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希望とは思い出すことー乃木坂46『人は夢を二度見る』MV観てみた
YouTubeを見ていたら、乃木坂46『人は夢を二度見る』のMVを推薦されたので観てみました。
泣けた。
音楽のことはよくわからないのですが、詩と映像に感動してしまいました。
かつて僕が殺してしまった可能世界の僕たち。今や絶望してしまっている僕は、復活した僕たちによって希望を手にすることができる。そんなMVでした。
「殺してしまった」「復活した」というのは適切ではないかもしれません。選ばなかった可能世界の僕たちは、ずっと僕の目の前にいたのに、気づくことができなかった。MVの中の僕は幸運にも気づくことができたようですが、そのきっかけはよくわかりませんでした。
では現実世界の僕はどうすれば気づくことができるのか。
誰も夢から覚めるけど
せめてその続きを見ようって
寝返り打つよね
目をそっとまた瞑り
楽しかった物語を
一生懸命思い出すんだ
なるほど。夢=物語=可能世界の僕たちを思い出せと。
そういえば小川哲は小説『ゲームの王国』で、愛を体験することとは何度も何度も思い出すことと言っていたような。
でもそもそも僕は思い出せなくなっていたのではなかったか。思い出すにはどうすればいいのでしょう。
何度もMVを観たり、歌詞を熟読したりしましたがヒントは見つかりません。しょうがないので、別の作品からヒントを得られないかとMV監督の経歴を確認してみました。監督の丸山健志は、やはり乃木坂46の名作MV『君の名は希望〜Dance&Lip ver〜』も撮っていました。(下のリンクは残念ながらショートバージョン。このつづきも素晴らしいのですがカットされています。)ちなみに、いわずもがなかもですが、どちらの作品も作詞は秋元康。
聴き直してみました。
未来はいつだって新たなときめきと出会いの場
君の名前は希望と今知った
ヒントがあった!
他者と出会えばいいんですね。
あっ!可能世界の僕たちって、現実世界の僕からみれば他者と言えなくもない。とすると、『人は夢を二度見る』のMV中の僕のまわりにいる僕たちは、可能世界の僕たちと現実世界の他者たちが重なった存在なのでは?
『人は夢を二度見る』と『君の名は希望』はつながりそうな気がする。
もし君が振り向かなくても
その微笑みを僕は忘れない
どんな時も君がいることを
信じてまっすぐ歩いていこう
可能世界の僕たち=他者=夢に届かなくても、どんな時も可能世界の僕たち=他者=夢がいることを信じてまっすぐ歩いていこうという意味だったのね。また泣けてきました。
だから、今回は『人は夢を二度見る』となるのですね。
ああ夢は一度じゃないよ
ベッドの中で二度寝するように
また見てみればいい
きっとあの頃のように
いつのまにかワクワクして
叶えるために夢を見られる
どうやら君を忘れないことが大事なようです。でももし忘れてしまっても他者と出会えば思い出すことができる。
ところでこんな歌詞も見つけました。
10年前の自分とか
想像なんてできなかった
10年前の僕からは
今の自分がどう見えるか
ひょっとして『君の名は希望』は10年前のリリースなのでは?と思い調べてみました。
『君の名は希望』 2013年3月13日リリース
『人は夢を二度見る』2023年3月29日リリース
ビンゴ。
確信しました。
『人は夢を二度見る』は『君の名は希望』の続編。
つまり二度目の夢=希望。
ではなぜ続編をつくる必要があったのか。二度目ということで思い出すのは、哲学者ジル・ドゥルーズの『無人島の原因と理由』。ドゥルーズはこの著作で想像力には二種類の島があると言いました。陸島と洋島。陸島は地殻変動などによって大陸から分断されて生じた「派生的で二次的な」島、洋島は海底の地盤が変動を蒙って海上に出現して生じた「起源的で一次的な」島。そして想像力はこの二つを「往復する」といいます。この二つの差異と反復によって認識が生じるのだと思います。つまり二つないと認識できない。秋元は夢=希望を視聴者が認識できるように、続編をつくったのではないでしょうか。
秋元先生。気づきましたよ。僕に思い出させるために続編をつくってくれたのですね。ありがとうございます。
追伸
ファンのみなさま、まちがっていたらすみません。