粛裁(しゅくさい)の鐘よ鳴り響け。我が命を以て
『心せよ、リヨン。汝に赦されたのは"5発"。6発目は過たず汝を撃ち抜く』
鈍く照り返すステンレスのリボルバーを手にしたとき、《死天使》からの宣託がわたしの頭に残響した。
スポットライトのような灯りに照らされる円卓。並ぶのは6丁のリボルバー。四方の闇からはコッキング音が響く。眼前にはウエスト・イングランドの闇商売を司る長老たち。わたしは1人に、5人はわたしに銃口を向ける。
その一人、サー・フレデリコが写真を投げてよこす。瞳孔が開き、胸に解剖痕を刻んだ痩せぎすの老人。つまり、わたしだ。
「きみは死んだ筈だ、兄弟」
わたしは片手で、黒ずんで乾いた血がこびりつく写真を寄越す。微笑む息子夫婦に孫の写真。
「死んださ。そして君達も死ぬのだ、兄弟たちよ」
閃光、銃声、硝煙。
サー・フレデリコを庇うヴィットー。弾ける肉。毛と肉がこびりついた骨片と血液が舞い散る。残り4発。わたしは後ろに倒れつつ円卓を蹴り上げる。堕天使の翼のように広がるジュネーヴ・ガウン。四方からアサルトライフルの銃撃が飛んでくる。鼻先を掠める軌跡。暗い部屋に光が瞬いては消える。命のように。
転びつつ後ろのチンピラを拘束し、彼を盾に。暴れもがく若者はアサルトライフルの弾丸を周囲にばら撒く。跳弾。悲鳴。血しぶき。背後の壁に突き刺さる幾重もの弾丸。肉盾に何度も衝撃が走る。顔に生暖かく滴るぬるりとした何か。力を喪う肉盾を放り投げる。
同時にリボルバーを構える。狙うはフレデリコ。古老や若者が遮ろうとする。それより早く放たれる銃弾。空気を裂いて飛ぶ5.56ミリの殺意。
一際眩い閃光。
弾丸は、横から飛来した弾丸によって弾かれた。若い頃、わたしが得意としてみせた手法。失ったはずの心臓が驚愕に脈打つのを感じる。
闇から青年が現れた。鈍く照り返すリボルバーを手に。
「―エゼル」
乾いた喉から、孫の名がまろびでた。
【続く】
アナタのサポート行為により、和刃は健全な生活を送れます。