第四十話【赤面】(Vol.391-400)
Vol.391
いい気分でお酒を注いで回る
いよいよ真打へ
先ほど、異彩を放っていた
常務理事へ注いで回る。
「失礼します。ヒロです。よろしくお願いします」
「うん。よろしくな。養護は大事やしっかり頼むぞ。ほれ、呑め」
やはり想像通りの勢いだ
しかし、そこからは
確かな信念が伺えた。
Vol.392
常務の話は聞けば聞くほど
熱くなる。
まさに
“義理と人情“で生きてきた人だ。
そこに知識が学問を超えた
“感情“があるのだ。
ただ、取り間違えるととても怖い。
どこまでも
“この子らを護る“愛情があっての
スタートなのだと感じた。
Vol.393
常務の話に耳を傾けながら、
今後の自分のあり方について考えていた。
(どこまでも 子供に寄り添える 保育士になろう)
生育歴、家庭環境様々な条件はあるが
学習支援、進路支援、そして就労支援に自立支援
これからたくさんの支援を通して
自分も一緒に成長していこうと心に決めた。
Vol.394
来賓席を見てみると
喫茶檜のマスターも来ていた。
(あいさつに行かなくちゃ)
ビールを片手に持って
そそくさと常務の席を後にした。
常務も
「よっしゃ。他にも行ってこい」
とでも言いたそうな雰囲気で送り出してくれた。
Vol.395
マスターの席へ移動し
「お久しぶりです。先日はありがとうございました」
と挨拶する
ボクはこの
“先日はありがとうございました“が好きだ
なぜかというと、
相手との距離が近くなるというか
【あなたと前から繋がっていますよ】
というメッセージが込められているような
気がするからだ
Vol.396
「おう!ヒロ兄さん。おめでとう」
マスターは笑顔で祝ってくれた。
「これからよろしくお願いします」
「うん。いつでも店においでや」
そう言って互いにビールを飲み干した。
ほんのりピンクの頬がお茶目だ。
・・・
ボクは完全にできがってしまっているけど
気力で立っていた
Vol.397
縁もたけなわとなり
お開きとなった。
真っ赤っかになってしまったボクは
不甲斐ない姿を晒しながらも
どうにか立っていた。
それを見ていた
園長先生が
声をかけてくれた。
「大変やね。無理せんようにね」
(怒られる)
と思っていたボクは面食らってしまった。
と同時に安堵した。
Vol.398
片付けはみんなで行う。
これが福祉会の方針?というか
大人の嗜みみたいなところがある。
ボクはふらふらになりながらも
・一番力がいるところはどこか?
・人が嫌がるところはどこか?
を探しながら片付けた。
そうやって【意識】することで
周りが見える人間になれると思ったからだ。
Vol.399
片付けを終えると時間は14時を回っていた。
(結構かかったな)
1日のほぼ大半を
辞令交付式と歓迎会に過ごした感じだ。
片付けをすることで
意識も戻りつつ
(顔の赤みは取れないが・・・)
酔いも覚めてきた。
ふぅ〜と
一息ついて部屋に戻って
スーツを脱いだ。
Vol.400
着替えを終えたボクは
居室に戻りケンタ兄に
無事に終えたことを報告した。
「お疲れさん。もう上がっていいよ」
とケンタ兄。
「えぇ〜だってまだ働いてないですよ。
起こして、辞令交付式でて片付けてそれで
今じゃないですか。引き継ぎだってできてないし・・・」
ボクは慌てた。