起業を考える前に知ってほしい、事業形態の種類と選ぶコツ
「起業したい」と考えたとき、どんな形態を選べばいいのでしょうか。
株式会社、もしくは個人事業主という言葉が頭に浮かぶ人が多いかもしれません。もちろんこの2つも選択肢のひとつ。しかし、起業の方法はこれらに限りません。
自分で事業を行う時には、事業内容や目標に合わせた組織を選ぶことが大切です。この記事では、さまざまな組織・事業のかたちを整理して紹介します。
1 株式会社
株式会社は「営利」、つまり利益(もうけ)を目的とすることが前提です。株主から資金を集め、株主から委任を受けた経営者が事業を行い、利益を株主に配当する、というのが通常の形です。
…とお伝えしておきながら、私が代表を務める株式会社eumoは、2021年より『非営利型株式会社』となりました。数はとても少ないですが、このような形をとる株式会社も存在しています。
ただし弊社は例外的で、株式会社の前提はやはり「営利を目的とする法人」です。上場を含め、広くあまねく、たくさんの人から投資を受けたい場合は、株式会社を検討しましょう。
2 合同会社(LLC)
設立に必要な手続きや税金の違いから、株式会社の半分程度の費用で設立することができます。他にも、経営者は必ず出資者である必要があり、出資者は出資金額にかかわらず対等な議決権を持つことなど、株式会社とは異なった特徴を持ちます。
このような性質から、家族経営のような小さな規模で経営を行う場合は、合同会社を選ぶことが多いです。
費用面についてもっと知りたい場合は、以下のページが参考になります
3 社団法人(一般社団法人/公益社団法人)
ある目的のもとに集まった「人」を中心として成り立った組織が、「法人」として活動したいときに設立するものです。
社団法人は「非営利法人」にあたるため、余剰利益を構成員(職員など)に分配をすることはできません。余剰利益が出た場合は分配せず、翌事業年度に繰り越す、または法人の事業ために使うことになります。
ただし、事業自体は、利益を目的にすることも、目的としないことも可能です。あくまで「分配ができない」ということです。
営利法人は「利益をあげるために活動」し、
非営利法人は「活動をするために利益をあげる」
と考えるとわかりやすいかもしれません。
公益事業をメインに行っている社団法人が、厳しい審査・認定を受けて「公益社団法人」になった場合、税制上の大幅な優遇を受けることができます。
4 財団法人(一般財団法人/公益財団法人)
ある目的のもとに、起業や個人などから集まった「財産」に対して与えられた法人格を、財団法人と呼びます。
たとえば、2021年開催の東京オリンピック・パラリンピックは「公益財団法人東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会」が運営します。この財団法人は、
◆東京オリンピック・パラリンピックの
準備運営に関する事業を行うこと目的として
◆日本オリンピック委員会と東京都が投じた資金(財産)のもとに
設立された法人です。
財団法人も「非営利法人」なので、利益についての考え方は社団法人と同様です。
5 NPO法人(特定非営利活動法人)
NPO法人も非営利法人です。つまり、社団法人や財団法人と同様、
◆利益の分配をしない
◆事業収入を得ることも可能 となります。
名称のイメージから「NPOは利益を得てはいけない」と認識している人が多いかもしれませんが、NPO活動の結果として利益が出ることは問題ありません。
社団法人と同様、ある目的のもとにあつまった「人」を中心として成り立った組織です。一方、設立に費用がかからないこと、法人税が原則非課税であることなどは、社団法人とは異なる特徴です。
また、NPO法人を設立するには「10人以上の社員がいること」「特定非営利活動を目的とする」などの条件があり、認証を受ける必要があります。
「特定非営利活動」には、
・まちづくりの推進を図る活動
・人権の擁護又は平和の推進を図る活動
など、全20分野の活動が指定されています。分野については以下のページを参考にしてください。
6 学校法人
私立学校の設置のために設立される法人です。
私立学校とは、幼稚園から大学院までを含みます。
設立には、設置する学校の種類に応じた所轄庁の認可を受ける必要があります。公益を目的とする法人「公益法人」であり、税制の優遇をうけることができます。
7 社会福祉法人
社会福祉事業を行うことを目的として設立される法人です。
障害者や高齢者などを対象とした各種福祉施設、保育園、病院や診療所などの医療機関の運営主体となります。
設立には、所在地や規模に応じた所轄庁の認可を受ける必要があります。
「公益法人」であり、税制の優遇をうけることができます。
8 組合
相互扶助を目的とする複数の当事者が出資をして設立された団体を組合と呼びます。農業協同組合や生活協同組合、健康保険組合のような法人格をもつものと、法人格を持たないものがあります。
このうち、個人が起業を考える場合には、法人格を持つ「企業組合」が選択肢に入ります。個人事業者や給与を得て働く人などが4人以上が、それぞれの資本や労働力を持ち寄って集まり、1つの企業体のように活動を行うことができます。
企業組合の組合員は、出資額にかかわらず対等な議決権を持つため、フラットな組織運営が可能です。設立には行政庁の認可や登記が必要です。
仲間との起業を考える場合は、企業組合も検討することをおすすめします。
9 有限責任事業組合(LLP)
これも組合の一種ですが、LLPは法人格を持ちません。
法人税がかからない点が企業組合と異なります。
自由度が高い分、対外的な信用を高めにくい点は、デメリットとも言えます。
その他、意思決定をする場合には全員の意見が一致する必要がある、設立時の最低人数は2名など、企業組合と異なる点が多数あります。企業組合を選択肢に入れる場合は、LLPも比較検討することをおすすめします。
10 任意団体
人が集まってつくる団体のうち、法人格がないものを「任意団体」と呼びます。町内会やサークル、PTAなどがこれにあたります。
法律で定められた組織ではないので行政からの許可や登記は不要で、いつでも簡単に設立することができます。ただし、法人ではないため、団体名で契約を結んだり、お金を借りることはできないことに注意が必要です。
団体名義で財産を持つ予定がない場合や、契約をする予定がない場合は、選択肢として検討してもいいかもしれません。
11 個人事業主
会社等の法人を設立せず、個人として事業を営む場合は個人事業主となります。
個人事業主になるには「開業届」を税務署に提出します。開業届を出さなくても個人事業主を名乗ることは可能ですが、青色申告のような税制のメリットを受けるには、開業届が必要です。
法人に比べて開業時の手続きや会計処理が簡単なため、起業の最初の一歩として個人事業主を選ぶ人は多いです。
一定以上の所得があると、個人事業主よりも法人の方が税負担が軽くなるため、そのタイミングで法人化を検討するとよいでしょう。法人化することで、取引先や金融機関からの信用が高くなり、事業に必要なお金を集めやすくなるという利点もあります。
自分にあった事業形態を選んで、お金と信用を守ろう
今回紹介した事業形態は以下の11形態でした。
1 株式会社
2 合同会社(LLC)
3 社団法人
4 財団法人
5 NPO法人
6 学校法人
7 社会福祉法人
8 組合
9 有限責任事業組合(LLP)
10 任意団体
11 個人事業主
事業形態を選ぶ際には、
◆資本金の最低金額
◆発起人の人数
◆事業の中心となるのは人か財産か
◆どのように資金・利益を集めるか
◆どのような信用を得たいか
などの複数の視点から検討する必要があります。
自身の事業や状況に合わせ、適切な事業形態を選択しましょう。
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