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介護職員備忘録1 「見ると観る」
予告はしたものの、さて何を書こうかと思うとなかなかまとまらず……。
今回は、以前も書いたことがあるかもしれませんが、「見ると観る」について書こうと思います。
(事例)
最近、昼夜逆転傾向で日中意欲の低下や、居眠りが目立っているご利用者。
片側に麻痺があり、言葉も不明瞭で聞き取りにくい状態でした。
普段から居眠りしている時に、左右のどちらかに体が傾くことがよくありました。
ある日、車いすで過ごされている時、麻痺のない方の腕をだらりとおろして、傾いて居眠りされていました。
声掛けをして、姿勢を整えその場を離れました。
食事の時間に覚醒状態は悪かったのですが、その時はいつもの事だと思っていました。
食事介助が終わる頃に、頭が前方に倒れてきました。
ここで、いつもと違うかもしれないと思い始めました。
食後ベッドに横になる為、居室に誘導しました。
そこで、麻痺のない方の腕に力が入っていないことを発見しました。
私の手を握ってもらおうとしますが、指示が伝わらないのか握れないのかが、はっきりしません。
何度か繰り返すうちに握り返してくれましたが、いつもより力がありません。
反応もあり眠いだけなのか迷いました。
ひとまずベッドに移乗することにして、介助しました。
しかし、いつもなら介助者の腕にアザができるぐらい、介助者の腕を持つのですが、この日はだらりとしたままでした。
その他の部分には麻痺はないように感じました。
ここで看護師に報告し一緒に状態を観察して、やはり気になるとのことで医師に上申され、救急外来を受診することになり、小さな梗塞が見つかり入院となりました。
施設において介護士は、どの職種よりご利用者の近くにいます。
なので、介護士の目はご利用者の異変に、いち早く気がつくことができるところにいるわけです。
しかし、それは異変を気がつける目が、観察力が必要です。
こう言うと難しくなってしまうかもしれませんが、そう難しいことでもありません。
それは、日々ご利用者を観ることです。
見るのではなく観るのです。
「見る」は、意図せずせず目でとらえることで、「観る」は意図的に目をむけることというように、耳で聞くと同じですが、文字にするとニュアンスが違います。
ご利用者は日々変化します。
変化はすべて病気に繋がりませんが、その変化を知らなければ異常にも気がつくことができません。
それぐらい、異常の早期発見は些細なことです。
次に、それを然るべき職種に伝えるのが、難しく思われる方もおられるかもしれません。
伝えるのに難しい知識や言葉は必要ないと思っています。
具体的におかしいと思うところがある場合は、それを伝えればいいのです。
この事例の場合は、「腕に力が入っていない」ところが、おかしくいつもと違う点です。
具体的になにかわからないが、おかしいともうこともあります。
そんなとき私は、「なんかおかしい」と看護師に伝えていました。
「なんかおかしい」といえば、看護師なら情報を得るために、次々と質問をしてくれます。
質問に答えていくうちに、自分も状況が整理できてきて、何がおかしいのか伝えることができます。
本当に心強い存在です。
これを繰り返し経験することで、何を伝えればいいのかも身につきます。
看護師が必要と思われる情報がわかってきますからね。
病気と結び付けられなくてもいいんですよ、それは医師や看護師がしてくれます。
私達介護士の役割は、小さな変化を然るべき職種に繋げることだと考えています。
それだけ?と思われるかもしれませんが、それがなければ症状が悪化して、取り返しのつかないことになりかねません。
事例でも頭が前方に倒れるという、起こっても不思議ではない出来事ですが、このご利用者にすれば珍しい出来事に気がついたことから、「なんかおかしい」という視点での観察に切り替わっています。
そこから、病気が発見されました。
私達の役割はかなり重要だとご理解いただけると思います。
そんな経験をしていくうちに、症状と病気が自然と結びついていきます。
反省としては、もっと早く看護師に報告できたという点です。
腕に力が入っていないと感じて、看護師に報告するまで5分程かかっていました。
自分一人で観察していた時間を、看護師と一緒に行っていたらもっと、早く受診できました。
このように経験を重ねることで、症状と病気が自然と頭に入っていきます。
落ち着いてから、看護師にその病気や症状、対応方法やその時できていなかったことを確認するのもいいと思います。
体験したことは、記憶に残ると思います。
また勉強は苦手でも、そこからテキストなどを開くととてもわかり易く、勉強の意欲もわくかもしれませんね。
小さな変化を見逃さないために、ご利用者を観ていきます。