写真展と壁
先日、「壁」をテーマにした写真展に参加させていただいた。
私自身は、「樹木の壁」という解釈で展示をさせていただいたのだけれど、参加者の多くの方がこの展示に参加する事を壁と捉えられていて、ふと一年前に六本木の富士フイルムフォトサロンで開催する事が出来た個展の事を思い出した。
その時の写真展を終え、率直な感想はと言えば充実感に包まれとても楽しい経験をする事ができた。そして、これからも継続的に行なっていこうと改めて心に決めたのだった。
そもそも、コネもツテも使わず自分の作品の出来だけで展示まで行なっていこうと、自分が望んだ場所での展示が決まり1年間という猶予の中準備が始まっていった。
その後すぐに写真展と同時に写真集を刊行しようと動き出したのだが、コネもツテもなく同種の友人もなく、まだ何者でもない世間知らずの自分にとっては、これが中々大変だった。最終的には「お金」という大きな壁も立ちはだかったが、多くの方が手を差し伸べてくださった事もあり、写真展と同時に写真集も出版する事ができたのは幸運に恵まれたのだろう。
金銭的な面で手を差し伸べてくれた方だけでなく、出版の前に出版出来るようにと手を差し伸べてくださった方、編集から製本、流通まで写真集制作を出版社、編集、デザイナー、版型から印刷まで、本づくりをする事自体。
そして、写真展のレイアウトから配置、プリント、額装、様々な準備の中で多くのプロフェッショナルの方々とのやりとり、作業、全てが「壁」でもあり「学び」でもあり、自分の中の譲れない部分も上手くまとめ上げる事で開催までこぎつける事が出来た。
写真展がはじまり・・・・
ここから予想をしていないとても大変な数日が始まった。
六本木の富士フイルムフォトサロンは3会場あって、写真展を開催したのはスペース2なのだがお隣のスペース1の方は風景写真家の熟練の方で、その展示に風景写真家の方々がどっと来場し、そのついでと言ってはあれだけれど、私の展示を見ていくのだ。。。。
実は私・・・・・
風景写真家さんや自然写真家の方って、お名前とか顔とかほぼ全く知らなかったんです。。。
というのも、本業の写真館、ポートレートなど勉強はしてきて写真集も見てきたけれど、アンセルアダムスは自分の原点なので別として、自然や風景写真に関してはずいぶん昔に雑誌を数冊パラっと見たくらいで、写真集も雑誌も見ずにやってきたのですよね。
理由は人の真似をしたくなかったからというのが大きく、人真似の写真を出したとしても、それは既にあるものとして、自分のあるべき一部の世界には決して認められないことだけは分かっていたからかも知れません。
もちろん、ナショジオや審査制サイト、コンペなどを通して海外の写真は随分見てきてはいたのですが、大事なことは、自然を歩き、自然が教えてくれたのでそれで十分で、それが真理だとも思ったりするのです。
写真展に関わってくださった熟練の方が、小関さんの写真は新しいと言ってくれた事は、あまり大きく影響を受けず制作を続けてこれたからなのかと随分と救われた気がします。
そんなこんなで、全く気の抜けない日々の中、
自分が載っている雑誌や掲載物を見せてくれたりしながら話かけてくれたお陰で、スムーズにお話させていただく事が多少はできはしたのですが、
ある日、スーツを着た小柄な私より一回り程度年上の方が話しかけて下さって随分長く話しながら一緒に作品を見て回りました。
「写真で食えてます?」などと話されたり、もちろん「普段は写真館やってます!(笑)」と胸を張って答えましたが、
まあ、不思議な方だと思いながら普段は口数控えめな自分も、なぜか話しやすい人柄に悠長に話せていたのを少し覚えています。
帰りがけに、名刺を渡して下さって汗が吹き出そうになりましたが、
自分がこの場所にいる事が認められた気がして、これまでやってきた事が無駄ではなかったのだと言われた気がして、嬉しかったのを強く覚えている。
その後も、様々な事でお世話になったり、大阪まで見に来て下さったりと。
いつか、一緒に何か出来たら素敵だなと思うし、その方となら一緒に何かやってみたいと思ったりするのですよね。
日本では展示未発表だったシリーズの発表をしばらく考えていて、ある公募に出そうかと思ったりしているのは、グランプリの特典の個展開催まで辿り着けば、その方へ少し恩返しができる気がして、そして一緒に創る事が出来るんじゃないかと思うのです。
先日、グループ展を主催して下さった方が、
自分が何者でもない頃に出会った方の事を話されていて、とても素敵な話に親近感を覚え、ふと書いてみたのでした。
写真展は写真を飾るだけで出来ちゃいます。
でもね、グループ展、そして個展はさらに自分がした事、してきたことの結果が出るのかも知れません。そして、同時に作品と自分自身も厳しい目にさらされ。いつも試されている。
でもね、やればきっと楽しいですよ。
自分も個展をやろう!!なんて方が増えて楽しくなれば素敵だなと思います。