三菱UFJ銀行の資産窃取事件と,群馬銀行の刑事事件から,銀行界の闇を指摘する!
三菱UFJ銀行は,行員が貸金庫から顧客の資産を窃取する事件が発覚しました。この三菱UFJ銀行の窃取事件は,貸金庫の安全性を否定する行為であり,しかも顧客の資産を盗んだ点において非常に悪質です。
また,群馬銀行は虚偽有印公文書作成事件で刑事告発された企業であり,民間企業が行政機関(厚生労働省群馬労働局)と結託共謀した点において前代未聞の大事件であるが,群馬銀行はこの刑事事件を公表せず,真相解明にも至っておらず,群馬銀行経営陣による隠蔽する姿勢は看過できません。
この2つの事件から銀行界に潜む闇を指摘します。
その前に,最近起きた金融関係の主な不祥事等は,以下の通りです。
1 群馬銀行行員による巨額着服(深谷支店)。
2 いわき信組迂回融資並びに元職員による巨額着服。
3 中京銀行行員による巨額着服。
4 野村證券相場操縦。
5 野村證券社員による強盗殺人未遂と放火の疑い。
6 金融庁出向中の裁判官によるインサイダー取引。
7 東証職員によるインサイダー取引。
8 三井住友信託銀行社員によるインサイダー取引。
9 損保各社による独禁法違反疑義約600先。
10 損保カルテル大手4社に課徴金20億円。
これら不祥事等は最近発覚した事件だけであり,また,過去に遡れば預金着服などの事件は数多く発生しています。
無論,生保でも不祥事等が起きており,金融関係の不祥事等が止まる気配がありません。コンプライアンス精神を尊重する事が「看板」だけのようになっており,これは悲劇的状況とも言えると思います。
なお,今後はハラスメント対策が強化されるといった報道もあり,公益通報者保護制度では厳罰化が検討されています。これは企業全体の問題であり,特に経営陣の責任がより一層重くなる筈です。経営トップ自らが前向きに行動しなければなりません。
三菱UFJ銀行の上記事件は既に多くのメディアが報じています。
たとえば,以下の通りです。
前代未聞の大事件であることに間違いありません。
なお,一般的な貸金庫では「正鍵」と「副鍵」があり
正鍵=契約者(顧客側)
副鍵=銀行側
副鍵は,専用袋などで保管し,2名の押印などで封印します。
なので,内部監査をしっかりやれば早期に発覚した筈です。
このあたりも大きな疑問として残ります。
三菱UFJ、元行員が貸金庫から顧客の資産を窃取 被害総額は十数億円
「信頼・信用というビジネスの根幹を揺るがす事案」
(ITmedia NEWS)
三菱UFJ銀、貸金庫担当の元行員が十数億円の顧客資産窃取
(ロイター)
貸金庫は,顧客向けの金庫であり,銀行にある金庫と同じ意味です。
ただし,貸金庫に預ける物は『貴金属類や有価証券、契約書類など」であり,現金を主たる目的とした金庫ではありません。
また,セキュリティーが高く,プライバシー保護にもなりますので,有料サービスですが人気があります。
この貸金庫に関連し,三菱UFJ銀行の行員が『顧客の資産を盗んだ』事件であり,従来から起きている『現金を着服する』悪質な事件とは異なりますが,貸金庫の安全性を毀損した点において「信頼・信用というビジネスの根幹を揺るがす事案」である事は間違いありません。
三菱UFJ銀行が,被害にあった顧客の補償を行う旨報じられていますが,資産に対する補償であり,今後大きな問題に発展する可能性もあります。
私個人的に言えば,事件の起きた支店の営業中止,並びにリテール営業に対する抜本的見直しなどが必要であると考えており,更には,事件の真相解明も急務だと思います。
被害総額が少なくとも十数億円程度などと報じられている事から,事件の真相解明をせずに有耶無耶にする事は絶対に出来ません。
また,貸金庫による犯行という新たな手口による大事件であり,類似の事件が起き得る可能性もある事から考えれば,三菱UFJ銀行の経営陣の責任は重大であり,毎年行っている内部監査の実態なども明らかにしなければなりません。
なお,上記報道でも理解できる通り,「元行員」との表現には強い違和感があります。犯行当時は「行員」であり管理職だった訳だから,事件の重大性から考えれば,具体的氏名と役職は公表するべきです。
「元行員」にしたのは三菱UFJ銀行側の勝手な判断であって,私個人的には公表する時点では懲戒解雇などする必要はないと考えています。その上で,銀行側が速やかに公表し,氏名並びに役職名を明らかにする事は,同様の犯行抑止にも繋がるものと考えています。
金融機関による不正や不祥事などが,今後も起き得る可能性がある以上は,同時に再発防止も必要であり,「元行員」では事件の重大性が薄れますので,このあたりは金融庁や全銀協なども検討するべきです。
群馬銀行が刑事告発された企業である事は,ごく一部の関係者しか知らない重要な事実ですが,これは群馬銀行幹部が公表せず,説明責任を果たしていない事に大きな原因があります。
私は,これが隠蔽だと再三指摘していますが,ではどうして群馬銀行は刑事告発された事件を公表しないのでしょうか。ここに大きな疑問や疑惑などがあって,依然として全く不明です。
事件の概要は以下の通りです。
