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あつぎ気候市民会議…最終回、でも終わらない。
あつぎ気候市民会議の、最終回とされる第6回会議が厚木シティプラザ6階で開催されました(令和5年(2023年)11月26日)。
1.アクションプラン原案①、②作成
前回の第5回の後の動きを、説明、資料をもとにまとめてみました。
オンラインでのやりとりです。
(1)第4回、第5回にAとBの分科会で議論。
実行委員会が、分科会の議論をもとに、アクションプラン原案①を作成。
・原案①のA(「第1章 再生可能エネルギーの地産地消」とし18項目、「第2章 移動・まちづくり」とし20項目)
→A分科会の25名に評価の投票を求める。→22名が回答。
・原案①のB(「第3章 省エネ・住まい」とし15項目、「第4章 消費・食・農・廃棄」とし21項目)
→B分科会の23名に評価の投票を求める。→20名が回答。
・評価の投票は、7段階で推進度評価。コメントも求めた。
原案①の投票結果は、次のとおりです。
(2)(1)の投票を受けて、実行委員会が原案②を作成。
第6回は、この原案②を検討することになりました。
※原案は、実行委員会が専門家・アドバイザーと協議して作成。実行委員会については、以前の筆者のnote記事参照。
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2.原案②の検討
第6回は、この原案②の検討がメインです。
原案②については、(ア)投票の際に、参加市民から出されたコメントをなるべく盛り込んだ、(イ)主体者を仕分けた。市民が「自分でやること」、実現のために「市民が働きかけること」、市や事業者に「依頼すること」、等の説明がありました。
その上で、原案②は、70項目程度ありますが、特に第6回で検討するものを次のような14項目とするとの説明がありました。
・第4回、第5回の会議で話題にならなかった項目3(これは、実行委員会側の分類分けの整理の問題によるものも含まれる)。
・原案①の推進度評価(7段階)の低かったもの(平均点5.5未満)11。
評価の低い原因として、実行委員会は、専門家などからの説明不足でわかりにくかったこと、取り組みにくく、不公正になる、快適でない、難易度が高い(お金がかかる、担える人がいない)等と分析しています。
これにもう一つ、文言を変えたものも討議の対象となりました。14+1。
この第6回の会議で、これら特に推進の評価が低いものは、(ア)全グループが削除する意見となれば、削除して投票対象にしない、(イ)このまま残すならそのまま投票対象とする。(ウ)内容を修正して残す意見があれば、修文で対応して、投票対象とする、という方針で議論が始まりました。
まず、全体で、この14+1について説明がありました。写真ではちょっとわかりにくいかもしれませんが、紫文字で原案②での変更・追加を示し、オレンジ文字で特に投票コメントを反映したところを、赤文字で説明不足と考えて追加等したところを示してます。
この間、参加市民は、それぞれについての自分の考え(〇このまま、×削除、△修正)をメモしていきます。
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この後、グループ討議で、これら14+1について検討が行われました。6,7人の6つの班のテーブルに分かれてましたが、中には、順に挙手で採決を採っているような班も見受けられました。記録係が結果を記録していきます。13時半過ぎスタートで、当初14時40分までの予定が、15時まで延長されました。
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グループ討議後、その結果を各記録係から集計。実行委員が別室で作業をします。休憩、各参加市民が、特に自分が大事、自分でも実行すると考えたことをマイアクションプランとして、1人30秒で全員が発表する等の中で、脱炭素市民アクションプラン(案)が16時半ごろにできてきました。
討議の結果として、いくつかを修文することになってました。
修文のそれぞれについて、写真のように赤字等で示して説明がなされました。
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この脱炭素市民アクションプラン(案)の投票は、後日、オンラインで行うことになりました。一堂に会する会議はこれで終わりですが、ネット時代で熟議民主主義はオンランも活用して行われます。「最終回、でもまだ終わらない」とは、こういうことです。
今後の予定は次のようになっています。
投票は、11月29日から12月3日の間に実施。第6回で討議した14+1だけでなく、70項目を超える全体が対象。
具体的な投票方法等は、参加市民には知らされると思います。「支持が50%以下のものは、アクションプランから排除する」との説明も聞こえましたが、具体的に、どのように「支持が50%以下」と判断するかは、傍聴席からはわかりませんでした。
投票結果として成立した「脱炭素市民アクションプラン」は、12月中に、厚木市と市民に公開。
令和6年(2024年)2月17日に、報告書冊子を発行。
3.あつぎ気候市民会議の傍聴を終えて
前述のように、投票、その結果としてのアクションプランの最終確定という大仕事が残ってますので、最後の実行委員長挨拶でも、全員での達成感のようなものは出てなかったように思えます。70項目以上の投票では、40分ほどかかるとの話もありました。平場で、みんながいる中で、投票とか採決をする意義もあるかとも思いますが、ネットを活用できる時代の熟議民主主義の姿でしょう。
第6回での会議でも、参加市民の討議の結果を修文につなげる等、参加市民にしっかり理解してもらい、そこで出てきた声をきちんと反映するという点では、大変な配慮がなされていたと思います。
ただ、このアクションプランの位置づけについては、若干、すっきりしないところもあります。
原案①から原案②において、主体者の整理がなされたのは良かったと思います。しかし、それまで十分になされていなかったのは、このアクションプランの位置づけの整理がしっかりなされていない部分があるからではないかと思ってしまいます。
また、「市や事業者に「依頼すること」」とありますが、市民と市の協働事業の成果とするのであれば、市には「依頼する」のではなく、「市は〇〇を行う」というアクションプランを作って、市にぶつけて、市に採用させるようにするというやり方もあったのではないかと思いました。他にもアクションプランの位置づけの整理を起因とした表現のあいまいさが感じられる部分がありました。
最後の方の専門家の話として、「この会議で生まれたアクションプランを、厚木市として政策化することが大切」とか、「市民と行政が共同して作り上げるアクションプラン」というような発言もあり、これらについては、私としても、大いに共感するものでした。一方で、別の専門家の「これをスタートして皆さん頑張ってください。」という発言には、別に間違ってはないのですが、アクションプランは、会議に参加した市民のものではなく、「わたしたち厚木市民は」と始まるものですから、「これを厚木市民全体のものとして共有して実行していきましょう。」とか言っていただいた方が、位置づけがはっきりして良いのではないかと思いました。
くじ引きで選ばれた市民が、これだけの時間をかけて作ったものですから、その熟議民主主義の成果の「正当性」をどこまで市に、市議会に、市民に尊重してもらうようにするか。これは全国で行われ出した気候市民会議の先駆事例としても、とても大切だと思います。特に、あつぎ気候市民会議は、厚木市が市民協働提案事業という条例を持っていて、そこで採択されれた、まさに市民と行政の協働事業なのですから。
そうした意味で、このアクションプランを厚木市に示した後の取り組み、協働事業であるあつぎ気候市民会議の場合は、そうした段取りをこの会議の中に入れてもよかったのではないかとも思いますが、あつぎ気候市民会議で市との調整等の、その後の取り組みを担わないのなら、厚木市がこれをどう受け取り、今後の政策展開に活かしていくかが大いに注目されます。そうした意味でも「終わらない」のではないでしょうか。
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