カッコいい辞典「ら」

「ラリー」である。

いやしかし、もう少し詳細をばとのお声が耳元で聞こえてきてもおかしくはない

いわんや、会話の「ラリー」なり。

会話におけるラリーについて、カッコよさを求めるならば

当然、短くスマートにかつウィットにとんだ。であろう

良しそうだとして、むつかしきことこの上ないのではとの罵声に近き言霊を浴びる僕は甚だ気分がよくはない。

然るに端的に進言しよう。

漫才がそうではないかと。

面白い会話のラリーを短い間に巻き起こすことこそ、カッコいいしかないのである。

さて、そんな短尺こそ正義の会話のラリーを心掛ける僕であるが

以前非常に狼狽したことがある。

今本屋さんで働いているのだが、上司のうちの一人と休憩が被り二人っきりでしゃべる場が設けられることとなった。

その時の話である。

まず前提として、その上司は独り言が多い。

否、独り言がでかい。でかくて多い。

然るに甚だ迷惑な御仁なのだ。

だがその御仁の名誉の為に一言添えるならば、

悪人ではない。

良しそうだとして、その方との二人きりの会話。蜜月を共にしたわけだが

まず僕が休憩所に入った時にはもう御仁の独り言は始まっていた。

しかもかなり盛り上がっていた。

不思議に思う方もおられるだろうが、一人で喋り、一人で笑い、一人で気が済んでいる御仁なのだ。

そういう方なのだ。

話を戻そう。

休憩所に入った僕はその独り言に聞き入りながら昼飯を貪った。

真後ろに御仁がいるのにもかかわらずその独り言の意味が全く分からなかったのだが、

もしかしたらこの御仁、寂しいのではなかろうか。

ふと湧いた心に魔が差し、気づけば御仁に話しかけていた。

内容は割愛しよう。

仕事における質問だからだ。

話はここからなのだが、僕は御仁と会話のラリーを重ねていた。

ここでは短くいきたかったが、御仁の会話の文字数が多きことこの上なく

僕は聞き手に回っていた。

因みに聞き手と言うのもかっこいい役回りである。

でだ、

確かに御仁と二人で会話をしていたのだが、御仁があろうことか僕との会話の間に独り言を挟んできたのだ!

こうなってはもう一人必要になってくること必至。

徐々に独り言の量が二人の会話の量を上回ることとなり、

恋愛以外で使うのは初めてなのだが

御仁との会話が自然消滅した。

僕の過ちは一つ。

御仁はさみしくて独り言を言っていたのではないのだ。

これは身についた習慣。癖。多分違うとは思うが呪いか何かなのだろう。

以前カッコいいことの一つに考えることと記したと思う。

考えている時はもちろん無言をお勧めする。



ここまで読んで頂きありがとうございました。
また逢う日まで。

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