【注目の生殖不能要件 20231025最高裁大法廷違憲判断】
戸籍の性別変更が認められる要件を定めた、性同一性障害者の性別の取り扱いの特例に関する法律3条には、5つの要件が定められています。
今回の最高裁決定は、そのうちの4号(「生殖腺がないこと又は生殖腺の機能を永続的に欠く状態にあること。」(生殖不能要件・不妊化要件))について、結論として、15人の裁判官全員一致で、憲法13条に違反し無効であるとの判断を示したものです。
なお、事案の処理としては、高裁で判断が示されていなかった、5号(「その身体について他の性別に係る身体の性器に係る部分に近似する外観を備えていること。」(外観要件))について更に審理を尽くさせるために、広島高裁に差し戻したため、戸籍の性別変更が認められるかどうかの結論は出ていません。
4年前の2019年1月には、同じ生殖不能要件について、最高裁第2小法廷が「現時点では合憲」との判断を示していましたが、これを変更したものです。
今回最高裁は、医学的な知見の発展を踏まえ、
①生殖不能要件による身体への侵襲を受けない自由に対する制約が、
治療としては生殖腺除去手術を必要としない性同一性障害者に対し、
ア 身体への侵襲を受けない自由を放棄して強度な身体的侵襲である生殖腺除去手術を受けることを感受するか、
イ 性自認に従った法令上の性別の取扱いを受けるという重要な法的利益を放棄して性別変更審判を受けることを断念するか
という過酷な二者択一を迫るものになったこと、
②4号の規定の目的(変更前の性別の生殖機能により子が生まれることによる社会の混乱や、生物学的区別による男女の区別への急激な変化を避けること)を達成するために、医学的にみて合理的関連性を欠く制約を課すことは、
制約として過剰になっていること、
などを指摘して、4号による身体への侵襲を受けない自由の制約は、必要かつ合理的なものとはいえないと判断しました。
詳細は、決定文(https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/446/092446_hanrei.pdf)をご確認ください。
法廷意見のほかに、
3名の裁判官による反対意見(5号も違憲なので性別変更の決定をすべきという意見)と1名の補足意見(本決定後の立法府の対応について)があります。
個人的には、3名の裁判官による反対意見と、意見を同じくするものです。
特に三浦守裁判官の反対意見は、昨今話題に上がることが多い、公衆浴場やトイレ、更衣室の問題についても触れていますが、その点も全く同感です。
そして、三浦裁判官の反対意見の付言の最後の
「指定された性と性自認が一致しない者の苦痛や不利益は、その尊厳と生存に関わる広範な問題を含んでいる。民主主義的プロセスにおいて、このような少数者の権利利益が軽んじられてはならない。」
の箇所にも全面的に同意するものです。
法廷意見もそうですが、反対意見も直接読まれることをオススメします。
先日(2023年7月11日)の経済産業省トイレ使用制限事件での最高裁の判断もそうだったが、最近の、この分野での最高裁の判断はまともな判断が続いていると思われます。近い将来あるであろう、同性婚訴訟の最高裁判決も期待したいです。
性同一性障害 性別変更の手術要件 最高裁違憲判断 今後議論は | NHK https://www3.nhk.or.jp/news/html/20231026/k10014237701000.html
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