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ENG06 受験英語から使える英語へ:リスニング
前回の記事で、中高6年間受験英語を頑張って、いい成績だったけど、海外ではあまり使えなかったことを書いた。英語を読む力はそこそこあったけど、聞く・話す・書く方は惨めなほど出来なかった。それで、留学した際に、それから海外で働き始めてからも、足りない能力を何とか補うしかなかった。
僕が学校で受験英語の習得に勤しんでいたのは90年代の終わりで、まだ英語のリスニングにカセットテープやCDを使っていた時代だ。今はインターネットや携帯のアプリで英語を聞くことが簡単に出来るようになったから、リスニングで苦労している人は少なくなったのかも知れない。でも、英語を聞いてもよく分からない人のために、僕が気付いたことをいくつか書きたい。
1.子音を聞き取れるようにする
英語と日本語は発音の仕方(舌・頬の筋肉の動かし方・歯の使い方・音の出し方)が根本的に違うけれど、英語を発音するときに、日本語の発音の仕方をあてはめがちだ。日本語にカタカナ英語(ミルク、デスクとか)が多いことも、こうした傾向に拍車をかけるのかも知れない。ただ、正しい音を知らないと、当然聞けない。英語が聞き取りにくい理由のひとつがここにあると思う。逆に言えば、リスニングに取り組む際、子音の発音の仕方、母音を含まない子音だけの音が分かるようになると、聞く力が伸びると思う。
日本語のア行は母音(a, i, u, e, o)だけ、カ行からラ行は子音(k, s, t, n, h…)と母音の組み合わせになっている。「か」は「ka」で、「k」だけを発音することが普通ない。「る」「lu」とは言えるけど、「l」だけを発音できるだろうか。日本語だと「ん」以外は子音だけの音がなく、当然聞き慣れていない。だから、子音が多く、かつその発音の仕方が日本語と異なる英語は聞き取りにくいわけだ。
例えば、「table」は「テーブル」とどうしても「ブ」と「ル」に「u」の音を補って発音してしまいがち。「テー」の後に「b」「l」を発音すると、日本語の「堤防」のように聞こえるはず。簡単な単語だけど、正しく発音されると実は聞き取りにくい。
ちなみに、「she」「see」を区別して発音できますか?その違いを聞き取れますか?
僕は区別して発音できる(と思っている)が、違いを聞き取れる自信はない。日本語のサ行は「sh」の音に近いので、日本語で「シー」と言ったときの音が「she」に近い。一方、「see」を発音するときは頬の筋肉を使って口が左右に引っ張られていないといけない。これは日本語ではしない音の出し方だ。文脈から、「彼女」と「見る」を混同することはないけれど、未だに音の違いを聞き取れているようには思わない。
2.隙間時間に知ってる内容の話を英語で聞く
色々な方法を試したけれど、結局一番役立ったのは、自分が分かる内容の英語を、ひたすら聞くことだった。リスニングの教材を使ったり、映画を英語字幕で観たりしたけれど、英語の音・イントネーションに慣れるのには、自分が分かる内容を英語で聞くのが一番だった。
コツは「知っていること」を英語で聞くことだと思う。例えば、日本の新聞等で最近の世界の出来事を知っていれば、英語でニュースを聞いても少しは分かる。僕の場合、ニュース番組のポッドキャストなどを通勤時間や移動時間に聞くのが効果的だった。
3.次の展開を予測して聞く
リスニングが出来る、というのは、英語で話された内容を理解できる、ということで、何も一字一句正確に聞き取ったという意味ではないだろう。僕は、リスニング教材を使っていた際、一字一句漏らさず聞こうと努力していた。それは練習としてはよかっただろうけれど、多分本質を外していた。あくまでも、話された内容を理解することに重点を置くべきだ。
ちなみに、話の展開を予想できれば、話された内容を聞いて理解するのが易しくなる。
例えば、「昨日の会議で***ことだけど、」の***に当てはまる語句は何だろう。「話し合った」「決めた」とかが入りそう。「食べた」「歩いた」は不自然だ。「あんまり夜更かしすると、明日の朝***」だとどうだろう。「起きられないよ」「寝坊するよ」「遅刻するよ」が候補かな。普段使い慣れている日本語だと、続く語句がある程度予測できる。
英語に慣れてくると、英語でも同じことが出来るだろう。例えば、「Custom clearance has been delayed, that's why …」だと、通関手続きが遅れてるので、多分続きは「配達が遅れます」かな。「Oh, our budget is tight, …」と、予算にゆとりがないと上司が言うのを聞けば、自分の提案は却下されたのだろうと想像がつく。
丁寧に聞かなくてもいい、とか、相手の話してることを勝手に推測していい、と言いたいわけではない。ただ、一語たりとも聞き漏らすまいと構えるよりも、何を言っているのだろう、と相手の意図や話題の中心に意識を向ける方が、案外聞けたりすることもある。リスニングの要点は、話された内容の理解に尽きるのだから。