秋の霧
祖父母は兼業農家で、退職後は農家をしていた。
私の幼少期にはすでに農家だった記憶しかないが、米や野菜や果物を売ることはなく、家族や親戚で食べていた。
働く父や母の代わりに祖父母と一緒に畑に行き、ただただ広がる畑の中で過ごした時間は、いつしか頭の中に霧がかかったような記憶になった。
2人とも、本当によく働く人だった事を思い出すと自分ももっと働いて良いのだなと、何だか少し安心する。
10月に祖父母と父母も僕も総出で稲刈りをする、父が稲ぐいを立ててしばらくの間天日干しにする。
山々に囲まれた盆地のこの地域の秋は、晴れない、そして、霧が深い。
霧は朝露となり刈りとった稲を濡らす。
いつまでも稲が乾かないと、よく言っていたのを覚えている。
霧のある光景、湿度ある光景はとても懐かしい。
そして、山あいの盆地らしいこの地域の個性なのだと思いながらシャッターを今も押している。