忘備録(113)『アリラン物語』第8話
忘備録(112)『アリラン物語』第7話 からの続きです。
店の看板を当てられる
最新の隠しカメラ4台を取り付けたので、韓国アカスリ店のママさんはご機嫌だ。24時間いつでも映像が自分のスマホで観れるのがうれしいようだ。
実際、これは便利。少しくらいなら店を離れて出かけることができる。ママさんの店には従業員用の休憩室があり、そこに4台のカメラの映像が1つの大型モニターで観ることができる。
ヤ〇〇の事務所でよくある感じ。元々、この店はそちらぼ方々がお使いになっていた事務所。長い階段のそのような構造になっている。
カメラで映し出される映像の画質も綺麗。TVを観るように楽しむことができる。一定時間録画されているので、何か起こったとき巻き戻して調べることが可能。
店から外に向けて取り付けているカメラもあり、店の前の道を歩く人々の表情などくっきり見えて面白い。
この人は店に入ってくるか、入ってこないか、徐々に鮮明な映像から判断できるようになった。
自分の家にもこんなカメラを取付したら防犯に非常によいだろうなあと思いながら、いつもようにモニターの映像をチェックしていた。
突然、がっしゃーん!!
「うん? ママ!なんかすごい音したで!」
「あんた、ちょっと見てきて!」
「今、映像、見てへんかったんかいな。店の看板に車が当たったんや!」
僕は道に設置にしている電光看板を確認するため、急いで店の外に出た。
思ったとおり、電光看板はひっくり返っていた。
犯人特定か?
どこか壊れたんと違うか、、と心配しながら看板を起こしていたら、
いつも店の付近でキャッチセールスをしている20歳くらいの若い男性が近づいてきた。
ママさんの店の周りはいつも黒いスーツ姿の客引きがたくさんいる。僕がママさんの店を手伝っているうちに彼らともいつの間にか仲良くなっていた。
「兄さん、僕、今、全部見てましたよ。当て逃げした車。奈良ナンバーの〇〇〇〇」
「ありがと。でも大丈夫。カメラの映像が残ってるはず。ママさんご自慢の最新の隠しカメラやで。」
「カメラってどこに付けてるんですか?」
「そんなん言われへんよ。でもまあ、電光看板、壊れてないからもうええよ。」
と言って、店に戻った。
保険処理できるかな?
ママさんは、
「どうやった?看板?壊れてたら保険で直せる?」
「う~ん、どうかな。道のところに看板を置いてるから、本当は違法やで。道路上になるから。」
「そんなん、ほかの店もやってるでしょ?」
「確かにな。保険屋がどう判断するか。。まあ、どっちにしても、電光看板は倒れただけやった。壊れてへんかったわ。ちょっと傷はついたけど電気部分は大丈夫や。」
「あっそう。もうすぐ、アカスリしたい常連さん(いつも酔ってるおっさん)が来るから用意するわ。あんた、ちょっと待ってて。あとで晩御飯つくるから。」
「でもな、たぶん面倒なことになるよ。映像を確認したけど、うちの電光看板当てたあと、その前に路上駐車してあった白い車に当て逃げしたようや。たぶん、警察、パトカーで来るで。」
「めんどくさいな。来たらあんた、ちゃんとやっといて。」
警察官5人
間もなくパトカーで警官が5名やって来たのがわかった。それは店内のモニターに鮮明に映し出されるからだ。
当てられた車の部分にライトを当てて確認したり、キャッチ(客引き)をしている男性たちに状況を聞いている。
一人の警官が店の外にある4つのカメラの内、1つのカメラに向かって顔を近づけた。
僕は部屋のモニターでその様子を見ているので、その警官と目が合った。
しばらくしてその警官が店のドアを開けて階段を上がってきた。
どうしようかな。面倒なことになったなぁ。この店の関係者でもないし、自分の立場を警察にどう説明しようかな。
一人の若い警官が「すいません、ちょっとお伺いしたいことがあります。店長さん、いますか?」とカーテン越しの部屋で待っている僕に聞こえてきた。
