カッコいい辞典「つ」
「角」である。
敬愛する先輩であり、相方の石田さんがお勧めしていた読み物がある。
「ルリドラゴン」なる漫画である。
未だ一巻しか輩出していないにも拘らず、読後感の満足度たるや何たるものか。
久しく出会った良き漫画である。
ネタバレせずにあらましを言うと、
主人公の女子高生がある日自身の頭から角が生えており、自分がドラゴンの娘であることがわかる。
と言うところから始まる物語である。
ドラゴンの角を所有せし者なぞ、カッコいいの極みであろう。
角が生えているだけでカッコいいのにも関わらずである。
ルリドラゴンを読んだ僕は、さっそくその世界観にお邪魔して自身の妄想と融合したストーリーを頭の中で構築して遊んだ。
これは僕の昔からの趣味である。
まず僕が取り掛かったのは、ルリドラゴンの主人公るりちゃんとは別の角を自分に生やし、るりちゃんのクラスに転校することであった。
なるほど別の角といえども、個性あふれる角出なければならぬが、突拍子もないものであると心から楽しめなくなる。
これは僕が長年続けて得た教訓である。
結句、考えが枯渇し思いつかなくなり頭の中でストーリーが進まなくなるのである。
そうなってはいかん。
僕はベタと伸びしろを意識して、鬼の角と言う設定に決めた。
ルリドラゴンのるりちゃんはコミュニケーションが苦手だが、ドラゴンの角のおかげでクラスのみんなと打ち解けていくという流れになっていくのだが、
転校してきた鬼の子僕は、クラスメイトから恐れられ距離を置かれた存在として初期設定を完了した。
さあそこから僕は、今芸人であるアドバンテージをいかんなく発揮せんと思い、
クラスで一人孤独に面白いことをノートに書き連ねる少年を頭に描いた。
そしてるりちゃんだけは僕に話しかけてくれる、いわばヒロインの大役をあてがった。
今一度いうが、これは僕の考えた僕の頭の中でのストーリーだ。
僕は鬼の角が暴走してクラスメイトに迷惑をかけ、ますます孤立する。
皆の感情としては嫌悪よりも恐れを抱いている。
怖がられていると自覚している僕は、一人黙々とノートに面白いことを書き溜めるが、
ある日、ノートを落としてしまう。
最悪なことにクラスメイトに拾われ、中を見られてしまう。
しかし中身が面白くて、クラスメイトはそのノートに夢中になりクラス中がそのノートの話題で持ちきりになる。
そこで出てくるのが、だれが書いたのか。
勿論僕が書いたなどとは毛頭思わない彼らは、次第にクラスの陽キャのリーダが書いたのではと推測する。
そしてそのリーダーも自分が書いたと嘘をつく。
それをクラスの端っこで忌々しそうに見つめる僕。
そこにるりちゃんがさっそうと登場して、そのノートは僕のであることと、いつもひたむきに笑いに取り組んでいる様子を見ていたことをクラス中にとどろかせる。
そこでクラスメイトみんなが、カスガ面白いじゃん、カスガすごいじゃんとなり、
みんなの仲間に入れてもらえる。
このストーリーを頭の中で展開したところ、自然と涙が頬を伝った。
自分の妄想で感動して泣いてしまったのだ。
今一度いう。
これは僕の妄想である。
妄想で泣ける。
これがカッコよくなければ何がカッコいいというのだ。
改めて自分の妄想力、感情移入などの繊細な心の機微にうっとりした日であった。
皆さんにもぜひ妄想をお勧めする。
泣けたらストレスも発散されるしとてもいいと思う。
今日はここまでにするが、
僕のかっこいいの探求は止まらない。
ここまで読んで頂きありがとうございました。
また逢う日まで。
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