【ツイート転載】若者論とは40~50代に対するマーケティングである/伊藤昌亮「「オールドなもの」への敵意」(『世界』2025年2月号)が酷すぎた件(2025.02.03)

若者論とは40~50代に対するマーケティングである

何度も言うが、この手の調査は調査対象と調査主体をまず読むこと。ちなみに対象は20・30代だけ、調査者は恐らく著者(マーケッター)。少なくとも上の世代との比較がない限りこの手の調査から「若者特有の傾向」みたいなものを見出すのは不可能だ。そもそも上の世代は調査されていないのだから。この手の若者論は、読み手である主として40~50代くらいの層の価値観を絶対化した上で行われる。要は若者論とは40~50代に対するマーケティングなのだ。

そのマーケティングに見事に引っかかった反応が例えばこちら。

少なくともいまの若い世代を語るのにいまの若い世代だけを調査しているのではお話になりません。マーケッターが現代の価値観をよく知っている論客として持ち上げられている現状はおかしいと思います。

マーケッターは「お金のため」に若者論を振りまいています。20年前(!)に『下流社会』がベストセラーになってから、「若者論は儲かる」と考えるようになったマーケッター(とそれらと結託する社会学者)が次々と若者論に参入していますが、それは若者論を通じていまの中高年層に「非-若者」というアイデンティティを売っているからです。「未来予測」と言えばいくらでも無責任になれることを彼らは学んでいます。そういう人間によって流される若者論を受け入れないことこそ重要なのです。

伊藤昌亮「「オールドなもの」への敵意」(『世界』2025年2月号)が酷すぎた件

いやあ、『世界』編集部ってこんな低レベルな文章にお金を出すんですね。そもそも伊藤氏は「オールド連合」対「ヤング/ニュー党」みたいな対立軸を最近現れたものと見ているけどこういった対立軸は少なくともいま若者怖い怖いをしている層が15年くらい前に煽っていたものなんですよね、自分たちが「若者」として。伊藤氏はツイッター分析の中で「シルバー民主主義」を一般的な用語ではないとして切り捨てているけどだったらなんで調査したんだよという話だしその言葉の歴史くらい調べろや。

伊藤氏の分析の枠組みは15年前のロスジェネ論の枠組みそのままで、それをいまの40~50代がかつて「若者」(ある意味で加害者側)として使っていたのを忘却して「中高年」(ある意味で被害者側)の立場から採用しているという、とても欺瞞的なもの。これは「『世界』×伊藤昌亮」の文章全般に言えることなんだけど、伊藤氏の文章にはつい10~20年くらい前の言論の歴史と、世代間対立扇動を「仕掛ける側」(これは石丸伸二や西村博之だけでなく、出版メディアなど)に対する批判的視座が全くないんですよね。むしろそれらを所与のものとした上でいかに若い世代を怖がるか、というものになっている。これを世代間対立の扇動だと思わないのが我が国の「言論」の現状だと思います。伊藤氏もこれからこの路線でやっていくのでしょうが、とても心配です。

というわけで『世界』編集部の方は16日に東京ビッグサイトで開催される「コミティア151」の弊サークルのスペース(東1ホールO04b)に来てください。『若者が怖いですか』とSNS叢書5冊、2800円のところ2000円でお譲りします。本当です。少しは若者論の歴史を勉強してください。


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