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第十五話【風呂】(Vol.141-150)

Vol.141
「おう。入るぞ。」

ぬっしぬっしとまるで大きなクマのように
岩兄さんが入ってきた

「おう。もうすぐ時間やからサクッと入れよ。」
と周りに声をかけて岩兄がお風呂に入る。

子供たちは
「はーい」
と軽く返事をしながら風呂に入っていた。

何気ない一言の中にも
【配慮】が隠されている



Vol.142
岩兄は
さっと体を洗うと、
横にいた小1のシュウを捕まえて

「おいっ。まだ耳に泡ついてるぞ!」

とシャワーでガシャガシャと洗い出した。

「痛いぃ〜もぉ〜〜〜」

とシュウは嘆きつつも
そのやりとりはまるで親子の様である。



Vol.143
二人のやりとりを見ながら
ボクは湯船に浸かっていた。

【関係が深まるごとに、この仕事の醍醐味が現れてくる】


#心のメモ に書き留めた。

シュウの体を洗い終わると
岩兄いとシュウが湯船に浸かる。

ざぶーーーーん。

絵に描いたように
お湯が湯船から洪水のように
押し流された。



Vol.144
「わーーーー」
小男の歓声が湧き上がった。

「あぁ〜〜〜気持ちえぇ〜なぁ〜」
岩兄の心の声が聞こえる。

「おい!肩まで疲れよ!」
「のむなよ!」
「潜るな!」

なんてことを言いながら
ほっこりタイムを皆で味わった。

まさに、

裸の付き合いである。



Vol.145
しばらくすると
今度は中男メンバーが入ってきた。

「おい。変われよ!」
「はよしてって!」

まぁ〜
想像できる騒がしさである。

そろそろボクも
温まったので
出ようとするやいなや

岩兄さんが
サクッと上がった。

(はやっ!)

職員の風呂というのは
リラックスの場ではないのだ。



Vol.146
(今、自分が上がってしまうと大人がいなくなる)

とコンマ0.1秒で思考したボクは
上がるタイミングを逃してしまった。

そのまま、浴槽に居座り続けることにした。

次に来てくれるであろう
ケンタ兄を待つことにした。

・・・

来ない。

来ない。

来ないぞ。ケンタにぃぃぃ!



Vol.147
19:30までが男子の風呂タイム。
現在、19:10 あと20分で女子と交代だ。

(ケンタ兄、早く来てくれ。)
と願いつつ。

浸かっているボク。

19:15 来ない。
19:20 来ない。

19:25 
・・・

えっ
ケンタ兄は、5分で入るのか?
5分で入れるのか!

その時、

ガラッ

風呂の扉が開いた。



Vol.148
「おーい。そろそろ時間やぞぉ〜
でぇ〜ヨォ〜〜〜」

なんとも
穏やかな声でケンタ兄が声をかける。

子供たちは
サラッとした感じで順番に上がっていった。

ズボンの裾を3回ほどおりかえ
風呂場に入ってきたケンタ兄は、
風呂場を整えていく。



Vol.149
お湯を足したり、
風呂の温度をチェックしたり、
桶や椅子の片付け。

簡単なゴミ掃除なども進んでおこなっていた。

次の人が気持ちよく入れるように
気を配る。

滑るのを恐れる
プルプルと震えながら
まるでバンビのように歩くケンタ兄を横目に

ボクは片付けの方法を身に付けた。



Vol.150
若干のぼせながら
風呂は戦いであることを身をもって覚えた

限られた時間に
テンポよく
こなして行かなければならい。

着替えをしながら
スノコを整え、
水で濡れた床をモップ掛けする。

風呂に入れなかった子供は
この後の大人の時間に入ることになるのだ。

結局50分入浴したボクだった。

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