医療業界の特殊性

制作会社で働いていた時には、色々な業界のクライアントがいたから、「この業界は特殊だから」とか「うちの会社は他と違うから」とか言うクライアントは多かった。
ただ、話しを聞いてみたらそんなこともなく、他とちょっと違うだけで多くの要素は他の企業や、かつて接してきた業界と類似していることは多かった。
だから、「企業特有の特殊性」というのは、あまり気にしないし、鵜呑みにしない。

ただ、医療の世界については、やっぱり特殊なことが多い。
ちょっとそこらを整理しようと思った。
※医療業界といっても色々な企業もあるが、ここでは医療機関に関する話しとして書く

          ◆

<医療の特殊性>
1. 免許制(医師免許をはじめ取得難易度が高い)
2. 公共性が高く、社会インフラである
3. 収益は税金である(←これ重要)
 ↓以下は制度的にというより、マインドとして
4. 奉仕の精神で成り立っている(全部が全部ではないが)
5. 儲けるのは悪という価値観


さて、これらの詳細を以下に。
1. 免許制
医療従事者は、免許がないとできない職種が大半。
免許がないとできない仕事は世の中にはたくさんあるが、これほど有資格者で構成されている業界は稀なのではないか。
それ故に、他業種からの医療業界に来る人は少ないだろうし、逆もまた少ないだろう。
※以前にも免許についてはnoteに書いたので以下も参照
https://note.mu/kazuhi56/n/n1ace9866f40d

2. 公共性
医療は、趣味・趣向のサービス(飲食、アパレスなど)というわけではないし、特定の誰か・分野に方のみのものではなく、「健康」という全国民が関わることを扱う。
ガスや電気がないと生きられないように、医療機関がなければ、病気・けが・出産などの時に何をすれば良いかもわからず、まともに生きていくことはできない。もはやインフラの一つと言える。

3. 収益の多くは税金である
保険診療の患者負担分以外は税金であり、ここが他の業界との大きな違いの一つ。
患者が増えて収益増になっても、それは医療費がかさむことにつながる。
普通の商売では、一般的には「収益が増える=良いこと」だろうが、そうとは言いにくい構造にもなっている。
正直よくはわからないが、国全体のこと・日本の将来を考えるような使命感・正義感が強い医療従事者は、そう感じるのかもしれない。
(医療従事者は総じてみた場合、使命感・正義感が強い人が多いと感じている)

4. 奉仕の精神
医療従事者は多忙だ。そういった多忙な状況であっても、真剣に業務・患者と向き合えるのは、奉仕の精神で成り立っている側面が強いからだろう。単純に「世にある多くの職業の中の一つ」としてではなく、医療に携わるということは、「生き方」そのものなのだろう。
単純に一個人としてその奉仕の精神には心底尊敬するが、個人や組織の善良な価値観に支えられている状況は、組織としては少々軟弱な気がするし、システマティックな組織ではないだろう。

5. 儲けるのは悪 という価値観
公共性・奉仕とも関わるが、医療は儲けるというより「医は仁なり」のように患者を救うことに、フォーカスされている。もちろんそれは素晴らしいことだ。だが、あえてビジネス的なかおりを阻害しているとも感じる。

               ◆

まとめ
上記の中でも、「3.収益は税金、5.儲けるのは悪」が主な要因として、医療従事者のビジネスマインドは非常に低い、と感じている。
患者を救う話しを現場ですることは当然あっても、「いかに収益を上げられるか」という会話は、医療の現場においては少ないのではないだろうか。

医療は社会インフラではあるが、日本の病院全体として見た場合、赤字の病院が多い。
「儲けなければ、その市場は活性化しない。儲かる市場であれば新規参入、新しいサービスも登場し、市場が淘汰される。加えて、企業が継続するためには儲け続けなくてはいけない。」のが、市場経済の前提であろう。

医療は単純にそこに当てはめることはできないが、自力で稼ぐことができないと、新しい投資も積極的にできないし、魅力的な労働環境にもなりにくく、質の向上は難しいのではないか。

               ◆

今回のnoteで医療の特殊性を整理した。
その上で、メディカルITディレクターとして、「どのような軸で医療業界のIT活用を進められるか」「大きなインパクトを与えるためには、医師・医療従事者の既存意識のどこを転換させれば良いか」などなど、具体的な話しを今後考えていきたいと思う。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?