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脱炭素ライフスタイルチャレンジの回収-かながわ気候市民会議in逗子・葉山-
かながわ気候市民会議in逗子・葉山
第3回 令和5年(2023年9月23日(土))
週の前半まで昼間の気温が30度を超えていたのが、金曜、土曜と30度を下回り、急に涼しくなった感がある中、第3回は逗子市役所で開催されました。
主催者の話ではグループファシリテーターが3人、急な体調不良で欠席。参加者も体調悪くなって欠席の人もいるとのこと。新型コロナやインフルエンザ、プール熱等が流行しているとの報道がある中で、気温の変化によるダメージも重なっているのではと想像しました。
庁舎5階の第1から第4の会議室をぶち抜いた広々とした会場には6のテーブルの島があり、それぞれに7席が置かれてました。ファシリテーターも含めて、各島6人程度着席。市民の参加は30人ぐらいかと思われました。
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今回の進行は、次のとおりです。
13:00-13:10 桐ケ谷覚逗子市長挨拶
13:10-13:16 メインファシリテーターからの説明。第2回の振り返り。第3回の説明。
13:17-13:31 グループでの自己紹介、夏の脱炭素チャレンジで印象的だったこと。
13:32-13:44 渡部厚志氏(地球環境戦略研究機関)からの話(1)
13:45-14:19 グループワーク1「チャレンジ振り返り」(①チャレンジしてよかったこと、難しかったこと、②あると良いサポート)各自付箋に書く→模造紙に貼る→他班と共有したいことの選択。
14:20-14:39 全体でグループからの発表を聞く。
14:39-14:51 休憩
14:52-15:08 渡部厚志氏からの話(2)
15:09-16:21 グループワーク2「将来はやってみたい脱炭素行動」と「「課題」解消に向け地域に望む変化や、市民・行政・企業などが取り組むと良いこと」
16:22-16:33 休憩
16:33-16:44 グループファシリテーターによる報告
16:45-17:05 次回の説明、質疑応答等
第3回会議のポイントと思われる点
この第3回について、熟議民主主義の観点からのポイントを示していきたいと思います。今回は、全体的に渡部氏が内容的な対応をしています。
段取り等も含めたより詳細な理解については、後日発表される第3回の会議の記録の方をご参照いただければと思います。
(気候市民会議「かながわ気候市民会議 in 逗子・葉山」 - 一般社団法人 環境政策対話研究所 (inst-dep.com))
<ポイント1>参加者による脱炭素ライフスタイルチャレンジの結果とそこからの抽出。
①チャレンジの結果と評価
脱炭素ライフスタイルチャレンジの実施を参加の市民に呼び掛け。(5分野57項目の脱炭素行動のうち、各分野から最低1つずつ選んで、2週間実施する。詳しくは第2回の8月5日についてのnoteをご覧ください。)
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チャレンジの実施状況:参加市民46名のうち、「行動選択」(これをやります宣言)記入が34名。「振り返り」(これをやってみました)記入32名。
主催者側の評価:「予想を大きく超える」とのこと。(このあたりの相場観はわかりませんが、そういうものかもしれません。)
実際にライフスタイルチャレンジをやってみた32名に対しては、既に修了証書を授与。「脱炭素が今の段階で動き始めている」と評価。「今後も、地域でより広く多くの人々ができるようになるにはどうしたら良いかを考えて欲しい」と、今日の会議でやることに繋げます。
②チャレンジの経験結果からの抽出
グループワーク1では、(a)チャレンジの結果、チャレンジした行動の良かったこと、難しかったこと、(b)あると良いサポート、を書き出させ、グループ内で十分議論し、他班にも共有したいことを選び、発表しています。この段階では、(b)もありますが、(a)で行動したことに大きく引っ張られるというか、行動したことについての(b)という形での発表となっていました。
グループワーク2では、チャレンジの結果というより、チャレンジに関してのアンケートを活用している印象がありました。すなわち、57項目について、既にやってますよが青、今回チャレンジが赤、今は無理だが、将来やってみようかと思うが黄色、対象外、やれないが緑と選ばせたものが集計され、帯グラフとして示されました。そのうち、黄色と緑を実施するには、どのような条件が成就すればできるかとの議論への展開です。
このグループワーク2は、グループディスカッションでの新たな手法が使われ、丁寧に時間をかけて意見の検証がなされました。
各自「将来はやってみたい脱炭素チャレンジが、地域のいろいろな人々ができるようになるための課題」を黄色い付箋に書く。「その対策の意見」を青い付箋に書く。その後これを模造紙に貼り出し、グループでしっかり討議。それらの中から、一番良いと思った組み合わせのものに赤星印をつけ、赤線で囲む。
参加市民は、グループファシリテーターに自分たちのグループの赤星印等の説明を委ね、黄色い付箋用と青い付箋用に、各班ごとにそれぞれ一つの赤丸シールを貼るべく、1班2分程度で、順番に説明を読んだり聞いたりして、検討の後、一番良い考えと思われるものに、シールを貼っていく。6班あるので、合計5回のタームでそれを行う。
