「こども若者参画の next step」…ルールメイキングサミット2024に参加して
認定NPO法人カタリバの「ルールメイキングサミット2024」(2024年10月13日東洋大学白山キャンパス)の一般公開プログラムに参加。
私の考えていた「こども若者参画の next step」ということを更に後押ししてくれるような内容でした。その数日前の市民アドボカシー連盟草の根ロビイング勉強会での若者の話と合わせて、ここに記したいと思います。
1.『草の根ロビイング勉強会』~「国連・未来サミット報告と日本でのアドボカシー」
この「草の根勉強会」、とても刺激的でした。
(1)日本被団協のノーベル平和賞受賞!
ちょうど、日本被団協がノーベル平和賞受賞のニュースが飛び込んだところでの勉強会の開催。登壇者の一人が高橋 悠太 氏(一般社団法人かたわら 代表理事)で、彼は2000年広島県福山市生まれ。核兵器の廃絶と、意義あるユース参画を目指してアドボカシー(政策提言)を行っており、核兵器廃絶日本NGO連絡会幹事。平和賞受賞に関する対応等がある中での登壇でした。(実際、翌日の新聞には、所属する「KNOW NUKES TOKYO」の仲間がコメントを載せてました。)興奮を抑え、冷静に報告や質疑応答を行ってくれましたが、彼らの活動も平和賞受賞につながっていると思います。根気強い取組に敬意を表します。
(2)日本代表は、「キティーちゃん」⁈
SDGsの次のグローバル・アジェンダが議論される国連「未来サミット」に、市民団体枠で現地参加した若者3人から、未来サミットで感じたこと、採択された「未来のための協定(Pact for the future)」の内容の報告等がありました。
日本は、国の代表としての若者「YNWD」の選抜、派遣の仕組みがなく、他の国のYNWDの活躍の中で、日本の代表としては、国連SDGsの活動とコラボしている「キティ―ちゃん」が国連本会議場のスクリーンに映し出され、皆、びっくりしたとのことです。
国内での若者参加をどうするか、今、各方面一所懸命に取組がなされていますが、並行して、国際的な場における日本の若者の声をどう届けるかも喫緊の課題かと思いました。「キティちゃん」のスピーチは素敵ですが、日本だけ取り残され、ずっと「キティちゃん」が登場し続けるのもいかがかと思いますので。
(3)日本若者協議会の草の根ロビイング市民アドボカシーの成功!
登壇者の芹ヶ野瑠奈 氏は、日本若者協議会の所属。国連での経験を様々に語ってくれました。国際的に海外の若者団体との連携にも取り組み出したとのことです。
日本若者協議会が、気候変動対策に若者の声を反映させるため、審議会に若者委員を登用することなどを求めてきたことは承知してました。各政党への根気強いアドボカシーの結果、国会の本会議質問で取り上げられ、岸田総理の前向きな答弁があったのもオンタイムで視聴しました。
それらの成果として、経済産業省・資源エネルギー庁として初めて、エネルギー基本計画を策定するプロセスで若者団体にヒアリングを実施することになりました。9月26日、日本若者協議会を含む3団体が総合資源エネルギー調査会 基本政策分科会(第63回)に出席し、意見発表、質疑応答を行いました。その内容は、経済産業省のHPに掲載されています。
https://youthconference.jp/archives/8066/
https://www.enecho.meti.go.jp/committee/council/basic_policy_subcommittee/2024/063/
市民アドボカシーの素晴らしい成果です!
世の中変えようと思えば、市民が変えられるのです!
・・・だけど、そこで芹ヶ野さんが直面したのは、若者間の意見の対立でした。審議会の事務局の「バランス」をとった人選により、結果として、「声は聞きました、いろいろな意見がありました」で終わってしまう可能性があります。・・・。
(4)政治は未来の選択
政治学者の白鳥令先生の本に「政治は未来の選択」であり、基本的に論争的だとの趣旨の記述があります。
まずは、国内でも国際的にも、こども若者の意見尊重、社会参画の道を広げることが大切です。でも、なぜ、それが必要なのでしょうか。それは主権者として、尊重されなければならない個人として、こども若者を捉える必要があるからだと思います。それは同時に、こども若者の未来の選択を表明させ、論争に巻き込むことを社会として是とするものだと思います。そうしたことを社会全体として覚悟して、タフに自分の「未来の選択」を主張できるこども若者をどう育てていくか。そうした「こども若者参画のnext step」も念頭に置く必要があるのではないでしょうか。
2.ルールメイキングサミット2024で、中高生に規制改革会議のやり取りを説明
タフに自分の「未来の選択」を主張すると言えば、学校の校則の見直しの取組であるルールメイキングの活動は、そうした要素を既に含んでおり、事実上、「参画」の先の方までをターゲットにする動きであると認識はしていました。ちょうど、日にちを置かず、1年に一度のルールメイキングサミットがあったので、その一般公開部分を見に行きました。
(1)きっかけは2019年。
認定NPO法人カタリバの今村久美代表理事が登壇。
