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第十二話【日課】(Vol.111-120)

Vol.111
ケンタ兄は部屋に入ってくるやすぐに
ゲームに興じている子供たちの輪に入っていった。

その大きな体をドカッと座らせて
あぐらをかく。

「なぁ〜つぎ、ウイイレやろ!」
と提案。

ウイイレとはサッカーのゲームだ。
(当然ボクは知らない)

「えーで」
と子供たち

(やりとりが面白い)



Vol.112
“【遊び】を提案する“
そう心のメモに書き留めたボクは
ケンタ兄の様子を続けて観察する。

ケンタ兄は学生時代にサッカーをしていたそうで
空間認知能力が高い。

誰もいないところにボールを蹴ったかと思うと
そこに誰かがやってくる。

(ほーーーなるほど)

ゲーム一つからでも学びが多い



Vol.113
ケンタ兄の指さばきは卓越れていた。

ぽっちゃりとした指が滑らかに
動いていた。

子供たちも必死に戦う。

ウイイレの実況にも力が入っていた。

ゴーーーーーーーール!
実況と共に

「しゃーぁ!」と叫ぶケンタ兄

大人気ないとは思いつつも
悔しそうな子供たち。

これなんだな。



Vol.114
遊ぶときは【本気】で遊ぶ
そこに、“大人”も“子供”ない

本気で勝負するからこそ、
子供たちに【闘争心】が芽生えるのだろう。

それが、【向上心】に繋がっていく。

深く計算された支援のあり方に感銘。

ケンタ兄にこのことを話すと

「えっ、オレ。ただ単に負けたくないだけやで。」
と。



Vol.115
・・・

(単なる“負けず嫌い“なんかい!)
と心にツッコミながらも

心のメモには
【本気で遊ぶ】を書き加えた。

ウイイレを終えたケンタ兄は
「よーし。じゃー、ヒロ兄少し話しよか。」と声がかかった。

「はいっ。」と即答し、
ボクとケンタ兄は宿直室へと入っていった。



Vol.116
「ヒロ兄ちゃん。そんなに固くならんくていいで。もっと気ー抜きよ。」

とケンタ兄は優しく声をかけてくれた。

どうもぎこちなく映るのだろう

「あんなー、この子達はな・・・」

と切り出して
ケンタ兄から一人ひとりの入所理由や親との状況、そして今後の方針などがみっちり説明された。



Vol.117
あまりのボリュームに
ボクは思わず

フー とため息をついた。

すかさずケンタ兄が
「まー最初のうちは全部覚えるん大変やし、
子供たちと関わる中で覚えていったらいいちゃうかな。」

と優しく助言してくれた

そうだ
その通りだ。

紙に書いている子ではなく
“その子“を見るべきなのだ。



Vol.118
子供の様子を聞いた後、
一日の流れについての話があった。

【平日】・【休日】・【宿直】

それぞれについてだ

朝は5時半から
高校生のお弁当詰からスタートする。

6時の朝起こしを経て
夜は宿直者と交代する21時半まで

ストレートで働くと
実に16時間。
(労働時間換算で2日間の実働だ)



Vol.119
これが【宿直】もかぶっていたらどうなるか
Oh〜My・God

朝5時半起床
↓ 16h勤務
夜21時半 【宿直】スタート

夜22時 見回り
↓ 2.5h勤務
夜0時 仮眠

朝5時半起床
↓ 16h勤務
夜21時半 勤務終了 

計34.5h の勤務となる



Vol.120
しばらく時が止まった。

二日の勤務中に
四日間の実働である

まさに
ドラゴンボールの

“精神と時の部屋”

である

ケンタ兄が そっとつぶやいた。

「ナレルヨ」と

“慣れるよ“この生活に慣れるだろうか?
“成れるよ“仕事をこなせる自分に成れるのだろうか?
どっちだ?

時が止まった

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