この後、グループファシリテーターから、自分たちの班の一押しはこれで、他班の者の赤丸シールが一番多いのはこれでしたとの発表を行う。
この黄色い付箋(課題)を後刻集計し、事務局で検討。これにふさわしい専門家を選んで説明を要請し、次回の10月の第4回で説明をしてもらう。第4回は、幅広い課題についてより深い議論をしてもらうため、2つの班に分けて、この市民気候会議の中で唯一午前午後の長い時間を使って行うものなので、まさに山場だと考えるとの説明がありました。
このように、後半のグループディスカッション2では、参加市民がチャレンジしたことより、チャレンジができず、将来とか対象外とか考えたとのアンケート結果を中心に会議が進行していった感があります。
<ポイント2>なぜ逗子で市民の声が重要かについての市長の説明
冒頭の逗子市長の挨拶で、なぜ逗子市民の声が、気候変動対策において特に重要かについて述べられました。(以下、聞き取った主な内容)
「参加に感謝。皆さんは無作為、人口比に応じて抽出。様々な関係者に支えられて実施できていることにも感謝。」「逗子市としては、昨年1月にチェレンジカーボン・ニュートラル2050を宣言。逗子市は、基本は住宅の町としてのなりあい。住宅の町だと対策も企業頼みではできない。逗子市が宣言する意味はそこにある。住宅の町なので、市民の意識の中で達成するしかなくなる。これは大変。その第一歩がこの会議。自分事として考えて欲しい。ただ学びで終わりにしないで欲しい。わかったで終わったらだめだと思う。行動にどう繋げるか。」「例えば、うちの部長は、スマホで、自宅の電気消費を把握している。どう活用するか。そういうソフトをまずはダウンロードしてみて欲しい。こども達にも、それぞれの家庭で消費電力等認識してもらうようにして欲しい。調べて行動に。暑かった今年の夏。真夏日80日。エアコン切っていたら体がもたないということはあったが、暮らしの中からどうエコに繋がるか。こども達も含めて考えて、それを行動に変えていって欲しい。」「自分は、かつて建築をやっていたので、断熱とかサッシに敏感。窓の内側に二重のサッシをつけると劇的効果。断熱材も入れ方で差が出る。ちゃんと考えて断熱施工をする必要がある。」「行動にどうつなげるか。皆さんといっしょに頑張りたい。」
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市長は、最初の休憩まで、グループワークの様子を各テーブルを回って話を聞く等、熱心に参加されてました。
最初の休憩で退席されるようでしたので、廊下でご挨拶して、市長のお考えを直接うかがうことができました。
「逗子は、先に話したように、住宅の町なので、市民の方に動いてもらわないと脱炭素化は進まない。スマホで、家庭での使用電力を把握したりして、家庭の中で、子どもさんも含めて対応してもらうことが大切だと考える。
ここで出されたもので、住宅の町の脱炭素のモデル的なものを打ち出すことができればと思う。」
「出されたものを、行動計画に反映するのか?」
「計画もそうだが、教育への展開も重要と考えていて、市の担当部局には、そうしたことの準備の検討もさせている。」
<ポイント3>最後に出された究極の質問
17時の予定の時間を若干オーバーするぐらいで第3回の会議も無事終わりかけた頃、最後に質問がありませんかとのところで出て来たのが、「この会議は最終的に、誰に向かって何をするのか」というもの。
当然、第1回から、逗子市・葉山町は、気候温暖化対策に関する行動計画の策定がまだなので、そこにこの市民会議の意見を反映したもらうべく報告するということは、言われて来ました。主催者側が、グループワーク1から2への展開で、気候温暖化対策の地域課題の解決というふうに、行動計画への反映を念頭に置きながら、会議を主導して来ても、参加している市民は、行動チャレンジの自分の経験や、それ以外の知見に基づく個人の意見しか出してないのですから、それが地域の「みんなの」対策に結び着くという印象が持てないというのが正直な気持ちなのでしょう。
別の参加者からも同様な質問が出され、特に、行政への報告はわかるが、地域の企業等への要請はどうするのかという点が聞かれました。事務局長から、「記者会見等で、情報発信することは考えている。他の手法については未定であるが、考えていきたい」旨の答弁がありました。
これは、市民気候会議という熟議民主主義の手法での、参加市民と運営事務局の役割分担ということなんでしょうか。
例えば、立法府に勤めていた私なら、自治体のこうした行動計画はだいたいどういう要素からなっていて、今回の逗子・葉山の市民の議論からすると、ここをこうする方が良いという風にそろそろ考えたいと思ったりします。そういうゴールのイメージが参加市民の方にも欲しいという要望のようにも聞こえ、既に説明してある話を蒸し返しているというより、ある程度共感できる声と思えました。
第4回では、その辺りも念頭に、主催者は、逗子・葉山に特有な問題として、2班とも一コマ設け、専門家をよんで説明をしてもらい、議論してもらうことを準備しています。参加市民と運営事務局の認識が重なり、各方面に採用されるような、より効力のある提言に、どのように帰結していくか、注目されます。
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