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【高収入・起業家必読】婚前契約書の書き方 ※そのまま使えるテンプレ附属

こんにちは。藤澤数希です。

私の周りには、高収入の起業家や会社員が多く、男女問わず、結婚前に婚前契約を交わす事をおすすめしています。しかし、高収入で忙しいような方々は、実際に至るかは不確定な離婚に対して、わざわざ時間をかけて婚前契約を作成する事はできないという場合も多いです。
一方で、現行の民法における婚姻制度は、高収入の起業家や会社員にとっては、いくつか大きな落とし穴があります
例えば財産分与という制度では、万が一、離婚に至った場合には、自分になんの責任がなかったとしても、数千万円~数億円請求される事があります。お金で解決できるなら、まだマシですが、起業者の資産は非上場株式が占める割合が高いため、離婚によって会社の資金が流出してしまうと、会社の経営を揺るがしかねません。これは、起業家にとって、人生そのものを揺るがすといっても過言ではないでしょう。
特に、昨今は熟年離婚が増えているため、婚姻期間が長い分だけ、請求の期待値も大きくなります。(実際の離婚における請求事例については、師である藤沢数希著「損する結婚 儲かる離婚」にて、非常に分かりやすく、まとめられているので、是非ご覧ください。)

そこで、婚前契約によって、離婚時の条件を事前に定めておくことで、そのようなリスクを大きく軽減する事ができます
婚前契約は、保険のようなものです。基本的には、結婚生活のトラブルは話し合いで解決できるのが理想的ですが、どうしても話し合いで解決できず、人生をともに歩めないならば、速やかに離婚して、新しい人生に踏み出した方が賢明でしょう。離婚自体は、必ずしも悪いことではありません。しかし、離婚したくても、条件で揉めて、いつまでも離婚できない、新しい人生に踏み出せない、それはお互いにとって大きな損失です。

そこで、本記事では、私の周りの離婚体験や、自分が交わした婚前契約を基に、婚前契約書を書くために意識すべきポイントを簡潔に解説し、そのまま使える契約書のテンプレート(wordファイル)を附属しました。

本テンプレートは有料となっておりますが、離婚問題を専門とする弁護士2名と議論した上で作成したものであり、個別で弁護士に依頼するより遥かに手っ取り早く、安価に済みます。
婚姻制度は共通の制度なので、誰が結婚しても、大体落とし穴も共通しています。したがって、名前を入れ替えるだけで、そのまま使う事ができます。実際に私も、このテンプレートに基づいた、婚前契約を交わしているため、将来的な不安を抱える事なく、配偶者との結婚生活も仕事も充実させる事が出来ています。

現実として、日本では、人口1000人あたり1~2組が離婚していると、言われており、それほど低くない確率で、将来離婚する事になります。高収入でストレスのかかる方々の離婚率は、私の肌感的には、もっと高いです。
人間関係も感情も流動的に移りゆくものです。"愛情が永続する"という甘い幻想は、捨てることが大切です。

結婚は、簡単です。お金もかかりません。しかし、婚前契約を結ばずに、万が一離婚に至ると、途方もない損害を被ります。かといって、結婚してから、契約したとしても無効となるので、婚前にしっかり話し合っておく事が重要です。結婚前に、離婚の話題をするのは、気が引けるかもしれませんが、これから長い時間を共に送れば、このような現実的な話は必ず出てきます。結婚生活の最初の壁だと思って、是非、前向きに話し合ってみてはいかがでしょうか。
是非、結婚前に、本記事を読みこんで、婚前契約について真剣に考えていただき、将来の莫大な損失を回避して頂けたらと思います。

本記事の主な構成は下記のようになっています。

・離婚が泥沼化する理由
・婚前契約が必要な理由
・婚前契約の有効性
・婚前契約書のテンプレート

離婚が泥沼化する理由

もし、あなたの回りに、離婚経験のある方がいらっしゃったら、是非体験談を聞いてみてください。
離婚のストレスは相当のものと言われておりますが、実はそれは離婚そのもの対するストレスではなく、離婚時の条件の決定に際して、とにかく揉めるため、前向きに新しい人生を踏み出す事が出来ないからです。
その点が、一般的な失恋とは大きく異なる点です。
実際に、離婚時に揉める事柄は以下のようなポイントがあります。

  • 財産分与

  • 婚姻費用の分担

  • 年金分割

  • 慰謝料

  • 身上監護権 + 養育費

このうち、財産分与・婚姻費用の分担・年金分割は、収入が多い方が、収入が少ない方に分配するという、制度なので、収入差が大きい夫婦が離婚すると、収入が多い方に莫大な支払い義務が生まれます。
これが、結婚が配偶者所得連動型債権とも揶揄される理由です。一つずつ、詳細に説明していきます。

