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第十一話【仏陀】(Vol.101-110)

Vol.101
キャッチボールを終えたボクとユッキーは
あれこれ話しながら防護ネットや道具を片付けていた。

ふと居室を見上げると

ベタなことではあるが、
ジュンがこちらを見ていた。

「おう!ジュン!」
手を挙げるボクに気がついたジュンは

返事を返すわけでもなく、
さっさと部屋に戻ってしまった



Vol.102
片付けを終えたボクは部屋に戻った。

部屋では相変わらず子供たちが自由に過ごしている。
ユッキーはゲームの輪に戻っていった。

さて、どうしようか。

ボクは周りを見渡す。

ジュンを探すが見当たらない。
きっと部屋にいるんだろうな。

と思いつつ、
タイミングを見て話せたらと思った



Vol.103
そうだ。
小学生男子の部屋に行ってみよう

子供たちに
「ちょっと小男(しょうだん)に行ってくるわ!」
↑小学生男子のグループを“しょうだん“と言っている

と、告げて
部屋を覗いてみた。

小学生男子では7人の児童が生活している。

コンコン
ドアを叩いて入る。
「こんにちは〜」



Vol.104
部屋に入ると
10畳ほどのリビングに子供達が集まり
各々好きな時間を過ごしていた。

岩兄がリビングのセンターで
バンコクにあるワット・ポーの寝釈迦仏のごとく
大きな体を横にして子供を見守っていた。
背中に安心感を感じる

「岩兄さん!お邪魔します」

・・・

返事がない

(まさか)



Vol.105
子供たちがこちらを向き、
人差し指を立てて
自分の口元に立てた。

ハッ!
まさか。

このジェスチャーは

恐る恐るボクは、
岩兄の正面に回り込んでみると

半眼半口

(寝てる?、いや、これは悟られているのだ。)

岩兄は、悟りの境地におられたのだ。
だからこその寝仏だったのだ。



Vol.106
悟りの岩兄をそっとしながら
子供達に話しかける。

「何して過ごしてんの?」

「ん?漫画読んでるねん。」
と答えたのはショウだった。

ショウは今年6年生。
小男は全員んで6人が生活している。

ショウは同学年のマサと二人で
小男を引っ張っているのだ。



Vol.107
「休みのときはいつもこんな感じなんかな?」
と尋ねるボクに

うん。と頷いた。

土日はどこかへ行ったりとか行事があったりとか
毎週何かあるのかな?とボクは思っていた。

けれど考えてみたらわかることだ。

どの家庭も、毎週何かがあるわけでは無い。
のんびりとした日だってあるのだ



Vol.108
小男の子供たちはそれぞれの時間を
それぞれがやりたいことを
のんびりと過ごしていた

“たいくつ“を誤魔化すかのように
漫画を読んだり、携帯ゲームをしたり
テレビを観たりと

穏やかな時間が流れていた。

この空気を壊しちゃいけないと感じたボクは
「また遊びに来るね」と言い
部屋をでた



Vol.109
中男(チュウダン)部屋にもどってきたボクはその後、夕食までの間特に何をするということもなくすごした。

子供たちも初めは“どんな職員なんだろう“という感じでいたが、時間が経つほどに緊張も解け、普段の子供たちになっていった。

子供たちは相変わらず、ゲームに興じていた。

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