行き先の数だけ失敗がある

プロ野球において引退した名ピッチャーのほとんどは「見事にバッターを抑えた場面よりも打たれた場面のほうをよく憶えている」と言う。

旅も同じで上手く行った場面よりも失敗した経験というのはよく憶えていてしかも後々数年、呑みの席上での話題に彩りを添えることになるのだ。

店長と俺が年に1回の大阪旅行を楽しんでいた二年前、ある大阪での事例だ。

梅田に行くと串かつのヨネヤというテーブル席+立ち飲みの店がある。ここの純ハイはタカラのチューハイレモンの原型でスッキリした味わいが実に串かつに合うのだ。

店長と俺は立ち飲みカウンターで手短に呑んでいくのがお気に入りで、この日も純ハイに豚やら牛やらの串で軽く呑み始めた。ところが2杯めあたりで店長の手が当たったのか、楊枝入れをぶちまけてしまい店に平謝り。

あとから考えるとあれはほんの予兆だったのかもしれない。

さて箕面でビール祭に参加して数時間地ビールを堪能した後、夜の大阪の町に繰り出した。向こうの友人の案内でいい立ち飲み屋てひっかけ天満のほうに移動した時にはそりゃあ完全に出来上がっていたわけで。

これも別に幻想的な写真を撮ろうとしたわけではなく素で完全に酔って手ブレしているのだ。

ここから先は記憶が曖昧なのだが何やら鶏のせせりやら半身焼きが美味いドラム缶がテーブルの渋い飲み屋で呑んでいた気がする。

おまけにどうやって宿泊先まで帰ったのか俺は全く憶えていなかったが、ちゃんとベッドで寝てはいた模様。

はて、と目覚めた時に目覚まし代わりの携帯電話が無い…携帯電話や財布などは小さなカバンに入れて持ち歩いていたのだが、それが見当たらない…ああいう時って一瞬で覚醒するのなw

まさか昨日の飲み屋、あのドラム缶の所に忘れて来たのか!?

浴衣がはだけてほぼパンツ一丁になったオレはホテルの部屋を這い回るようにしてそのカバンを探し始め、ちょうど目覚めた店長にその姿を見られてしまった。

それはあたかも「エヴァンゲリオンの初号機が覚醒して四つん這いになっているようだった」とのこと。

店長に携帯電話で呼び出してもらったところ、旅行かばんから呼び出し音が鳴った。俺はちゃんと持って帰ってきて荷物を突っ込んで寝たようだ。

携帯電話に現金、クレジットカードや免許証、帰りの切符まで入っていたので紛失していたらいたらどうなっていたやら。血の気が引くとはまさにあのこと。実際に顔色は真っ白だったらしいw

深酒には気をつけよう、と散々言いつつこの手の失敗は続き、未だに呑みの席上で笑いのネタを提供しているのだった。

ヨネヤ