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ブレイブ・ニューワールド・オーダー
フレデリック・バーンズは悩んでいた。今日は『男』にするべきか『女』にするべきか。
悩んだ末に、いつもどおり『男』を選択した。『男』ならば、パーツはいつものものを選択する。
ロマンスグレーの髪を後ろに撫で付け、角張った輪郭に高い鼻、青い瞳。アングロ・サクソンの典型的な『男』のアバターを作り上げる。
性別も年齢も、自在に選べるような時代にあっても、フレデリック・バーンズはこのスタイルを貫いている。スタイルは永遠につづくのだ。
それに、それを咎めるものもいない。性差や年齢による差別は、最早過去のものだ。
両親から受け継いだペントハウスは、やや古ぼけているが、風化した漆喰の壁はむしろ高貴に思える。青を貴重とした食器に、オークから削り出された調度品も、両親から受け継いだ。貴族的な世襲こそ、WASPである自分にふさわしい。
下院議員という高い地位、あらゆる性別と年齢に分け隔てない姿勢、家柄に住居──フレデリック・バーンズは若くして──もっとも、この時勢においては若さなど無意味だが──は、全てを手にいれたのだ。
すばらしき新世界の中で。
【続く】
#小説 #逆噴射プラクティス
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