2019年に関わっていた学校の若いスタッフからメッセージがあり、生徒を講堂に並べて、校則を守っているかを抜き打ちでチェックする日があるとのこと。生徒も辛いが、チェックする先生方も辛そうだ。校則だから守らせるのだが、腑に落ちない部分があっても、先生もそれをしなければならない。その辺りからブラック校則ということが言われ出していて、何が一番良いルールとなるのか、みんなで議論して変えていく、「みんなのルールメイキングプロジェクト」がスタートしたとの話がありました。経済産業省がプロジェクト後援するということで、モデル校を募っても、当初は数校だったのが、徐々に活動が広がり、サミットも3回目を数え、今年は、全国40校から100名の中高生を招待。様々のワークショップを重ね、15時からの一般公開の時間となったのです。
(2)「ルールメイキングの現在地を知る」
一般公開プログラムは、「事前に招待生が取り組んだインタビュー調査「対話で校則は変えられる?ルールメイキング大調査2024」の結果発表。ルールメイキングに取組む全国の学校の違いや共通点を見つけながら、これからのルールメイキングの進め方やあり方について、サポーターと一緒に議論・対話する。」と資料に記述がありました。
その前に、中室牧子教授(慶應義塾大学総合政策学部)の登壇と話がありましたが、それは後述します。
この「ルールメイキングの現在地を知る」のためのプラットフォームは、「Liqlid」。このサミットを共催しているJ-CEF(日本シティズンシップ教育フォーラム)の場等で私もご一緒し、茅ケ崎の「まちのBAR」にも参加してくださった、Liquitous Inc.の栗本拓幸氏が登壇。アンケート、自由記述の内容を、Liqlidを使って報告。
ルールメイキングに関わる中高生ですから、1.自分の意見に価値があるか、2.大人は話を聞いてくれるか等については、肯定的な答えが多かったです。3. 自分の行動で社会を変えられると思うかという問いについては、肯定的でもない回答の割合も多くなっていました。自由記述からは、ワードクラウドの分析で、他校のことを知りたい、視野を広げたい、事例を知る、他の人の視野を知ることが大切、制服、髪型、着こなし、スマフォの扱い等の記述が多い、等の内容でした。
「自分の行動で社会は変えられるか」という設問は、校則だけでなく、もっと広い意味で社会をということのものですが、これはその前の中室教授の話、後の栗本氏の自身の経験も踏まえての、「社会は変えられる」発言にも繋がるものかと思います。
(3)校則見直しのサミットに、規制改革会議の話
オープニングトークとして、中室教授は、自身がメンバーである国の規制改革推進会議の話をされました。国の中のルールを変えていく、国のルールメイキングの規制改革推進会議。
10月9日の、公共ワーキング・グループでの、コンビニ等での公金取扱いオペレーションを題材に、参加中高生ともやり取りを繰り広げました。コンビニでの公金取扱いでは、データを一旦POSの中に入れるものの、書類を7年間保存する必要があり、その保存経費が24億円かかるので、これを改善できないかとの話でした。これを止めて経費削減すれば良いと思われるが、30年間やめられない実態について、中高生とのやりとりがなされました。「なんかデータにあったら困るよね」、「紙の方が安心じゃないか」、「所管官庁が複数(総務省(都道府県)、国税庁等)で、難易度が上がる」等の話です。
こうした議論が月に1回、複数のワーキング6つぐらいの議論が並行して行われているということで、この国の無駄ルールを変えることの議論を重ねているとの話がありました。
また、生の牛乳を売るには有人でなければならず、自動販売機で生の牛乳は扱えないことの事例も出され、昭和の時代に、牛乳の衛生管理が出来ていない時のルールが残っているのだが、牛乳については、「規制のサンドボックス」という形で、無人販売の実験が行われている。ルールをなくすだけでなく、より良いものに変える必要があり、昭和の人が話し合って決めたことを変えるには、話し合いが必要。みんなでちゃんと実証が必要等が述べられました。
その後の中高生とのやりとりの中で、中室教授から、大人同士の会議では、相手が話を聞いてくれないことも普通にある。残念ながら、机をたたいての怒鳴り合い、罵り合いもある。パワーとパワーのぶつかりあいで、時間をかけて繰り返し同じことを言って、説得を積み重ねる。民主主義の中で物事を変えるには、時間と手間がかかる。個別撃破していく。業界団体、議員、アポをとって、個別撃破をする。片っ端から議員会館を回っていく。情熱と執念が必要、等の話がなされました。
・・・これ、中高生向けの話ですよね。でも、まさに、校則見直しのための話し合いも同じとの文脈で話されていました。議員会館を順番に回って要請していくなんて、いつもの市民アドボカシー連盟の草の根ロビイング勉強会で言われていることと、大差ない話でした。
最後のセッションで、中高生が感想を述べるところで、「「サンドボックス」のことを知れたのは良かった。自分たちの学校でも提案してみたい。」とか、「「個別撃破」で、個別に話を積み重ねたい」というような反応が示されました。
そう、規制改革推進会議と校則見直しは、共通の、「話し合い」の重要性に行き着いていることを、私は目撃することができました。
「タフに自分の「未来の選択」を主張できるこども若者をどう育てていくか。そうした「こども若者参画のnext step」」は、ここにありました。
「こども若者参画」は、こども若者に、自分の「未来の選択」を主張させ、社会全体でそれを議論し、あるべき未来を模索することまで含めたことだとと考えます。時代が求めているのは、それだということを確信できた、「みんなのルールメイキングサミット2024」でした。