年金積立金管理運用独立行政法人ねんきんつみたてかんりうんようどくりつぎょうせいほうじん(GPIF)」という組織などが、加入者の保険料を企業きぎょうなどに投資することで運営されています。(実際には、GPIFから委託された運用機関が投資を行っています)

また、近年導入する企業が増えてきた「確定拠出年金かくていきょしゅつねんきん」は、自分で投資先を選んで運用する仕組みですね。

こう考えると、「投資に全くかかわりがない」という人は、そう多くはなさそうです。

投資って資産運用?

先ほど【手元のお金を投資などの方法でふやしていくことを「資産運用」と呼びます】と書きました。では、投資と資産運用は同じ意味でしょうか。

投資は資産運用のひとつの手段です。
しかし「投資=資産運用」ではありません

投資には「企業を応援する」という側面もあるからです。
企業を応援した結果、自分の資産が増えることはもちろんありますが、この場合の目的はあくまで「企業を応援する」ことであり、「資産を増やすこと」ではないわけです。

投資の2側面

「投資ってギャンブルでしょ」?

「投資」と似た言葉に「投機とうき」という言葉があります。

◆投資・・・「とうじてする」
資するとは「助けになる、役に立つ」こと。
つまり投資は「お金を投じて相手の力になる」ことだと言えます。助けた相手がうまくいけば、相手の力になれる上、お金も自分のところにかえってくるかもしれません。

◆投機・・・「機会きかいとうじる」
投機は「一攫千金の儲けの機会(チャンス)にお金を投じる」こと。
お金を儲けることが目的です。

投資の世界では、しばしばゲーム理論という考え方が用いられます。
これは「ある事柄への参加者全員の利益」を合計した時に、プラスになるか、マイナスになるかを理論的に考えるもの。

たとえば、株式投資は企業への投資です。企業が頑張って企業の価値を上げれば、投資家の利益はプラスになり得ます。なので株式投資は「プラスサム」

一方で、参加者の参加費が「当選金」や「運営資金」になる宝くじは、参加者全員の利益(当選金)を合計しても絶対にプラスにはなりません。よって、宝くじは「マイナスサム」といえます。

このような利益が見込めないマイナスサムゼロサム(両替の仕組みを使ったFX投資など)のものにお金を投じることは「一攫千金を目的とした投機」です。

また、株式投資でも「よくわからないけどなんだか儲かりそう!」とやみくもにお金を投じる場合には、投機であるともいえます。

裏を返せば、業績や取り組みなど様々な角度から分析し、業績が伸びると思われる企業にお金を投じること、もしくは業績を伸ばす応援をしたいと思える企業にお金を投じることこそが株式「投資」です。知識と節度を持って行う投資は投機やギャンブルではないのです。

ゲーム理論

宝くじについては以前の記事でまとめているので、興味がある方はそちらもご覧ください。

内容より儲けを優先した結果/リーマンショック

2008年、「リーマンショック」と呼ばれる世界的な金融危機が発生しました。

この危機の発端は、「サブプライムローン」というアメリカの低所得者向け住宅ローンの存在です。このローンの資金を投資家から調達するため、運用会社はサブプライムローンの証券化を考えます。その時、「より利益が出る」証券に見せるために、運用会社は別のたくさんの債券と細かく混ぜ合わせて証券化しました。

その結果、具体的に何に対してお金を投じているのかわからない(顔が見えない)、利益を出すこと(機会に投じること)だけが目的の証券が誕生。お金儲けが目的の投資家たちは、「利益が出そう」という理由で、中身がよくわからないこの証券にたくさんの資金を投じました。

サブプライムローン

しかしその後、アメリカの住宅価値が下がったことで、多くのサブプライムローンが不良債権になり、この証券を持っていた金融機関や投資家たちは多額の損失を受けました。

これをきっかけに起こった金融危機がリーマンショックです。相手をよく知らないまま、(格付けだけを信じて)お金だけを目的に投機を行った結果です。

まとめ:「投資」ってなんだろう?

投資とは「投じて資する」こと、つまり「お金を投じて相手の力になる」です。助けた相手の取り組みが成功してお金が返ってくることもあれば、投じたお金が返ってこないことも時にはあります。しかし、それはギャンブルではありません。

世の中をよくする取り組みをしている企業は、
世の中に求められ、成長するはず。

その結果出た企業の利益は、投資した自分のところにも返ってきます。

企業をよく知り、「ここなら応援したい」と思える企業に投資することは、自分の資産を守る上でも自然な考え方です。こういった企業を私たちが応援することで、結果、世の中もよくなります。

これは、本来の投資の考え方であると同時に、最近耳にするようになった「ESG」の基礎でもあります。ESGについては、このnoteでも今後紹介していく予定なので少しお待ちくださいね。

この記事は、拙著あたらしいお金の教科書「3-5 投資してもらう(82〜84ページ)」「4-5 投資する(114〜119ページ)」の補足記事として作成しました。もちろん、本を読んでいない方にも役立つよう整理しています。
また、学研『お金と生き方の教室』 「4-13 投資の基本を知っておこう」「4-14 投資するときの注意点」「4-15 投資にはろいろな種類がある」「4-16 投資は長期的な視野で」も併せて読むと、さらに理解が深まるでしょう。


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