対応しないわけにはいかない。心の中では面倒なことになったなあと思いつつも、ママさんから対応しておいてって言われたし。。。
仕方ない。どうせ警察としては、店の外のカメラに看板と路上駐車の車に当てた犯人の車が写っているはずだから、それを確認したいだけだろう。
はやく、その映像を見せてあげたほうが警察は早く帰るはず。
犯人の車の画像
僕は必至になって、ママさんスマホ(カメラの映像と連動させて2時間おきに録画する設定)の中の犯人の車の映像を探した。
ママさんはちょっと古いiPhoneなのでかなり動きが遅い。映像を再生すると画面が固まってしまう。
なんとか、その犯人の車が写っている映像が出てきた。すごく鮮明。ナンバーも写っている。
僕は部屋から出て、その警官に「あの~、当てた車のナンバー写ってるからその映像をお見せします。」
20代後半くらいの若い警官が言った。
「すいません、助かります。ちょっと現場まで降りてきてもらっていいですか?」
階段を下りて店の外に出ると、残りの4人の警官が待っていた。
「ご苦労さんです。当てた車のの映像はこれです。」と僕はスマホに写っている映像を静止して見せた。
若い警官がこちらが見せているスマホの静止画面の上から、彼自身の携帯で写真を撮った。
外は暗いし、そんな方法で撮ったら画質悪いだろうと、僕は、
「あの~、よかったらこの映像、ラインで送りましょか?」
「大丈夫です。鮮明に車のナンバー、写ってますので。。」
被害届
僕は納得して、店に戻りかけたら、一人の中年の警官が、
「この看板、被害届出されますか?」
「僕はこの店の関係者じゃないけど、この店のママは被害届は出しまんせんよ。傷はついたけど壊れてないから。電気も問題ないし。。。」
「念のため、申し分けないけど、店長を呼んでもらっていいですか?」
「今、ママさん、あかすりの仕事なんですよ。」
「悪いけど、すぐ終わりますんで。。」
僕は店に戻って、お客さんのあかすりをしている最中のママさんに、
「仕事中、ごめん。ちょっと警察が読んでる。今、大丈夫かな?」
ママさんは、アカスリルームから出てきて、
「仕方ないね。ちょっと待って。」とすぐ着替えて、僕と一緒に店の外で待っている警官のところへ向かった。
一人の警官が状況を説明した。
「当てた車のナンバーが写っている映像をもらいました。看板の被害届は出さないということでいいですか?」
ママさんは、
「いいですよ。壊れてないから、出さないです。」
警官はそれを聞いて、
「じゃ、すいませんが、ここに連絡先の電話番号を書いてください。あとで連絡します。」と言って、現場検証の用紙を出した。
僕もママさんも店に戻った。ママさんは待たせているお客さんのアカスリの続きを始めた。お客さんにとっては迷惑な話。ママさんは今回のアカスリ代金は無料にするだろう。
イケメン警官
お客さんが帰ってから、ママさんは、
「なぁ、やっぱり、看板、弁償してもらって新しい看板に変えたい。逃げた車、捕まるよね?」
「捕まると思うよ。当てられた車があるから。。。警察も真面目に捕まえるやろ。当てられた方の車の持ち主、警察と話しをしてたけど、あれ、ヤ〇〇やな。恰好と雰囲気で分かるわ。」
「あいつ、いっつもあそこに車停めてる。だいだい、あそこに停めてるから道が狭くなって、通った車がうちの店の看板に当たったんや。」
「今更、警察へ被害届出しますって言うても、無理やで。しばらく様子を見ておこうよ。捕まったら警察から連絡あるよ。」
「なぁ、あの若い警官、かっこよかったね。アカスリ好きかな?」
「さあ。。。まぁ確かにかっこよかったな。イケメンや。今度、連絡あったら、『本格派韓国アカスリはいかがですか?』って言ってみたら。」
忘備録(114)『アリラン物語』第9話|kazu10000|note へつづく。
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