AIとは(文系新入社員向けIT用語説明)
前置き
私の説明は、文系新入社員向けに、漏れなくダブりなく説明することでは”ありません”。7割の精度で素早く用語を理解することを目指しています。
そのため、敢えて間違った説明をしていきます。理由は単純。IT独自の用語が多すぎるし、時代とともに意味が変わるし、どんどん増えていくため、専門家を目指すのでなければ、ざっとした本質的な理解で十分です。特に新入社員は。
3秒理解:AIを一言で言えば
知ったかぶりする占い師になります。
占い師はコードリーディングという統計テクニックを用いて、服装・歩き方・人相・表情・質問に対する回答などの情報から、訪れた方がまだ話していない悩みや問題を高い精度で予測(予言)しているように、
AIも基本は「統計的に言えばこれが正解に”一番近い”という回答を出す」ことをしています。ただし人間のようにゼロからイチを生み出す事は出来ません。ゼロイチの研究は数十年前から進化していないそうです。
それでも現代のAIは以前のインチキ占い師レベルから、新宿の当たるで有名な占い師レベルに格上げはされました。まずは現在のAIについてざっくりとした理解を進めましょう。
基本: 機械学習とディープラーニング
世界に比べて、日本人の職人技はよく賞賛されることがあります。それは長年に渡り、培った”経験”と”カン”によって質が向上し、場合よっては機械では到底真似できないような緻密さや精度をもたらします。
例えば、古来から農家の方々は数時間後の天気をかなり正確に予測することができました。彼らは長年、時期、気温、湿度、雲の形、風の強さなど複数の要素を肌で感じ過去の経験から、規則性を見出し、言語化や論理的説明ができなくても、確実性をもって未来を予測する時、農家の方々や我々は”長年のカン”と称してきました。
実はAIと呼ばれる技術も根本は同じで、”長年の経験(時期、気温、湿度、雲の形、背の強さ)”を蓄積する言葉としてbigdataという言葉を使っています。
そして長年の経験(bigdata)を元に統計的手法を用いて”カン”を作り出します。
では古来から農家の皆さんは、長年の経験から独自に天候を予測する能力を身につけたかと言えばそうではありません。
親や近所・親戚から、言語されたパターンを教えてもらい、そこから自分なりの考えを足して精度を上げていったように、bigdataと統計学を組み合わせただけではそこまで精度は出ません。農家の方々と同じように”先代の知恵”(教師)をお借りして予測を補正することで精度を高めていきます。
この長年の経験(bigdata)に統計学による”カン”と先代の知恵で補正するやり方を教師つき学習と言います。
逆に先代の知恵を使わず、情報の関連性を見出していくやり方を教師なし学習と言います。
上記の通りベースは長年の経験(bigdata)が必要なため十分な情報がないとカンが働きません。これは機械学習でもディープラーニングでも変わりません。
上記の農家さんの例は機械学習と呼ばれるAIの一つの手法でした。
ではよく聞くディープラーニングとは何か?どんな違いがあるのを次に説明します。
農家さんでなくても我々も雲の厚さ(厚い、薄い)、湿度(ある、ない)などの比較的少ない情報から、「雨が降りそう」などとカンを働かせています。
農家さんはそこから、雲の形、季節、風量・風速から「嵐になりそう」とカンを働かせる時、我々とは違うロジックで考え予測しています。少し言語化すると、雲の形と湿度の関係、風量・風速と温度の関係、そして季節から考慮して「嵐になりそう」と予測しています。
この特定の要素毎に統計手法を入れ替え、結果から次の統計手法でさらに解析していく様を深く検討している様を深層学習(ディープラーニング)と言っています。そして雨が降るか降らないかは、風量・風速よりも湿度・温度が相関性が高い時場合は、その要素を重視することを”重みをつける”とディープラーニングの世界では言います。ディープラーニングではこの重みを調整することで予測の精度を向上させていきます。
進化:本当の意味での人工知能に近づくコグニティブAI
では人間の閃きや正解がわからない時の決断はAIには無理なのか?
については、当初ゼロからイチを生み出すアルゴリズムを作ろうと研究されていたようですが、そのアプローチよりも、現在は別な手法が用いられています。それは人間が様々な経験から学び学習してゼロ・イチを生み出したり決断出来るようになるのだから、AIも同じように経験の延長線上に、ゼロイチの閃きと決断が出来るようになるのではないか?という発想から、我々人間が暗黙的に取得している情報や、覚えきれないbigdataを分類し学習させることで擬似的に作り出そうという試みがされています。その一つの成果がここ最近有名になったchatGPTです。
chatGPTは人間と同じような思考と少ない情報のなかでも学習を行い適切な対処ができるように自然言語の処理と機械学習を組み合わせて、あたかも人間が回答しているような認知能力が備わったAI=コグニティブAIがここ数年のトレンドとして、どんどん研修が加速しています。
今後: AIが進んだ先にある人間の役割
ではこのAIが進んだ未来において人間の役割、特に仕事において人間の役割は何が残るのでしょうか。
一つには未来を描く能力です。もう少し説明すると自分達が理想とする手に入れたい未来をイメージしてそれを目標とすることは、AIには不得意な分野の一つです。つまり業務にコンサルティングの要素を取り入れられる仕事はこれからも活躍出来ると考えられます。
では無くなると言われている職業には未来がないのかと言いますと逆です。
AIの回答が正しいかは人間が確認する必要があります。AIの根本は統計であるため絶対ではないのです。必ず人の目が必要です。
またどんな情報を取得しAIに与えるべきかは、人間が判断したり試してAIを調整していく必要あります。そのためには其々の職業において人間の専門家が必須になります。
工業製品においても職人さんが培った長年の経験とカンは、機械では実現が難しいナノレベルの真球を作り出すなど神業レベルまでに到達している方もいるように、まだまだ人間の感覚というのはAIでは実現がかなり難しい分野です。
つまりこれから社会人になる皆さんは、AIにとって奪われるような仕事の仕方ではなく、AIというサポート役を最大限に活用し短時間で、今までの社会人の数倍・数十倍の生産性で成果を出せるような働き方を目指してほしいと考えています。
そのためにはまずは基本を理解し、新しい技術や用語が出てきても類推出来る基礎力をぜひ向上させていってください。