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エレガントパズルを読みました

読み始めてから少し時間が空いてしまいましたが、本日読了したので感想を残しておこうと思います。

読書メーターの3行感想。

直近だと「エンジニアリングが好きな私たちのための エンジニアリングマネジャー入門」も読んだばかりでしたが、それとも切り口が違っていて楽しく読めました!


はじめに

翻訳者の岩瀬さんも動画等で言及しているのですが、この本の内容は論文や統計に基づくようなアカデミックなものではなく、あくまで著者のウィル・ラーソンさんの知見や経験に基づくn=1のナレッジ集であることは念頭においておくと良さそうです。
この本の内容を丸暗記してそのまま実践するというよりは、なるほど、そうゆうアプローチもあるんだな〜とか、ここはうちの組織にも適用できそうだなど、現在感じている課題と照らし合わせながらヒントを探ったり、試してみたりっていう使い方が良いと感じました。

その辺り踏まえて各章で印象に残った部分をまとめます。

第2章 組織

最初の組織における最適なチームのサイズ感や、チームの成長段階を定義します。ここで、「マネジャーは6~8人のエンジニアを支援すべき」という原則が出てくるんですが、「はじめに」にも書いた通り、これをそのまま鵜呑みにして「1チーム6~8人とする!」ってルールを作るのではなく、もし現在チームマネジメントに課題感を感じているならば、少し人数が多すぎるんじゃないか?とか、チームを分けてみて様子見てみようか、といったヒントとして捉えるのがこの本との適切な距離感かなと思いました。

後半に向けて、エンジニアのトレーニングには時間が掛かるので、チームの成長目標に合わせて計画的に準備をする必要性や、サクセッションプランニング(後継者育成計画)の重要性について語られていました。

第3章 ツール

まずはお馴染みの「LeanとDevOpsの化学」を引き合いに出しつつ、開発チームの健全性を可視化・点検する方法について整理されてました。
また中盤では、組織がスケールし人数が増えてきたフェーズにおいても、どのようにトップ(経営層)の考える戦略やビジョンを、メンバー1人1人のレベルまで落とし込んで合意形成するかが述べられています。
終盤では「キャリアナラティブ」についても語られており、昨今「管理職の罰ゲーム化」などと言われて昇進を希望しない人も増えているという話をよく聞くので、その辺りの課題感を感じている組織にはヒントになるかもしれません。

他にも、経営幹部に対するプレゼンのコツや、学習コミュニティとの向き合い方など、一貫してこの章では組織運営や組織のスケールで抑えるべきポイントが語られていました。

組織の成長フェーズに合わせて何かを新しく始める際、始めてみたけどなんだかしっくりこない時に、それぞれのトピックをまた読み返そうと思います。

第4章 アプローチ

ここではより具体的にチームをマネジメントする手法について言及されていました。
最初にマネジメントの本質について語られていますが、その中でも「強い関係性はどんな問題にも勝る」という項が印象的でした。本当にその通りだなと思っていて、私も何度か強いと思えるチームを経験したことがありますが、共通して以下のような特徴があったように思います。

  • 組織への帰属意識が高く、成長を強く意識している

  • お互いに尊重し合っていて、仲が良い

  • ただし、馴れ合いではなく、意見をぶつけ合えるような心理的安全性が確保されている

上司を含めてお互いに尊敬・尊重できなかったり、組織の決定に対して明確に不満を持っているようなチームは総じてパフォーマンスにも悪影響が出てるイメージです。

後半は「エンジニアリングマネージャが行き詰まる方法」の節もあって、エンジニアリングマネージャを目指す人、今エンジニアリングマネージャで行き詰まりを感じている人には特にヒントが多いのではないでしょうか。

第5章 文化

最初にインクルーシブな組織を作るためには、専門的な成功とキャリア開発に臨める「機会」と、自身が快適と感じる自分のままで参加できる「メンバーシップ」をそれぞれ高める必要があると述べられています。
コーヒーチャットやチームランチのような具体的な手法まで触れられているのもこの本のいいところです。

また、上級マネージャ候補を検討する上で、社内の候補者を評価する方法について言及されているのも非常に面白かったです。今、結果を出せてて、優秀な人を選択するだけでは足りなくて、より上級な視点で物事を捉えられるのかどうかをしっかり見極める必要があります。
そこを見誤ってしまうと、ピーターの法則にハマってしまうわけですね。
昇格プロセスに課題を感じている組織にはここは良いヒントになるのではないでしょうか。

あと、「ヒーローをやっつけ、頑張りすぎをやめる」という節があって、ここも個人的に刺さりました。今でこそエンジニア不足が叫ばれて、そういった無茶なプロジェクトは減ってきている印象がありますが、昔の炎上プロジェクトはこうゆう体質のものが多かった気がします。一部のハイパフォーマーに依存して、エンジニアを消耗させながら突き進むようなプロジェクト、、思い出すと心が痛い。。

第6章 キャリア

ここでは自らのキャリアと共に、組織としてそれぞれのキャリアとどう向き合うべきかが述べれていました。
特に印象に残ったのが、「人道的に面接プロセスを運用する」という節で、面接する側の心構えについても言及されています。今後、自分が採用プロセスに関わる際は読み返そうと思います。
また、ところどころで、燃え尽き症候群にならないように気をつけよう、とか、詰め込みすぎると悪い面接官になり得るなど、「ゆとり」の重要性について触れられており、これは2章でも述べられている一貫した主張だなと感じました。

また、リファラルやソーシングといった採用方針についても詳しく説明されており、具体的にはLinkedInを使ったコールドソーシングのアプローチについて書かれていました。日本だとX(旧Twitter)のDMとかが多いんでしょうか。最近までそういったツールに触れてこなかったので、非常に興味深かったです。

後半はキャリアラダーの作り方や、評価指標についても語られてました。前半が組織をスケールさせるための人的リソースの確保手段で、後半はそれらの人材を定着させ、極力減らさないための出口戦略について書かれてます。

同じウィル・ラーソンさんの書籍で、「スタッフエンジニア」がありますが、そちらはスタッフエンジニア側のキャリア構築戦略として企業選びの方法などが語られているのに対し、「エレガントパズル」では企業側の目線で採用について語られているのも面白いなと思いました。

第7章 さらに先へ

いろんな参考書籍や論文がまとめられてました。
特に論文の部分は筆者のコメントも添えられており、n=1のナレッジ集のような体系でありながら、どれもこれも納得感が得られたのは、こういった多数のインプットに裏打ちされているからだとわかりました。

おまけ

読み終わった後、誰かと感想を語らいたくて以下の動画を視聴しました。
一緒に輪読会してる気分になれて良かったです!


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