財産分与

財産分与とは、婚姻中に得た共有資産を折半するという制度です。
ここで、気をつけなくてはならないのは、共有資産とは、預金、株式、債権、不動産、保険等の基本的に全ての金融資産が対象となる事です。
そして、民法第762条第二項で定められている通り、夫婦のいずれに属するか明らかでない財産は、その共有に属するものと推定されます。したがって、口座や登記の名義は関係ありません。相続と贈与以外は、全て共有資産として折半されると考えてください。

第二款 法定財産制
(婚姻費用の分担)
第七百六十条 夫婦は、その資産、収入その他一切の事情を考慮して、婚姻から生ずる費用を分担する。
(日常の家事に関する債務の連帯責任)
第七百六十一条 夫婦の一方が日常の家事に関して第三者と法律行為をしたときは、他の一方は、これによって生じた債務について、連帯してその責任を負う。ただし、第三者に対し責任を負わない旨を予告した場合は、この限りでない。
(夫婦間における財産の帰属)
第七百六十二条 夫婦の一方が婚姻前から有する財産及び婚姻中自己の名で得た財産は、その特有財産(夫婦の一方が単独で有する財産をいう。)とする。
2 夫婦のいずれに属するか明らかでない財産は、その共有に属するものと推定する。

民法|e-Gov 法令検索


例えば、もし婚姻中にあなたが死ぬ思いで、資産を1億円増やして、配偶者が無収入だったとしたら、あなたは離婚時に配偶者に対して5,000万円を支払う義務が生じます。たとえ、配偶者の不貞行為やDVが原因で離婚したしても、わずかばかりの慰謝料は請求できるかもしれませんが、財産形成の貢献度と有責性は無関係とみなされるため、折半となります。したがって、あなたが高収入である場合、自身が無責配偶者であったとしても、財産分与によって非常に大きな債務が発生します。

常識的には信じがたいと考えるかもしれませんが、婚姻中の財産形成に対する、二人の貢献度は、原則的に同等であると考えられます。家事が、非常に大変な労働であった時代には、真っ当な考え方であったかもしれませんが、家電が発達し、一人でも家事と仕事を両立できる現代においては、異常と言わざるを言えません。

婚姻費用

婚姻費用とは、いわゆる生活費のことです。婚姻費用の負担は原則的に、収入に応じた算定表を鑑みて、決定されます。
例えば、子無し夫婦で、あなたが年収1,000万で、配偶者が無収入だった場合、配偶者の不貞行為により別居をしたとしても、あなたには毎月16~18万を、配偶者に支払う義務が生じます。
逆に言うと、配偶者は自分の責任で別居しているにも関わらず、あなたの手取り年収の25%~30%を、一切の負担なしに得ることができるのです。
したがって、婚姻費用の分担義務が続く限り、無収入の配偶者は、離婚には応じません。高収入の配偶者から、婚姻費用という名の不労所得を得られるのですから、できるだけ裁判を長引かせて、最後の一滴まで搾取しようというインセンティブが働くからです。

年金分割

こちらも、財産分与に類する制度です。
日本の公的年金は2階建てと言われています。一般的に、起業家や会社員は、基礎年金(1階)と厚生年金(2階)を源泉徴収で支払っています。

$$
\begin{array}{|c|c|c|} \hline
年金& 対象・保険料 & 年金分割\\
\hline
基礎年金 &
\begin{matrix} 20歳以上60歳未満のすべての人が加入\\
保険料は原則として全員が同じで定額
\end{matrix} & 3号分割  \\
\hline
厚生年金 &
\begin{matrix} 会社などに勤務している人が加入\\
保険料は収入に対して定率(額は収入に応じて変わる)
\end{matrix} & 合意分割 \\
\hline
\end{array}
$$

年金分割とは、婚姻中に、年金の支払い額の少ないほうが、年金の支払い額の多い方に対して、分割を請求する事ができるという制度です
基礎年金に該当する部分は、3号分割と呼ばれ、1:1で折半します。厚生年金に該当する部分は、合意分割と呼ばれ、特段の事情がない限り、1:1で折半します。
参考リンク: 離婚時の年金分割について

高収入の方は、自分の給与明細を見ていただければ、分かると思いますが、税金なんか目じゃないくらい、厚生年金を支払っています。
年金分割では、その支払いすら、折半されてしまうのです。

