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心房細動の治療/カテーテル治療について
前々回の記事で心房細動という病気の基本的な症状や危険性について簡単に説明させていただきました。
今回はその治療について、主にカテーテル治療について最新の情報も含めてなるべく分かりやすく説明させていただきたいと思います。
最後まで読んでいただけると幸いです!
はじめに
現在、心房細動の治療としてカテーテルアブレーションが広く行われています。外科的治療と違い、基本的には全身麻酔を必要とせず局所麻酔・静脈麻酔のみで行われます。さらに、心臓を大きく切開する必要はなく、多くは首と足の付け根にある血管に管を挿入して行われます。
この治療は心臓内の心房細動のもとになっている悪い部分を様々な方法で機能しなくしていくものです。様々な方法という部分ですが、現在5種類もの治療方法があります。それぞれをご説明していきます。
高周波焼灼術
カテーテルの先端を1点ずつ心臓の筋肉(心筋)に押しつけ、異常な部分を焼灼していく方法です。手術時間は大体2-3時間ですが、難渋すると3-4時間かさらに時間を要します。
直径2mmほどしかないカテーテルを心臓の中で操作する必要があるため技術的な差が出る治療です。その反面、汎用性が高いため心臓の中に異常な部分が多数存在する可能性がある場合は有用な方法です。
バルーンアブレーション
心房細動の多くは肺静脈が原因とされています。この静脈を隔離するのですが、近年多くの病院でこのバルーンアブレーションが行われています。
カテーテルに風船がついており、静脈の入口で膨らませ先端を凍らせることによって異常な部分を無くします。
凍らせるバルーンはクライオと呼ばれています。技術的な差はあまりないとされている治療方法で治療成績も良いとされています。一方で肺静脈の隔離のみに使用できるものでありそれ以外の部位が異常な場合、 追加で高周波カテーテルアブレーションが必要になります。
凍らせるバルーンだけでなく温めて熱により異常部位をなくすものもあります。あまり多くの病院で行われているわけではありませんが、これをホットバルーンといいます。
さらに、バルーン先端に内視鏡が付いておりレーザーを使用して異常な部位を無くしていくレーザーバルーンもあります。こちらもあまり多くの病院で行われているわけではありません。
バルーンアブレーション全体に総じて言えることは、肺静脈の隔離のみに特化しているということです。手術時間は高周波アブレーションよりも短く、1-2時間で終了することが多いです。しかし、何度も述べているように肺静脈以外が異常な場合、さらに時間を要することとなります。
パルスフィールドアブレーション
今年から全国の多くの病院で使用できるようになっている治療です。2023年12月に薬事承認が降り、今年の7月に最初の症例が行われました。
従来、高周波アブレーション焼灼や冷凍など熱によって心臓内の異常な部位を無くしていました。熱を使用するので熱の深達度をうまくコントロールできないことによる他臓器への影響も少なからずありました。
パルスフィールドアブレーションは熱に依存せず、電気パルスを用いた最新の治療方法です。電気パルスを用いることにより、心筋のみにターゲットを絞って治療が行える、つまり1番のメリットとして他の治療方法と比較して他の臓器への影響が少ないという点です。
欧米やヨーロッパではすでに導入されており、治療成績は他の治療方法と謙遜ないとされています。
新しい治療なので、全ての病院で行えるわけではありませんが多くの病院で導入が進んでいます。
最後に
心房細動は以前説明したように放っておくととても危険な病気だと思っていただきたいです。しかし、早期治療を行うことで根治も可能とされています。また治療方法も多岐にわたり、それぞれメリット・デメリットありますが選択肢は多いと思います。
今回カテーテルアブレーション治療についてそれぞれ説明させていただきました。治療方法に悩んでいる方がいたら、ぜひ主治医の先生と相談してみてください。より良い治療方法を提案してくれるかもしれません。