なお,この刑事事件は群馬銀行役職員と厚生労働省群馬労働局職員らが共謀した虚偽有印公文書作成事件であり,前橋地検側の杜撰な捜査によって,今現在でも未解決事件となっています。
1 事件番号:令和2年検第944号~951号(刑事告発=2件)
2 罪名:虚偽有印公文書作成等(内容虚偽の聴取書を作成した)
3 担当:前橋地方検察庁
4 処分:嫌疑不十分による不起訴処分
「内容虚偽の聴取書」を作成した具体的事実は以下の通りです。
1 『指印』のない聴取書であること。
これは聴取書とは言えない公文書です。聴取書には「署名+押印」若し
くは「署名+指印」が絶対に必要であって,これが欠けている聴取書は,
そもそも聴取書ではありません。
この件について,前橋地検が捜査しなかった。捜査しない理由なども全
く分かりません。
2 なりすましの聴取書であること。
つまり,本人に「なりすました」聴取書であり,しかも「指印」が不鮮
明といった杜撰な聴取書であって,指紋さえも確認が出来ません。
この件についても前橋地検が捜査しなかった。よって,なりすまし犯人
は今でも特定できておりません。
3 聴取書の全てのページに『指印』がないこと。
聴取書の全てのページに『指印』する事は,証言した内容を改ざんなど
できなくさせる重要なもので,これがない聴取書は改ざんし放題というこ
とになります。
この件についても,前橋地検は捜査しなかった。
つまり,上記刑事事件は,嫌疑不十分による不起訴処分とはなったものの,「捜査せずに不起訴処分にした」ことと全く同じであって,これは重大な「捜査ミス」であるとして最高検に苦情等を申し入れているところです。
簡単に言えば,欠陥だからけの聴取書(=有印公文書)であっても起訴しなかった検察側の大失態であり,これにより助かった者が被疑者側である群馬銀行関係者並びに群馬労働局関係者などであり,これも見過ごすことが出来ない大事件です。
この虚偽有印公文書作成事件については,以下の記事で証拠に基づき検証しています。
また,この虚偽有印公文書作成事件は,労災請求という国の制度で行った犯行であり,労災請求の制度そのものの信用失墜になる事件です。
銀行は,信用信頼が第一の業界であり,お金を扱う業種である以上は,企業倫理や法令遵守は当たり前のことです。
しかし,三菱UFJ銀行の貸金庫資産窃取事件,並びに群馬銀行の虚偽有印公文書作成事件は,重要な信用信頼を大きく毀損する可能性があり,しかも行員による預金着服事件などは,今までも既に多発しています。
信用信頼を毀損することが,銀行への大きなダメージになる事は,これは誰でも知っている事であって,顧客側が安心できない銀行は業績如何に係わらず大きなマイナスになります。
銀行に潜む「闇」という物体は,表向きと内向きが全く違う実態であり,「犯罪に手を染めることに躊躇いがない」ことだと考えています。
これを防ぐ為には,経営トップ自らが透明性を高め,法令違反行為やハラスメント行為などが起きた場合には適時開示させるなどの厳しい措置が必要です。
つまり,企業の評価が業績だけに過度に拘ることには反対で,コンプライアンス精神も十分に加味する必要があります。
参考までに,消費者庁から,以下のようなガイドラインが発表されています。
公益通報者保護法を踏まえた内部通報制度の整備・運用に関する民間事業者向けガイドライン
(平成28年12月9日 消費者庁)
経営トップの責務(3ページ部分 一部抜粋)
公正で透明性の高い組織文化を育み、組織の自浄作用を健全に発揮させるためには、単に仕組みを整備するだけではなく、経営トップ自らが、経営幹部及び全ての従業員に向け、例えば、以下のような事項について、明確なメッセージを継続的に発信することが必要である。
≫ コンプライアンス経営推進における内部通報制度の意義・重要性
≫ 内部通報制度を活用した適切な通報は、リスクの早期発見や企業価値の
向上に資する正当な職務行為であること
≫ 内部規程や公益通報者保護法の要件を満たす適切な通報を行った者に対
する不利益な取扱いは決して許されないこと
≫ 通報に関する秘密保持を徹底するべきこと
≫ 利益追求と企業倫理が衝突した場合には企業倫理を優先するべきこと
≫ 上記の事項は企業の発展・存亡をも左右し得ること
これは企業トップの責務としての一例ですが,非常に説得力があります。
特に,太字の部分が重要であって,『利益追求と企業倫理が衝突した場合には,企業倫理を優先させる』ことが非常に重要な事項であり,これを怠れば『企業存亡を左右し得る』ことは,企業トップが十分に理解し認識しなければなりません。
つまり,銀行であれば,銀行トップである頭取らの責任が重大であって,頭取自らが率先して行動し,社会的責任を果たす重要な使命があるのです。
たとえ,過ちによって行員が不祥事や不正などを行ったとしても,この全責任が銀行トップにある自覚がなければ,この企業の存亡に関わる事態になり得ます。
こうならない為の努力が必要である事は,これは指摘するまでもありませんが,往々にして行動が伴わないケースもあり,これでは自浄作用も発揮できなくなります。
群馬銀行に関して言えば,今の状況は決して好ましくありません。
刑事告発された事実がある以上は,包み隠さず公表し,真相解明と説明責任が必要です。
以上