マガジンのカバー画像

雑誌『ゲンロン』

18
雑誌『ゲンロン』に掲載されている論文や小説の感想です
運営しているクリエイター

2023年5月の記事一覧

コミュニズムは訂正可能性のほうへーアルテミー・マグーン「コミュニズムにおける否定性」を読んでみた

ロシア現代思想関連論文を読んでいます。 前回は「プーチンの脳」と言われているナショナリスト、アレクサンドル・ドゥーギンの論文を読みました。↓ 今回はコミュニスト、アルテミー・マグーンの「コミュニズムにおける否定性ー疎外のパラドクス」(八木君人訳 雑誌『ゲンロン6』 2017年 に収録)を読みたいと思います。 コミュニズムとは「コミュニズム」が現在の意味で使われるようになったのは、フランス革命期。当時の主流派であるジャコバン派のスローガンは自由、平等、友愛。「コミュニズム」

「プーチンの脳」の哲学ーアレクサンドル・ドゥーギン「第四の政治理論の構築に向けて」を読んでみた

ここのところウクライナ戦争、ロシア思想関連文献を読んでおりますが、今回はいよいよ「プーチンの脳」と呼ばれているアレクサンドル・ドゥーギンの論文です。 読んだのは「第四の政治理論の構築にむけて」(原文 2014年、訳者 乗松享平、2017年 雑誌『ゲンロン6』収録)。 第四の政治理論ドゥーギンは四つの政治理論があるといいます。第一がリベラリズム。第二、コミュニズム、第三、ファシズム、そして第四、非リベラルな保守主義。 まずリベラリズム。この説明が興味深い。 これ東浩紀が

石油と独裁ー乗松享平「敗者の(ポスト)モダン」を読んでみた

ウクライナ戦争の開戦の動機を調べていたら、いつの間にかロシア現代思想に興味がわいてきました。動機と思想は直結していると思うからです。 まずはプーチンの脳と呼ばれるドゥーギンの論文を読みたいと思うのですが、その前に、ロシア思想研究者である乗松享平の論文「敗者の(ポスト)モダン」(2017年 雑誌『ゲンロン6』に収録)を読んでロシア思想を広く整理しておくことにしました。 日本の敗戦浅田彰は早くも1987年には、日本のバブル景気と一体化したポストモダニズムの流行について、「子供

アメリカはロシアだー座談会「ロシア思想を再導入する」を読んでみた

ウクライナ戦争の開戦の動機を探っていたら、だんだんロシア現代思想に興味が湧いてきました。 今回は座談会「ロシア思想を再導入するーバフチン、大衆、ソボールノスチ」(雑誌『ゲンロン6』2017年に収録)を読んでみました。 参加者は貝澤哉、乗松享平(ロシア文学、思想研究者)、畠山宗明(映画理論研究者)、東浩紀(思想家、ゲンロン編集長)の4人。 問題設定まずロシアと日本のざっくりとした共通点が確認されます。 両国とも近代に遅れて参入し、近代の超克をめざしました。ロシアでも日本の