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ロシアとウクライナ

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ウクライナ戦争を考えるために、ロシアとウクライナに関する本を読んで自分の考えをまとめていきます。
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2023年6月の記事一覧

ウクライナ戦争下でのロシアのラッパーたちー松下隆志「ロシアをレペゼンするのは誰か」を読んでみた

ワグネルの乱には考えさせられました。武力によって政権を打倒した場合、武力を使って統治していくことになるでしょうから、市民にとって事態はあまりかわらないのかもしれない、いやより不安定になるでしょうから、事態は悪化するかもしれないと思いました。ロシアのような状況になってしまうと、最悪の状態から抜け出すのは至難の業だと改めて思いました。 情報が出揃っていないワグネルの乱の分析については専門家にまかして、私の方は引き続き歴史や文化を学ぼうと思います。 ここのところ、ウクライナ戦争関

開戦前にバルスを仕込むー上田洋子「ネットとストリートの戦争と平和」を読んでみた

ここのところ小泉悠のウクライナ戦争関連書や雑誌『ゲンロン』のバックナンバーに掲載されているウクライナ戦争に関する座談会やロシア現代思想関連論文を読んでおりましたが、一段落したので、最新刊の『ゲンロン14』(2023年3月)を読みはじめました。魅力的な鼎談や論考が多々ありますが、今回もウクライナ戦争に関する論文があるので、まずはこれから読みたいと思います。 今回読むのはロシア文学者でゲンロン代表の上田洋子の論考「ネットとストリートの戦争と平和 ロシアの反戦アクティヴィズムにつ

分業は疎外も連帯もうむーボリス・グロイス「アメリカの外ではスーパーマンしか理解されない」を読んでみた

ボリス・グロイスを読みます。前回は論文でしたが、今回はインタビューです。 タイトルは「アメリカの外ではスーパーマンしか理解されない」。上田洋子訳で雑誌『ゲンロン1』(2015年)に掲載されています。 グローバリズム崩壊インタビュアーはロシアの状況を問い、グロイスは答えます。 世界中(ロシア含む)で同じ事態が起こっている。 冷戦が生んだグローバリズムは崩壊しようとしている。トルコではオスマン語が再導入され、中国では孔子に熱狂し、イスラム世界では預言者時代のイスラムへ回帰してい

平等は不死の夢をみるーボリス・グロイス「ロシア宇宙主義」を読んでみた

ロシア現代思想関連書を読み続けています。 ナショナリストのドゥーギン(プーチンの脳と呼ばれている)、コミュニストのマグーンを読んだので、今回はリベラリストのボリス・グロイスを読みたいと思います。読むのは、「ロシア宇宙主義ー不死の生政治」(上田洋子訳 雑誌『ゲンロン2』2016年に収録)です。 ロシア宇宙主義ここでの宇宙とは調和がとれ、秩序がある状態であるコスモスを主に指していますが、宇宙旅行の宇宙の意味も含んでいるようです。そしてロシア宇宙主義とは、スティーブ・ジョブズなど