慰謝料

有責配偶者が支払います。有責性(離婚の原因を作ったのはどちらか)と支払額を争います。

身上監護権 + 養育費

離婚後に子どもと一緒に生活する権利を、身上監護権といいます。親権の中でも特に身上監護権は、大きな争点となります。
身上監護権者は、元配偶者に対して、養育費を請求できます。婚姻費用と同様に、収入に応じた算定表を鑑みて、決定されます。


以上が、離婚時に揉めがちなポイントの説明になります。
本来ならば、信頼関係が崩壊しているならば、速やかに離婚して、新しい人生に踏み出した方がお互いに賢明です。
しかし、離婚する時点では、お互いの信頼関係は地に落ちているため、「1円でも多く巻き上げたい vs ビタ1文与えたくない」、という醜い戦いが繰り広げられる事になり、泥沼化するのです。

婚前契約が必要な理由

このようなトラブルの大部分を事前に回避するのが、婚前契約の役割です。海外の富裕層は、婚前契約を交わす事で、事前に離婚時の条件を合意する事が一般的です。
そうすることで、万が一離婚するに至った際にも、争いが長期化することを避け、お互いに速やかに新しい人生に踏み出す事ができます。
具体的には、上記の各項目に対して、以下のような対応が可能です。

財産分与

先述した法定財産制とは異なる内容を、個人間契約によって別途定める事ができます。このような個人間契約を行わなかった場合のみ、民法第755条に基づき、先述した法定財産制が有効となります。

(夫婦の財産関係)
第七百五十五条 夫婦が、婚姻の届出前に、その財産について別段の契約をしなかったときは、その財産関係は、次款に定めるところによる。

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婚姻費用

財産分与と同様に、先述した法定財産制とは異なる内容を、個人間契約によって別途定める事ができます。
ただし、婚姻費用の負担なしでは生活が成立しないといような場合、扶助の義務に反するとみなされ、無効になる可能性もあります。したがって、扶助の義務と婚姻費用の負担のバランスが取れるような契約内容にする必要があります。

(同居、協力及び扶助の義務)
第七百五十二条 夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない。

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年金分割

年金分割の請求権は公法上の権利であるため、原則として、個人間契約によって、請求権を無効にすることは出来ません。
したがって、基礎年金の分割に該当する3号分割は、婚前契約にて、権利を取り消す事は難しいと考えられます。
一方で、合意分割では、按分割合が合意に達しなかった場合、按分割合を決めるために、調停、審判、附帯処分等の申し立てが必要になります。したがって、不起訴の合意(調停、審判、付帯処分等の申し立てをしないこと)を個人間で合意する事は、可能です。
ただし現状、判例がある訳ではないため、内容が認められない可能性もあります。

慰謝料

離婚事由によるので、事前に婚前契約にて、取り決めることは難しいと考えられます。公序良俗に違反する内容は、無効となる可能性が高いです。(例: 不貞行為した場合、慰謝料1億円を支払う。)

身上監護権+養育費

身上監護権と養育費は、子のために決定されるべきもので、子がいない時点で、婚前契約にて、取り決めても、無効となる可能性が高いです。

婚前契約の有効性

婚前契約は、個人間の契約であるため、基本的には、何を定めても自由ですが、公序良俗に違反する内容は、無効となる可能性が高いです。
また、民法第754条では、夫婦間の契約は、いつでも一方的に取り消すことができるとされています。したがって、必ず、婚姻届を提出する前に、契約を結んでください。

(夫婦間の契約の取消権)
第七百五十四条 夫婦間でした契約は、婚姻中、いつでも、夫婦の一方からこれを取り消すことができる。ただし、第三者の権利を害することはできない。

民法|e-Gov 法令検索

また、現実問題として、日本において婚前契約に関する、判例はほとんど無いため、法令に基づいた理論的な議論は可能であるものの、実際に契約内容が、認められるかどうかは、離婚した時点の法律や離婚の背景に基づいた、裁判所の判断に委ねられます。

婚前契約書テンプレート

最後に、これまで言及したポイントをすべて押さえた契約書テンプレートを、ご紹介いたします。本テンプレートは、過去の判例や法令を元に、契約内容が有効となるように最大限工夫されて書かれています。
冒頭の甲乙の名前を入れ替え(甲乙平等な契約なので、甲乙どちらの名前にしても良いです。)、2通印刷し、各自署名捺印の上、各1通を保有することで、契約が成立します。配偶者となる者とよく話し合った上で、ご契約ください。

本記事でご紹介するテンプレートによって生じるいかなる損害にも、筆者は責任を負いません。契約内容に不安があれば、テンプレートを叩き台に作成した上で、弁護士にレビューを貰う事をおすすめ致します。(弁護士ドットコムで一括見積もりすれば、5-8万円程度で依頼可能です。)

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